クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第14話 『最高のエージェント』(脚本)

クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

今すぐ読む

クロと蛇神と、カノジョの秘密
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
深白(みしろ)「外、囲まれてるね」
深白(みしろ)「新しい刺客ってやつかな。クロくん」
深白(みしろ)「教室のまわりだけで、んーと、14人? それと学校の敷地内に似た存在が300人?」
九郎(くろう)「彼女たちは《雀達》(スパロウズ)」
九郎(くろう)「複数の体と『共有化した自我』を持つ組織の特殊部隊だ」
《雀達》(スパロウズ)「そうそう! そうなの!」
《雀達》(スパロウズ)「私達はみんなでひとつ! ひとつでみんな!」
《雀達》(スパロウズ)「ひとりで出来ないことでもふたりなら」
《雀達》(スパロウズ)「ふたりでムリでも3人で」
《雀達》(スパロウズ)「3人でダメならたくさんで!」
《雀達》(スパロウズ)「たくさんの私達に出来ないことは──ない!」
深白(みしろ)「あの、クロくん? よくわからないんだけど。たくさんなら、わたしを殺せるってこと?」
九郎(くろう)「深白。ごめんね」
九郎(くろう)「組織はどうやら手段を選ばなくなったみたいなんだ」
深白(みしろ)「・・・・・・」
九郎(くろう)「《雀達》の最大の特性は──消耗品」
九郎(くろう)「彼女たちは『消失』を恐れない」
九郎(くろう)「複数の体に『共有化した自我』を持つ彼女たちは自分が失われるという感覚がひどく鈍い」
九郎(くろう)「ひとり失われたところで、彼女たちの感覚ではカサブタが剥がれたようなもの、らしいよ」
九郎(くろう)「『補充もきく』から、なおさらだろうね」
深白(みしろ)「そう・・・」
深白(みしろ)「つまり今から『消失』を恐れないたくさんの刺客が、殺せるまでわたしを殺しにくるってことかな?」
九郎(くろう)「そうだね。でも安心して、深白」
九郎(くろう)「──させないから」

〇黒
《雀達》(スパロウズ)(うーん、これは──ぎるてぃ? ぎるてぃ!)
《雀達》(スパロウズ)(カラスくんはターゲットについたね)
《雀達》(スパロウズ)(いいね。わるくない。望むところ)
《雀達》(スパロウズ)(警告はしたよ。したね?)
《雀達》(スパロウズ)(じゃあ行くよ、私達!)
(オペレーション・スタート!)

〇教室
九郎(くろう)(廊下と、両隣の教室──それに窓の向こうの旧校舎。くわえて上と下の階の教室。全方位が囲まれている)
九郎(くろう)(意識を共有してる《雀達》は誰か1人が『見ていれば』、それを全員で共有できる。つまり死角はない、と考えた方がいい)
九郎(くろう)(だけど──)
  パシッ!
九郎(くろう)(意識を共有しているなら、それは『1人を相手にしているのと変わらない』)
九郎(くろう)(300人いるのなら、『1人を300回、対処すればいい』だけだ)
深白(みしろ)「え、クロくん?」
深白(みしろ)「さっき一瞬クロくんがブレて見えたんだけど、なにが起こったの?」
九郎(くろう)「ああ、銃弾が6方向から同時に撃ち込まれてきたから、キャッチしたんだ。ほら」
深白(みしろ)「ほらって手のひら見せられても・・・」
深白(みしろ)「・・・ほんとだ。ど、どうやって!?」
九郎(くろう)「片手だけでも指の隙間は4つあるよね?」
深白(みしろ)「だからなに!?」
九郎(くろう)「両手あれば8発までは処理できる──と」
深白(みしろ)「ちょクロくん!? 顔が近い! 近いよ!?」
深白(みしろ)「なんかわたし壁ドンされたみたいになってる!」
九郎(くろう)「今度は深白を狙ってきた」
九郎(くろう)「ごめん、深白。少し乱暴にするよ」
深白(みしろ)「え!? え!?」
深白(みしろ)「ま、まさか、これって、これって──」
九郎(くろう)「気をつけて。しゃべると舌を噛むよ」
深白(みしろ)「お姫さまだっ──いたひ!」

