クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第16話 『アンサー』(脚本)

クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

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〇学校の屋上
  ~《恋の証明ゲーム》決着後~
九郎(くろう)「・・・僕の勝ちだね、深白」
深白(みしろ)「ししし、わたしの負けだね」
深白(みしろ)「──はい。 わたしは、あなたに恋をしてます」
九郎(くろう)「どうしてかな」
深白(みしろ)「えー? それ、訊いちゃうの?」
深白(みしろ)「まあ、いーけどっ」
深白(みしろ)「クロくんらしいしねっ」
深白(みしろ)「えっとー、ひとつはカッコいいとこっ」
深白(みしろ)「知ってる? 自覚はないかもしれないけど、うちのクラスにもけっこう熱烈なファンがいるんだよ?」
深白(みしろ)「ひとつは強いとこっ」
深白(みしろ)「刺客の子たちから守ってくれたクロくん、とってもステキだったよ」
深白(みしろ)「嬉しかった」
深白(みしろ)「ひとつはひとの話を聞かないとこっ」
深白(みしろ)「なんでも自分で解決しようとするよね」
深白(みしろ)「すこし心配」
深白(みしろ)「ひとつはデリカシーのないとこっ」
深白(みしろ)「平気なふりして他人の事情に首をつっこむよね。傷つくくせに」
深白(みしろ)「心配」
深白(みしろ)「ひとつは手段を選ばないとこっ」
深白(みしろ)「手段のために自分のことは考えないよね。 わたしを拷問したりとか、さ」
深白(みしろ)「すっごく心配」
深白(みしろ)「ひとつは──」
深白(みしろ)「ううん。ぜーんぶ後づけだね」
深白(みしろ)「わたしはね」
深白(みしろ)「あなただから、好きになったんだ」
九郎(くろう)「・・・気持ちは、嬉しい。でも聞きたいのは、そういうことじゃない・・・」
深白(みしろ)「ん?」
九郎(くろう)「・・・ずっとわからなかった。どうして深白は、僕がキミを殺すと知っていて、その方法を教えるゲームを始めたの?」
深白(みしろ)「わたしはね、クロくん──」
深白(みしろ)「死にたいんだ」

〇黒
  ~某所~
《燕》(スワロー)「・・・死にたい、じゃと?」
《燕》(スワロー)「どういうことじゃ・・・」
《燕》(スワロー)「いや、待て──そういうことならば、秘密を明かすというゲームの意味は・・・!」

〇学校の屋上
九郎(くろう)「・・・深白」
九郎(くろう)「キミは自分が死ぬためにゲームを始めたの?」
深白(みしろ)「そうだよ」
深白(みしろ)「そうそう今回のゲームに勝ったら、わたしを殺せる方法を教えるって約束だったよね」
深白(みしろ)「教えてあげる。わたしの秘密、その5──」
深白(みしろ)「わたしを殺せるのは『わたしが自分よりも大切だって心の底から思えるヒト』だけなんだ」
深白(みしろ)「つまりね?」
深白(みしろ)「わたしが好きになったヒトだけが、わたしを殺せるんだ」
九郎(くろう)「そんなこと、どうして──」
深白(みしろ)「どうしてわかるかって?」
深白(みしろ)「あの日に出会った蛇──あのコが最後に教えてくれたの」
深白(みしろ)「神様でいることに耐えられなくなったらって」
深白(みしろ)「だからね?」
深白(みしろ)「わたしはクロくんにわたしの大切になってほしかったんだ」
深白(みしろ)「クロくんが大切なんだって確信がほしかった」
深白(みしろ)「そのためにクロくんとのゲームを始めたの」
深白(みしろ)「クロくんをわたしの近くに縛りつけた」
深白(みしろ)「自分勝手な理由だよ」
深白(みしろ)「そうやって過ごした日々は楽しくて楽しくて、ずっとこんな毎日が続けばいいと心の底から思った。思えたんだ」
深白(みしろ)「だから・・・」
深白(みしろ)「この秘密を明かすことにしました」
深白(みしろ)「きっと今が1番、クロくんを好きでいられる時間だから・・・」
深白(みしろ)「わたしは死にたい」
深白(みしろ)「神であることに耐えられない」
深白(みしろ)「わたしを殺して、クロくん」
深白(みしろ)「だって──」
深白(みしろ)「今のクロくんには、わたしを殺す力がある」
深白(みしろ)「キミだけに、その力はあるんだよ?」
九郎(くろう)「・・・っ、深白。僕は、僕はさ・・・」
九郎(くろう)「僕は」
九郎(くろう)「キミを・・・殺さなくちゃいけない」
九郎(くろう)「例外には、できないから・・・」
深白(みしろ)「ごめんね」
深白(みしろ)「くるしいよね」
深白(みしろ)「つらいよね」
深白(みしろ)「ありがと」
深白(みしろ)「嬉しい」
深白(みしろ)「好きだよ」
深白(みしろ)「大好き」
九郎(くろう)「っ」
深白(みしろ)「あ、そうだ。冥土のみやげに、こんな話をしようかな。あれ? 殺されるのはわたしなんだから冥土のみやげは違うかな?」
深白(みしろ)「んー」
深白(みしろ)「それじゃあ、惚れたら負けっていうし、オマケってことでー」
深白(みしろ)「秘密をもうひとつ!」
深白(みしろ)「すこし今までの話とかぶるところもあるけど、最後だから聞いてほしいな」
深白(みしろ)「とある神様の話」
深白(みしろ)「まあ、わたしなんだけどね?」

〇白
深白(みしろ)「女子高生から神になったその神様は、とても大きな力を持っていました」
深白(みしろ)「どのくらい大きな力かというと、なんでもできる力です」
深白(みしろ)「文字通り──」
深白(みしろ)「なんでもできました」
深白(みしろ)「望んだことはすべて実現します」
深白(みしろ)「まるで夢のようでした」
深白(みしろ)「眠ったときに見る夢」
深白(みしろ)「夢の中で、これは夢だ、とわかったときの感じです」
深白(みしろ)「その夢が、ずっと終わらない──」
深白(みしろ)「神様にとって世界は夢なのです」

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