一線の向こう(脚本)
〇大衆居酒屋
桐島 春樹(ほんと、臆病になったな。俺は)
桐島 春樹(佐倉さんと会うのはこれで三回目。そろそろ決めないとなあ)
桐島 春樹(迫ってもいいのかなあ。13歳も離れている女の子に・・・)
〇綺麗な図書館
佐倉さんとは、SNSの読書イベントで知り合った。本の好みが似ているから、名刺交換した。
〇本屋
ふたりで好きな作家のサイン会に行く。
〇大衆居酒屋
そのあと、俺の行きつけの居酒屋で一杯やるのがお決まりのコースだ。
〇大衆居酒屋
桐島 春樹「結構、飲んじゃったね。次は烏龍茶にする?」
佐倉 愛「そうですね」
桐島 春樹「すみません。烏龍茶ふたつ」
桐島 春樹「これ飲んだら帰ろっか? 長い時間おしゃべりしたから、疲れたよね」
佐倉 愛「いやです。帰りません・・・」
桐島 春樹「え・・・」
佐倉 愛「まだ料理が残っています。出されたものは全部いただかないと!」
桐島 春樹「あ、あー、そういう意味ね」
桐島 春樹(この子とはいつも色気のある話題にならないんだよな・・・)
桐島 春樹「・・・」
佐倉 愛「桐島さん?」
桐島 春樹「いやあ・・・この枝豆が乗ってる皿。青緑で綺麗な色だなって。 ・・・オーロラって、こんな色なのかなあ」
桐島 春樹「俺の夢はね、オーロラを見ることなんだ。 ・・・もし叶ったら、いつ死んでもいいって思うかも」
佐倉 愛「・・・死んじゃだめですよ」
佐倉 愛「死んでもいいほどうれしいことなんて、一個もないですよ」
桐島 春樹「そうだよね・・・ごめん」
佐倉 愛「私は死んでもいいとは思わないけど、いつでもいまが最高のことです」
桐島 春樹「へえ。例えば?」
佐倉 愛「今日の最高は、朝に食べたハムチーズトーストで、その次にきた最高が、お昼の焼き魚定食で・・・」
桐島 春樹「なんだよ、それ。食うことばかりじゃん」
佐倉 愛「だから、いまの最高は桐島さんと飲んでることです」
桐島 春樹「佐倉さん・・・」
桐島 春樹「まったく、かわいい顔でかわいいこというなあ・・・」
桐島 春樹(俺が10歳若ければ、適当に言いくるめて、どこかに連れ込んでるだろうな・・・)
佐倉 愛「でも・・・」
佐倉 愛「桐島さんと飲んだ次の日の朝ごはんって、ちょっとさみしいなあ」
佐倉 愛「楽しんだゆうべのことを思い出して、ひとりで食べることになるから・・・」
桐島 春樹「・・・そっか。それならさ」
佐倉さんの手を取った。
桐島 春樹「ずっと、俺といっしょにごはんを食べようか。明日も明後日も」
桐島 春樹「そんで来年は、オーロラを見る」
桐島 春樹「きみといっしょなら俺は死なないよ。きみもさみしくない。どうだ、いいだろ?」
佐倉 愛「はい、いいですね!」
佐倉さんは自分の手を、俺の手の上にかさねた。
桐島 春樹(うれしそうな顔しちゃって。酔っているから、明日には忘れるだろうなあ・・・)
桐島 春樹(ああ、やっぱり俺は臆病だ。 愛の告白なんて、ほんとうは素面(しらふ)の子にいうものなのに・・・)
〇渋谷のスクランブル交差点
佐倉 愛「今日も楽しかったですね」
桐島 春樹「そうだね。・・・あ、ちょっと待って」
〇お花屋さん
桐島 春樹「すみません、花束をひとつ作ってください」
〇渋谷のスクランブル交差点
桐島 春樹「はい、どうぞ」
佐倉 愛「綺麗・・・ありがとうございます」
桐島 春樹「朝ひとりで起きても、花があればさみしくないよ。これからは、いつも買ってあげるから」
桐島 春樹「そして、いつか・・・.」
桐島 春樹「いつか・・・花がなくてもさみしくない朝を、ふたりで迎えよう」
佐倉 愛「はい」
桐島 春樹(やっぱり佐倉さんは、笑顔がかわいいな)
桐島 春樹(酔いが回っている佐倉さんに、俺の言葉は届いたかな。それとも、夜風に吹かれて飛んでしまうかな・・・)
桐島 春樹(たとえ忘れても、また花を贈るよ)
桐島 春樹(いつか一線を超えよう・・・佐倉さん)
年齢差があるからこそ、あえて慎重になる彼の様子がすごく伝わってきて、本当にヒロインさんの事が大切なんだなと分かる台詞がたくさんありました!素敵な物語ありがとうございました!
強引にいかないのは彼が大人だからっていうのもあるけれど、彼が優しくて、そして彼女のことを本当に好きだからですね…。進展は遅いけれど、この2人ならお互いを大切にできる素敵な恋人関係になれそうだと思いました。歳の差という壁も手を取り合いながらゆっくり乗り越えて行って欲しいです。あと彼女がとっても可愛い!
年を重ねれば重ねるほど、恋愛って臆病になりますよね・・・思わず応援したくなる、でも彼らのペースでゆっくり歩んでいって欲しい・・・そんなジレンマに襲われてしまいました。でも、きっとその果てに掴んだ幸せなら、間違いなく「最高」ですよね・・・!