第二十話 「キラキラキャンパスライフ」(脚本)
〇コックピット
景介があまりにも真剣に宇宙へ行かないと言ったので、場の空気が静まり返っていた。
間宮登「そうか・・・。もちろん無理にとは言わない。景介は景介のやりたいことをやるのが一番いい」
間宮景介「・・・なんかごめん」
間宮登「小さい頃は自分の意見を言うのが苦手な子だったけど、しばらく会わないうちにすっかり大人になったんだな」
間宮景介「自分で考えて、自分で決められる人間になろうって思ったんだ」
間宮登「大学で何をやりたいんだ?」
間宮景介「キラキラキャンパスライフ」
間宮登「なるほど。痛い大学デビューはするなよ」
間宮景介「失敗談をたくさん研究してあるから大丈夫」
登が1万円札を景介に渡す。
間宮景介「⁇」
間宮登「モリグチに立て替えてもらってたメシ代だ。 悪いが返しておいてくれ。あいつは金さえ戻ってくれば解決する男だから大丈夫」
間宮景介「意外と簡単な人なんだ・・・」
間宮登「よーし、物資の積み込みを始めよう!」
ディーシャ・バジュランギ「始めよーう!」
〇地下空間の戦艦
2時間後。アシュラ号へ物資の積み込みが終わり、出発の準備が整った。
間宮景介「ディーシャさん、必ず無事に戻って来てくださいね・・・」
ディーシャ・バジュランギ「つまんなかったらすぐに帰ってくるよ」
間宮景介「帰ってきたら、あの・・・一緒にキラキラキャンパスライフがしたいです・・・」
ディーシャ・バジュランギ「任せろ、全力でキラキラする」
間宮景介「本当ですか!? 約束ですよ!」
ディーシャ・バジュランギ「ワは、国民を裏切っても友は裏切らん」
間宮景介「国民も裏切らないでください・・・」
間宮登「ペーター、そろそろ出発だ」
奥山ペーターゼン「フッ、俺は行かぬ」
「えっ⁇」
奥山ペーターゼン「すっかり忘れていたが、俺は景介の学問支援を4年間やることになっていたのだ」
間宮景介「いや、今さらそんなのいいって!!」
奥山ペーターゼン「景介が行かぬのならば、俺も行かぬ」
ディーシャ・バジュランギ「じゃあ景介も来ちゃいなよ」
間宮景介「ここしばらくの話を台無しにする展開ですよ!」
奥山ペーターゼン「フッ、俺は学問支援ロボとしての義理を果たし切るスタイルだ。4年間は景介と行動を共にする」
間宮景介「どうしよう登くん・・・」
間宮登「ペーター、義理と言うのなら、俺と行動を共にする義理もあるはずだ。俺とお前は研究パートナーだ」
間宮登「しかも、お前が景介と出会う以前からの関係だ」
奥山ペーターゼン「フッ、確かにそうだ」
間宮登「その俺を差し置いて、景介との義理を優先させるのか? 古い義理は忘れるのがお前のスタイルなのか?」
奥山ペーターゼン「フッ、俺を封印して行ったお前が言えた事じゃあ無いが、確かに俺にも研究パートナーとしての義理はある」
間宮登「見せてもらおうか、ロボの義理堅さというものを」
奥山ペーターゼン「フッ、いいだろう、今回は宇宙へ行って、お前に義理立てをしてやる」
間宮登「お前が義理を理解するロボでよかった」
間宮景介「ふー・・・、危なかった。 ペーターはこれだから油断できない・・・」
奥山ペーターゼン「景介よ、そういうわけだ。落ち込むなよ」
間宮景介「全然だいじょうぶでーす」
間宮登「俺たちは行ってくるが、お前は自分のやりたいことをしっかりやるんだぞ」
間宮景介「うん。何かとペーターが大変だと思うけど、気をつけてね」
間宮登「ディーシャちゃんもいるし、どうにかうまくやっていくよ」
奥山ペーターゼン「フッ、宇宙へ行けばよかったと後悔するなよ」
間宮景介「後悔しないよ! 自分で決めたことなんだから!」
奥山ペーターゼン「フッ」
間宮登「よーし、出発だ!」
ディーシャ・バジュランギ「おー!」
〇空
上昇が止まると天井が開き、青空が見える。湖の上に出てきたのだ。
アシュラ号は出力をあげ、垂直上昇した後、一気に地球をバーンと飛び出して行った。
景介は、アシュラ号が消えていった空をぼんやりと見上げている。
間宮景介「急に夢から覚めた様な感じ・・・」
自分の意志で決めて地球に残ったことや、ペーターを地球から追い出したことで、不思議な充実感もあった。
大きく息を吸い、ありったけの想いを青空に解き放つ。
間宮景介「キラキラキャンパスライフを楽しむぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
〇学食
3カ月後。景介は、キラキラキャンパスライフにすっかり飽きていた。
お昼の学生食堂で、にぎやかな友達グループと一緒にカレーを食べながら、景介は退屈の限界を迎えていた。
間宮景介(もうだめだーーー! 退屈すぎてイライラする!)
間宮景介(カレーを注文したら、カレーが出てくるのが肌に合わない!)
景介は友達もでき、サークルにも入り、飲み会やイベントにも多数参加して、憧れのキラキラキャンパスライフを過ごしている。
しかし、奥地で過ごした日々が刺激的すぎたため、平和なキラキラキャンパスライフではまったく物足りない体になっていた。
間宮景介(キラキラキャンパスライフ イズ ツマラナーイ!)
〇大教室
景介はイヤホンでうっすらと音楽を聴き、授業中の講義室から窓の外を眺めている。
間宮景介(平和だ・・・。ここにはイカれた学問支援ロボはいないし、僕を死刑にする人もいない)
間宮景介(ダイナマイトを持ったロボ軍団、誇り高きバギー軍団、ミイラの生首・・・全てが懐かしい)
間宮景介(こないだ、先輩の車で出かけたら80キロくらいしか出さなかったな・・・)
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