第二話 天下一闘技会(脚本)
〇曲がり角
木下「青馬文彦! 覚悟ーっ!!」
木下「ウォーーッツ!!」
青馬文彦「お、おまえは!!」
青馬文彦「またか・・・」
木下「おまえも武道家なら、不意打ちを卑怯とは言わせん!」
青馬文彦(あいかわらず気合いは凄いが、動きが鈍重すぎる)
木下「ぐっ・・・」
〇住宅街の公園
文彦と男は、ならんでベンチに腰掛けている。
男の名前は木下。文彦のライバル武術家(自称)だ。
木下「ことがあと先になったが、これを・・・」
青馬文彦「前は大薙刀だったっけ? 武器を変えても襲い方がいっしょじゃ意味ない」
木下「神様流柔術拳法初段にして天然無敵流武器術茶帯でもある俺の挑戦を何度か退けたくらいで、自分が最強などとおごるなよ」
木下「破邪神拳など、しょせんは井の中の蛙だ」
青馬文彦「なにが言いたい? おれも師匠も、他流派に遅れをとったことは一度たりともないぞ」
木下「まもなく、〈天下一闘技会〉が開催される」
青馬文彦「・・・え?」
木下「だから、〈天下一闘技会〉が開催されると言ったんだ」
青馬文彦「それって何十年かに一度だけやるっていう、あの伝説の大会のことか?」
木下「歴史は神代の昔までさかのぼり、初代優勝者は日本書紀に登場する、あの野見宿禰(のみのすくね)だという」
木下「かつては時の為政者の御前で堂々と試合を行っていたが、武器の使用以外すべて認められるという生死を賭けた闘いであるため──」
木下「近代に入ると野蛮だと批判されるようになり、地下へ潜らざるをえなくなった・・・」
青馬文彦「ふむふむ」
木下「だがその内容は、いまだ〈天下一〉の看板に偽りなし」
木下「今大会も、国内外問わずそうそうたる武術家たちが選抜されている」
青馬文彦「たしか優勝者には、莫大な褒美がもらえるんじゃなかったか?」
木下「優勝賞金は五百万円だそうだ」
青馬文彦「天下一のわりには生々しい額だな。でもそれだけあれば、母さんに文句を言われずにすむぞ」
木下「ふん、なさけない。武道家としての名誉より金が大事か」
木下「その様子だと、おまえのところにも招待状は届いていないようだな」
青馬文彦「へ? 招待状?」
木下「天下一候補に選ばれたなら、すでに大会の招待状が届いてるはずだ」
〇アパートのダイニング
青馬厚子「この子もぷくぷく太っちゃったわねえ」
厚子は煎餅をかじりながら、居間のテレビでワイドショーを見ている。
青馬厚子「もう三十なの? 昔は可愛いかったけど」
文彦は、手紙入れの中身を床にぶちまけていく。
青馬厚子「なにしてんの! 散らかさないで!」
青馬文彦「ない、ない、ない!!」
青馬文彦「くそ! 屈辱だ!!」
〇学生の一人部屋
青馬文彦「ハッハッハ! くすぐったいぞ♪」
ピータンは、赤ちゃんウサギから育てた文彦の愛兎だ。
青馬文彦「これから電話するから、少し大人しくしててくれよ」
青馬文彦「おれだ、青馬だけど」
木下「何の用だ?」
青馬文彦「例の大会のだけど、参戦する方法は他にないのか?」
木下「招待枠の他に、オープン参加の予選枠が二つある」
青馬文彦「ほんとか?」
木下「予選の日時は、今月の7日だ」
青馬文彦「7日!? 今日はもう19日だぞ!」
木下「あわてるな、第二回がある。二日後だ」
〇黒
二日後──
〇田舎の学校
小学校のグラウンド。
休日で、生徒の姿は見えない。
直径20メートルほどの四角形のリングが特設してある。外周のロープはない。
リング上には、すでに15名ほどの選手がのぼっている。
青馬文彦「人気プロレスラーに柔道のオリンピック金メダリスト。予選で、この顔触れか・・・」
青馬文彦「あそこにいるのは、魁王丸! 半年前まで現役の横綱だったのに・・・!」
青馬文彦「だがしょせんは表の世界の選手だ。スポーツマンにすぎん」
〇テントの中
リングのそばには、運営スタッフ用のパイプテントが設置されている。
スタッフ「時間だ。始めよう!!」
〇田舎の学校
司会者「みなさん、お待たせしました!」
司会者「これより、〈天下一闘技会〉第二回予選試合を行います!」
選手「おっしゃ!」
選手「いっちょ、やったるか!」
司会者「ルールを御説明します」
司会者「KOかギブアップ、あるいはリング外へ落ちたら即失格の時間無制限バトルロイヤル方式です」
司会者「最後まで生き残った一人が勝者となります」
司会者「それでは、ファイト!!」
魁王丸は、さすがに圧倒的な強さだ。
張り倒してダウンさせ、投げ飛ばして踏みつぶす。
完全に無双している。
文彦は試合開始早々、その魁王丸の背後にぴったりとくっついていた。
完璧に動きをシンクロさせて死角をつくっているため、宿主の魁王丸は背後に寄生されていることにけっして気づかない。
そのため他の選手が文彦を狙おうと近づいても、魁王丸は自分にむかってきたと勘違いして攻撃してしまうのだ。
青馬文彦「破邪小判頂(はじゃこばんいただき)!」
青馬文彦(常に安全圏を確保する、これがバトルロイヤル形式で闘うときの破邪神拳の極意だ!!)
ついには、残すところ三選手だけとなる。
人気プロレスラー高山弘と魁王丸という巨漢同士の一騎打ちだ。
先に魁王丸が突進して仕掛け、
ガシッと正面から組み合う。
そして、
と、もろ差しで怒涛の押し。
リングの端ギリギリまで追いつめ、魁王丸は勝利目前。
だが背後に張りついていた文彦が、魁王丸の背中に体当たりして、二選手を続けてリング外へ突き落とす。
青馬文彦「よっしゃーーっ!!」
〇黒
つづく!
次回予告
第三話 最終奥義と科学の怪物
乞うご期待!!
ついに予選が…て主人公はまさかの戦法(笑)でも腹抱えて笑いました。本戦に期待ですね。