第十九話 「クールジャパンなアシュラ号」(脚本)
〇黒
景介たちは、登の案内でハニワ湖の地下に広がる巨大な空間にやって来た。
そこは天然の巨大洞窟を加工して作った軍事基地といった様子。
湖の地下にこんな空間があることも驚きだったが、景介たちの目の前にはさらに驚くべき物が存在していた。
〇地下空間の戦艦
間宮景介「・・・これは、なに?」
間宮登「調べたところ、おそらく宇宙から来た乗り物だ。素材から何から地球の物とは思えない」
金属とも木材とも思えるような素材でできた、全長50メートルはあろうかという謎の物体。窓らしき物もあるが中は見えない。
間宮景介「動くの?」
間宮登「わからない。中に入ることもできないんだ」
珍しくディーシャがひとことも喋らずにこの不思議な物体に見入っている。
動揺しているのか、挙動不審である。
ディーシャ・バジュランギ「・・・・・・間違いない」
ディーシャ・バジュランギ「間違いないんだけど、こんなことって意味不明で理解不能で奇想天外でクールジャパンだもん」
間宮景介「何をぶつぶつ言ってるんですか、ディーシャさん」
ディーシャ・バジュランギ「景介、聞いて驚くなよ」
ディーシャ・バジュランギ「これはワが子供の頃に大好きだったアニメ、『スペース・トゥインクル中学校』のアシュラ号という宇宙船だ」
間宮景介「は⁇」
ディーシャ・バジュランギ「子供の頃に、何度もお絵かきしたからはっきりと覚えてる。間違いなくアシュラ号だ」
間宮景介「すいません、ちょっと意味が分かりませんけど、何かの間違いか勘違いか妄想じゃありませんか?」
ディーシャ・バジュランギ「この反対側の窓の下に、主人公がにぎり寿司の落書きをするエピソードがある」
景介たちは反対側に回って窓の下を確認すると、にぎり寿司の落書きがあった。
ディーシャ・バジュランギ「ほらな」
間宮景介「どういうこと・・・」
ディーシャ・バジュランギ「どんなにネジのはずれたアニオタでも、さすがにこれはいったん真顔だよな」
間宮景介「真顔ですね・・・」
ディーシャ・バジュランギ「ワの頭がヘンになっちゃったのかと、一瞬だけ思ってしまった」
間宮登「科学というのは、まず「現象」が目の前にあって、それがどういう仕組みで成り立っているのかを解明することで進歩してきたんだ」
ディーシャ・バジュランギ「ふむ、理屈はわからないが、アシュラ号は確かに目の前にある現象だ」
間宮登「このアシュラ号がここにある理屈を想像してみよう。どういう経緯でここにあるんだろう?」
ディーシャ・バジュランギ「きっと、アニメの中から出てきたアシュラ号が、大昔の宇宙にタイムスリップしてからハニワ湖に来て、忘れ物になった」
間宮登「うん、今のところその可能性は否定できないね」
間宮景介「ありえないって言いたいけど、目の前にあるアシュラ号はどうしようもなく現実だし・・・」
などと言っていると、ペーターが慣れた手つきで宇宙船に手をかざし、すうぃーん、とスムーズな音がして入り口が開く。
「は⁇」
ペーターはアシュラ号に入っていく。
間宮景介「ちょっとペーター!」
景介たちは慌ててペーターの後を追ってアシュラ号の中へ入っていく。
〇コックピット
操縦席と思われる場所にペーターが座り、操作パネルのような物に手をかざすと、アシュラ号全体に動力が入る。
ディーシャ・バジュランギ「アニメと同じ音がするー!」
間宮景介「ペーター、これはどういうこと・・・?」
奥山ペーターゼン「フッ、どうもこうもない。 これは俺が乗ってきた船だ」
「ええぇぇぇーーーーーーーーー!!」
奥山ペーターゼン「ずいぶんと昔のことだから詳しいことは忘れちまったが、俺はこの船に乗ってこの惑星にやって来た」
間宮景介「いつ、なんのために!」
奥山ペーターゼン「フッ、いわゆる1000年前だ。俺はこの星の生物にたくさんの知識を与えるのが任務だった」
奥山ペーターゼン「要するに学問の支援だ」
間宮景介「うそでしょ・・・」
奥山ペーターゼン「この地の支配者は、天空から現れた俺を神だと崇めた。神だと崇められたら俺はやりたい放題だ」
間宮景介「何をしたんだよ」
奥山ペーターゼン「フッ、基本的には学問をせよと言っていただけだ」
間宮景介「基本的にって・・・」
間宮登「学問所を作るよう命じたのはお前なんだな?」
奥山ペーターゼン「フッ、命じてなどいない。学問をしろと言ったら、勝手に学問所を作ったのだ」
間宮登「学問所のことを知っていながら、なんで俺にそのことを話さなかったんだ! 一緒に創始者の研究をやってただろ!」
奥山ペーターゼン「フッ、学問所を作ったヤツなら知っているが、大学の創始者というのは知らん」
奥山ペーターゼン「学問所を作ったヤツは誰だと聞かれれば答えた」
間宮登「そうだった・・・こいつはそういうヤツだった」
間宮景介「ハニワ湖が急にできた理由はなぜ?」
奥山ペーターゼン「フッ、俺に反逆するヤツらに力を見せつけるため、この船のビームで湖をハニワの形にしてやった」
間宮景介「誰も逆らわなくなっただろうね・・・」
奥山ペーターゼン「フッ、俺に勝てるわけがない」
間宮景介「この地下空間は?」
奥山ペーターゼン「フッ、俺が見つけた古代の遺跡だ。 改造して格納庫として使っている」
ディーシャ・バジュランギ「アシュラ号はどうしてアシュラ号?」
奥山ペーターゼン「フッ、知らぬ。これに乗れと言われて操作方法を教わっただけだ」
ディーシャ・バジュランギ「どこで?」
奥山ペーターゼン「遠くの惑星だ。名前は忘れた」
間宮景介「ペーターもそこで作られたの?」
奥山ペーターゼン「フッ、おそらくな」
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