ショコラの前には苦めのコーヒーを(脚本)
〇応接室
隼「『──ほら、これやるよ』」
隼「『・・・チョコレート』」
隼「『俺が食べさせてやろうか?』」
隼「『なーんて、冗談だって』」
隼「『──よし、ちゃんと食べたな?』」
隼「『俺の、思いがこもったチョコレート』」
隼「『・・・・・・』」
隼「『・・・どんにゃ思いか──』」
隼「・・・・・・」
隼「・・・・・・ごほん」
隼「『・・・ど、どんなおもいか・・・』」
隼「・・・・・・」
隼「ぁあーーーもう!」
隼「そんなに笑うなよ、プロデューサー!」
〇応接室
──アイドル事務所──
隼「・・・ったく、笑いすぎだろ」
隼「ん?あぁ、大丈夫だって」
隼「そんな本気で怒ってねぇよ」
隼「練習、付き合ってくれてありがとな」
隼「・・・しっかし、やっぱ慣れねーな、こういう仕事は・・・」
隼「アイドルやってんのに何言ってんだ!って感じだけどよ」
隼「”逆チョコ”がテーマのCMか・・・」
隼「そもそも、そんなのあげたことねぇから ピンとこないっつーか・・・」
隼「・・・貰ったこと?ファン以外にってことか?」
隼「まぁ、あるにはあるけど・・・」
隼「いや、付き合ったりとかはしてねぇよ」
隼「「好きだ」って言ってもらえるのは嬉しいけどさ」
隼「俺は・・・本気で好きな相手とじゃなきゃ付き合いたくねーし」
隼「・・・っと、話が逸れたな」
隼「本番までに、どうにかしねぇと・・・」
隼「・・・つーか、一人芝居ってのがまず 結構恥ずかしいんだよな」
隼「それで余計に緊張しちまうっつーか・・・」
隼「は、はぁ!?」
隼「「本気で好きな人に告白するつもりで」って──」
隼「そんなん、余計に緊張しちまうだろーが!!!!!!」
隼「・・・え?いや」
隼「そそそそ、そもそも、そんなやついねぇって!」
隼「・・・・・・」
隼「う、嘘じゃねーよ!」
隼「・・・スキャンダルになる前に相談しろ?」
隼「だから!平気だって!」
隼「そんな心配ねーよ!」
隼「・・・まず、相手にされてすらねぇしな」
隼「あぁ?なんでもねーよ」
隼「とにかく!余計な心配すんな!」
隼「今日の練習は終わりだ、終わり!」
〇撮影スタジオ
──撮影スタジオ──
隼(ついに本番か・・・)
隼(出来る限りの準備はしてきた、後はそれを出し切るだけだ)
隼(それにしても、プロデューサーのやつ・・・)
隼(ったく、俺の気も知らないで)
隼(・・・言えるわけねぇだろ)
隼(好きな人はあんただ、なんて)
隼(・・・プロデューサーからして見れば、俺なんてまだまだガキだ)
隼(相手にされるわけねぇもんな・・・)
隼(でも、いつか──)
隼(俺がどんな仕事もこなせるようなアイドルになったら、その時は──)
隼「・・・・・・」
隼「──よし!」
隼(まずはこの撮影、びしっと決めねーとな!)
〇白
隼「──ほら、これ」
隼「・・・やるよ、チョコレート」
隼「俺が食べさせてやろうか?」
隼「・・・あはは!」
隼「なーんて、冗談だって」
隼「──よし!」
隼「ちゃんと食べたな?」
隼「俺の、思いがこもったチョコレート」
隼「──どんな思いか、教えて欲しい?」
隼「・・・・・・」
隼「じゃあ」
隼「耳貸して?」
〇黒
「──愛してる」
〇撮影スタジオ
隼「見てたか、プロデューサー!」
隼「一発OKだったぜ!」
隼「・・・おう、飲み物サンキュー!」
隼「ごくごくごく・・・」
隼「──ふぅ!」
隼「・・・で、ちゃんとやれてただろ?」
隼「そうか!「今までで1番良かった」か」
隼「まぁ、そりゃあ・・・」
隼「──本気だったからな」
隼「・・・なんでもねーよ!こっちの話」
隼「はぁ?上手くいった秘訣なら教えて欲しい?」
隼「ほんと、真面目っつーか・・・」
隼「鈍いよなぁ、本当」
隼「・・・・・・」
隼「まあ、いつか教えてやるよ」
隼「だから、さ」
隼「それまで待っててくれよな、プロデューサー!」
とても真っすぐなキュンとする話、最後まで楽しく読ませて頂きました。
プロデューサーの台詞がないことで、読者が女性でも男性でもいけるというのも素晴らしいです!笑
朗読劇にもピッタリで、ぜひ声優さんに読んで頂きたい作品だと感じました^^
彼の一挙手一投足が、健気で何とも可愛らしかったです。プロデューサーさんを振り向かせられる様に、これからも頑張ってほしいと思える作品でした!素敵な物語ありがとうございました!
プロデューサーさんに認めてもらおうと頑張る彼が可愛らしいです☺️
終始彼のセリフだけなのに二人の絶妙な距離感が伝わってきました😆