クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第17話 『白い惑星』(脚本)

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〇学校の屋上
深白(みしろ)「ごめん」
深白(みしろ)「長くなっちゃったね」
深白(みしろ)「わたしの話はこれでおしまい」
深白(みしろ)「もう日も落ちてきちゃったね。 あそこに光ってるの、一番星かな?」
九郎(くろう)「待って」
九郎(くろう)「深白は、深白が願ったから、そのことで僕が生まれたって言うの?」
深白(みしろ)「そうだよ」
九郎(くろう)「この世界が、深白の夢だから?」
深白(みしろ)「ついでに言うと、"最初"の夢にはね、クロくんのいる組織もなかったんだよ」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「だから今のクロくんもいなかった」
深白(みしろ)「似た人はいたかもしれないけど、それは今のクロくんとは別人だよね」
九郎(くろう)「僕のこれまでは全部ウソだったってこと?」
深白(みしろ)「ちがう。ちがうよ」
深白(みしろ)「クロくんの人生はクロくんのモノ」
深白(みしろ)「キミの選んできた道のりは全部ほんとう──」
深白(みしろ)「この世界ではね・・・」
深白(みしろ)「わたしだけがウソなんだ」
深白(みしろ)「・・・って、ええと、なんだっけ」
深白(みしろ)「そう!」
深白(みしろ)「わたしが言いたかったのは、だからクロくんが気に病む必要はないってこと!」
深白(みしろ)「だってクロくんはそのために生まれたんだ」
深白(みしろ)「クロくんがわたしを殺すのは、わたしが決めたことなんだよ」
深白(みしろ)「だから・・・」
深白(みしろ)「ね?」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「あ、もしかして武器が必要かな。うん。 スパッとできるやつがいいよねー」
深白(みしろ)「それに、もうゲームをする必要はないから」
深白(みしろ)「首の『その子』からも解放しないとね」
深白(みしろ)「──はい」
  しゅるり
  ぼとっ
深白(みしろ)「じゃーん!」
深白(みしろ)「チョーカーを解いてナイフに変えてみたよ」
深白(みしろ)「よかったら使ってね!」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「ねぇ、クロくん」
深白(みしろ)「さっきから、なんで動かないのかな?」
深白(みしろ)「・・・・・・」
深白(みしろ)「なにか言ってよ」
深白(みしろ)「・・・うん、ごめん。 クロくんがためらうのは当然だよね」
深白(みしろ)「だってわたしは、まだ優しい神様のフリをしている」
深白(みしろ)「卑怯(ひきょう)なんだ」
深白(みしろ)「まだキミに嫌われたくないなんて思ってる」
深白(みしろ)「価値ないのに」
深白(みしろ)「──今から、殺しやすいようにするね?」

〇黒
  ~某所~
  ~もとい、地球外縁~
  ~軌道ステーション~

〇宇宙ステーション
  組織によってコードネーム《燕》と呼称される彼女は、常にその場所に引きこもっていた。
  ──『スワロー・ネスト』
  彼女専用に建造された地球を周回する軌道ステーションだ。
  物資を受け取るのに色々と面倒な手続きがいるのだけが難点だったが。
  外界の煩雑さから物理的に解放された『ネスト』は、最高のプライベート空間である。
  彼女にとって地球は『うるさすぎる』のだ。
  強化ガラス越しに見下ろせる地球を眺めて、彼女はとっておきのお菓子を口に放り込んだ。
  甘美な刺激を舌のうえで転がす。
《燕》(スワロー)「まさかこんな光景を見ることになろうとはの」
《燕》(スワロー)「世界の終わり、か」
《燕》(スワロー)「あっけないものなんじゃのう」
  視線の先で地球は、見慣れた青い星ではなくなっている。
  ──白い。
  白──。白──。白──
  惑星すべてが真っ白に覆われているのだった。
  近寄れば、それらがうごめいているのがわかったろう。
  にょろにょろと。
  その『白』を彼女は知っている。
  神娘の蛇──
  現在、地球のあらゆる人間は突如どこからともなく出現した白い蛇たちに襲われ、死を待つ存在となっていた。
  軌道上にいた《燕》自身も含めて。

〇学校の屋上
  ~少し前~
深白(みしろ)「──はーい、かぷり!」
深白(みしろ)「今、みんなをわたしの蛇に噛みつかせたよ」
深白(みしろ)「毒を入れた」
深白(みしろ)「猶予は5分だけ」
深白(みしろ)「それまでにわたしを殺さないと、みんな死んじゃうよ、クロくん」

〇宇宙ステーション
  ~現在~
《燕》(スワロー)「ここにも現れて首筋に噛みつかれたときはびっくりしたが、まあ痛みもない」
《燕》(スワロー)「強い眠気だけがあるの」
《燕》(スワロー)「・・・ううむ。この眠気、サイキックで抵抗するのもそろそろ限界じゃ・・・」

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