〇学校の屋上
  ~30分後~
《雀達》(スパロウズ)「ウソ。ありえない。こんな、こんな・・・」
《雀達》(スパロウズ)「ね? ね?」
《雀達》(スパロウズ)「私達! ねぇ!? 誰か応えてよ! ねぇ!?」
《雀達》(スパロウズ)「な、なんで誰も応えてくれないの・・・?」
《雀達》(スパロウズ)「ねぇ、私達」
《雀達》(スパロウズ)「うそ・・・」
《雀達》(スパロウズ)「ほんとうに、もう、"私"しか残ってない?」
???「──そうか。キミで最後なんだね」
最後の《雀達》「っ! カ、カラスくん・・・?」
最後の《雀達》「な、なんで私達の"中"(ネットワーク)にいるの・・・?」
???「カンタンな話じゃ。ワレが中継しておる」
最後の《雀達》「え、ツバメちゃん!?」
《燕》(スワロー)「楽な仕事じゃったぞ?」
《燕》(スワロー)「ひとりをハックするだけで全員の動きが筒抜けなのじゃからな」
《燕》(スワロー)「ま、最初に《鴉》(クロウ)が派手な立ち回りでおまえたちの心に隙を作ってくれたおかげじゃがな」
最後の《雀達》「そ、そんな・・・」
《燕》(スワロー)「やれやれじゃ。おまえたち、いったい誰を相手に戦いを挑んだと思っておるんじゃ?」
《燕》(スワロー)「コードネーム《鴉》!」
《燕》(スワロー)「最っっ高のエージェントと、そのサポーターじゃぞ!」
九郎(くろう)「あれ? 相棒じゃなかったの?」
《燕》(スワロー)「は、はて、そうじゃったかな? う、うむ。ヌシがそう言ってくれるなら・・・」
《燕》(スワロー)「──相棒じゃ!」
九郎(くろう)「それで《雀達》のキミ、どうする? 降参してくれると助かるな」
最後の《雀達》「うっ、ううっ」
最後の《雀達》「こ、降参・・・・・・」
最後の《雀達》「しない」
《燕》(スワロー)「なんじゃと?」
最後の《雀達》「誰が! 降参なんてっ、するもんか!」
最後の《雀達》「カラス・・・!」
最後の《雀達》「"みんな"を殺したおまえを"私"は絶対に許さないんだから!」
九郎(くろう)「・・・・・・」
最後の《雀達》「たとえ敵わなくったって・・・!」
九郎(くろう)「いや殺してないけど」
最後の《雀達》「許さない許さない必ず一矢報い──ふぇ?」
最後の《雀達》「え・・・殺して、ない、の?」
九郎(くろう)「みんな気絶させて転がしてるだけだよ」
《燕》(スワロー)「ワレの力でネットワークを遮断したから、殺されたように感じておるかもしれんがな」
最後の《雀達》「・・・・・・」
最後の《雀達》「そ、そっかぁ・・・」
最後の《雀達》「よかった──」
《燕》(スワロー)「ふむ。緊張が切れて意識を失ったようじゃな」

〇学校の屋上
九郎(くろう)「一段落だね」
《燕》(スワロー)「はっ、こうして終わってみればあのメイド好きの鷹頭に良いように使われた気がするのう」
九郎(くろう)「指令は苦労性だからね」
《鷹》(イーグル)「いやはやバレていましたか」
《燕》(スワロー)「あ! このメイド好き!」
《燕》(スワロー)「ようやっと回線を繋げたと思えば第一声がそれか!」
《鷹》(イーグル)「彼女たちを生み出した研究所にとって、彼女たちはクローニングでいくらでも補充ができる消耗品です」
《鷹》(イーグル)「それ故に彼女たちは自身の命を軽んじていた」
《鷹》(イーグル)「エージェントの任務はときに命がけとなります」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第15話 『最後のゲーム』

ページTOPへ