第十六話 「未来モテ予想」(脚本)
〇シックなリビング
タカミザワが座るソファーの前に景介、ペーター、ディーシャが正座させられている。
タカミザワ「壊した物はすべて、全額弁償すること」
ディーシャ・バジュランギ「アイアイサー!」
間宮景介「ディーシャさん、本当に大丈夫なんですか? けっこうな額になりそうですよ・・・」
ディーシャ・バジュランギ「大丈夫だよ。金なら兄上が持ってる」
奥山ペーターゼン「フッ、タカミザワとやら、お前は暗黒街に部屋を借りていただろう? 間宮登の部屋の隣だ」
タカミザワ「数年前、確かに借りていたけどそれが何?」
タカミザワ「さんざん人んちの物を壊しておいてまったく反省が見られないその態度も何?」
間宮景介「すいません、このロボはいつもこうなんです。たぶん壊れてるんです」
奥山ペーターゼン「フッ、この謝るしか能がないブ男は間宮景介と言って、間宮登の弟だ」
タカミザワ「ふ、ふーーーーーーーーーーーーーーーん。 あそう。全然どうでもいい情報だよね!」
ディーシャ・バジュランギ「めっちゃ動揺してる風に見えるけどな」
間宮景介「あの、兄がどこにいるか知りませんか? 兄をどうしても見つけないといけないんです」
タカミザワ「そんなの、こっちが聞きたいくらいだよ!」
間宮景介「え?」
タカミザワ「あーもう、寝起きなのに悲しい思い出が蘇ってくるじゃん! さいあく!」
間宮景介「兄と何かあったんですか?」
タカミザワ「おい弟! 冷蔵庫にビールが入ってるから持ってきて! 全部ね!」
間宮景介「は、はい!」
〇シックなリビング
景介が冷蔵庫から缶ビールを10本ほど持ってくると、タカミザワは一気に2本を飲み干した。
タカミザワ「はー、しみるぅ! おい、お前らも飲め」
間宮景介「いえ、僕らまだ未成年なもんで・・・」
タカミザワ「んだよ、つまんねえなーガキども・・・」
ディーシャ・バジュランギ「すでに顔が真っ赤だな」
間宮景介「酒グセ悪そう・・・」
タカミザワ「いいかよく聞け。 あたしはね、間宮登にフラれた女なのさ!」
奥山ペーターゼン「フッ」
タカミザワ「笑うトコじゃねえっつーの!」
タカミザワはビールの空き缶をペーターの頭に投げつける。
カンッ!
ディーシャ・バジュランギ「いい音!」
奥山ペーターゼン「フッ、クソ酔っ払いめ」
タカミザワ「あたしは元々、明風大のクライオニクス研究チームのメンバーだったんだあ!」
間宮景介「クライオニクス?」
奥山ペーターゼン「人体冷凍保存のことだ」
タカミザワ「年功序列、女性蔑視、同調圧力、セクハラ親父・・・。思い出すだけでも吐き気のするチームだった・・・」
タカミザワ「本当に毎日うんざりして疲れ果ててた。でも、自分の研究理論は捨てられないから奥地に逃げて来たら、隣の部屋にいたんだよ・・・」
タカミザワ「まっすぐな目をした、楽しそうに何かを追い求めてるキラキラしたイケメンが!! 惚れるに決まってるだろ!!」
ディーシャ・バジュランギ「ねえさん、わかります!」
タカミザワ「他に好きな女がいるって言われて、何回フラれたか分からないくらいフラれたよ」
間宮景介「あの、かなり足がしびれてきたんですけど」
タカミザワ「黙って聞け小僧」
間宮景介「すいません!」
タカミザワ「最後に彼と会ったのは、あたしの部屋に夕食を食べに来ないかと誘った日だったね」
タカミザワ「もちろん断られたけど、それでもあたしは料理を作って待ってたのさ。バカな女だろ? どうよ? 弟くん!」
間宮景介「バ、バカじゃないと思います」
タカミザワ「バカなんだよ! 大バカなの! その日から彼は部屋に戻って来なくなったの!」
ディーシャ・バジュランギ「ねえさん、泣けます!」
タカミザワ「数日して、あたしは窓から彼の部屋に侵入したよ。そこで、彼が使い終わって置いていった研究ノートを盗んだんだ」
タカミザワ「あたしが夕食を用意してた日の予定が書いてあった。彼はミイラの寺院へ研究調査に行ってたんだ」
タカミザワ「あたしとの食事よりも大事な寺ってどんなもんかと思って、ノートの情報をたどってあたしも寺に向かったわけよ」
間宮景介「この場所ですよね?」
タカミザワ「そう、まさにここ。彼がまだ調査をしてるかもしれないと淡い希望を抱いてやって来たら、彼はいないし、ただのボロ寺だったわけ」
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