第三話 最終奥義と科学の怪物(脚本)
〇ボウリング場
青馬文彦「~というわけで、出場権を勝ち取りました!」
青馬文彦「ぜひ、大会の出場許可をください!」
竹國無蔵「ふ~む、こんな大会がほんとにあったとはのう」
青馬文彦「わが流派は原則他流試合は禁止。しかし、この大会だけは例外を認めてください!」
青馬文彦「破邪神拳が天下一であることに疑いの余地はありません」
青馬文彦「ですが、その古今無双の強さをあらためて世に知らしめる、よい機会ではないでしょうか」
竹國無蔵「わしは他流試合禁止の原則を生涯厳しく守ってきた」
竹國無蔵「軽はずみに他流と拳を交え、血気にまかせて殺めてしまうことを避けるためじゃ」
竹國無蔵「だが後悔もある。もっと強い敵とも闘いたかったという」
竹國無蔵「おまえは、わしのぶんまで自由にするがよい」
青馬文彦「ありがとうございます!」
青馬文彦「しかしこの大会はさすがに強豪ぞろい。もちろん万が一ですが、不覚をとる可能性も絶無ではありません」
青馬文彦「今のままでは・・・」
青馬文彦「無理は承知で特別に伝授していただきたいのです!」
青馬文彦「正統後継者のみに伝えられる一子相伝の最終奥義──」
〇雷
青馬文彦「破邪雷神拳を・・・!!」
〇ボウリング場
竹國無蔵「ん? わしはそんなの使えんぞ」
青馬文彦「え? でも師匠は正統後継者では?」
竹國無蔵「そうじゃが、あの技は特殊でよくわからなくてのう。親父もちゃんとはできてなかったみたいじゃし」
青馬文彦「そうですか・・・」
竹國無蔵「それほど覚えたければ、奥義書を見て自主稽古すればよかろう」
青馬文彦「え、お貸しいただけるんですか? 自分はまだ免許皆伝しておりませんのに」
青馬文彦「秘中の秘である奥義書を・・・」
竹國無蔵「べつにかまうまい。文句いう奴もおらんし」
竹國無蔵「親父が専門家に訳させた現代語も書き込んであるし。昔のミミズが這ったような字、読めんじゃろ」
青馬文彦「はい、助かります」
近所のおばさん「竹國さ~ん、お次ですよ~」
竹國無蔵「は~い、すぐいきま~す」
竹國無蔵「まあ、破邪魂で頑張ってこい」
竹國無蔵「その日は町内会のカラオケ大会があって、わしはそっちの大会には行ってやれんが」
〇森の中のオフィス(看板無し)
郊外にある、三階建ての小さなビル。
この会社が製造販売している〈カユミトメ~ル〉という塗り薬は、肌のかゆみに万能の効果があり、大ヒット商品となった。
〇研究開発室
その地下一階──
外観からは想像できないほど広いスペースに、医療関連の最新機器がところせましとならんでいる。
〇近未来の手術室
ベッド型の検査機器に、根岸学(ねぎしまなぶ)が、静かに目を閉じて仰向けになっていた。
その凄まじいバルクのマッチョボディには、コード付きパッドがびっしりと貼りつけられている。
ほどなくして検査機器パネルから、結果のデータがプリントアウトされる。
斎藤亮介「『モーレツ仕事なう♪ しんどいよ~💦』」
斎藤亮介「『アイコン変わった? めっちゃ可愛いじゃん!』と」
だが助手の斎藤は、SNSに夢中で気づかない。
根岸学「おい、もう終わりだろ!」
斎藤亮介「あ、うぃーす」
斎藤亮介「検査終了。お疲れっす」
根岸は自分でパッドを取り外し、検査機器から下りる。
根岸学「結果はどうだ?」
根岸は三つの博士号を持つ天才科学者で、〈根岸薬品研究所〉の所長でもあった。
斎藤亮介「筋力に変化はないっすね。でも副作用はちょっとヤバくないですか、これ」
根岸学「この程度なら想定内だ。 投与しろ」
斎藤は薬品棚から、ラベルに〝US〟と書かれた薬瓶を取り出す。
それを注射器に注入し、
斎藤亮介「所長、いくっすよ」
根岸学「ああ」
根岸の太い腕に注射する。
全身の筋肉が、音を立ててさらに強靭にパンプアップし、瞳が不気味に光を帯びる。
根岸学「ウオオオオーーーッッ!!!!」
根岸学「わが肉体の咆哮を──」
パピンポパ♪ ピンピン♪ パピンポパー♪(チャラそうなラップのメロディー)
根岸学「・・・・・・」
斎藤亮介「あ、メールだ」
〇化学研究室
新着メールの添付ファイルをクリックし、動画を再生する。
〇組織のアジト
「永遠不滅なる太陽神フラーの名のもとに!!」
動画には、全身スーツの怪しい男が二人映っている。
A男「ドクター根岸! 例の薬をわれわれ〈太陽の兄弟団〉に売れ!」
A男「この通り、金なら用意してある! われわれと取引しろ!」
流暢な日本語だが、あきらかに外国語訛りだ。
A男「われわれの偉大な大義のために──」
〇化学研究室
斎藤亮介「まーた、こいつらですよ。ウザいっすよね」
根岸学「無視しろ。ウルトラ・ステロイド(略してUS)は売りものじゃない」
斎藤亮介「〈カユミトメ~ル〉の大ヒットのおかげで、金はあるっすからね~」
根岸学「こいつは格闘技の世界においても、〝科学こそが最強〟を証明するために開発したんだからな」
根岸は、そばにあった鉄製の置物を手にすると──
手で叩いて、軽々とペシャンコにしてみせる。
根岸学「最強の格闘家を決める〈天下一闘技会〉。 開催は二ヶ月後か・・・」
薬品棚には、〈天下一闘技会〉の招待状がたてかけてある。
そしてなぜか、その封筒には血しぶきがべったりと付着していた。
根岸学「科学の申し子である俺が優勝し、体力バカどもを絶望させてやる!!」
〇黒
つづく
次回予告
第四話 妖怪退治
乞うご期待!!
ついに強敵登場ですか?今後の展開が楽しみです(笑)