企画読み切り(脚本)
〇明るい廊下
「どうしました?」
右上から降ってきた声にドキッとする。
なんでここに来ちゃうの・・・先輩・・・
柚木みのり「ちょっと・・・考え事です」
ああ、またやってしまった。
こんな可愛くない返事ばかり。
もっとたくさん話したいのに・・・。
先輩「そうですか。 なにかお役に立てることがあればいつでも言ってくださいね」
〇明るい廊下
ぶっきらぼうな私に対してでも、先輩は優しい。
そう、みんなに優しい。
特別なんてない。
でも、
こんなふうに2人きりの場所で話しかけられちゃったら
ちょっと特別かも、なんて
期待しちゃうから良くない。
〇明るい廊下
愛華「せーんぱーい!ここにいたんすかー!先輩いないと論文読めなーい!」
廊下の遠いところから
同期の愛華ちゃんの声が響いてくる。
〇明るい廊下
彼女も、先輩狙いだ。
分かってる。
愛華ちゃんみたいに、明るくて華やかで元気で、みんなに好かれる雰囲気なら、
先輩だってきっと好き。
私なんかじゃ・・・
またネガティブになってしまう。
1人で考え込むといつもそうだ。
いっそ思いっきりイメチェン・・・
そんな勇気あるわけないし。
柚木みのり「はぁ・・・時間か・・・」
おひとり様タイム終了。
journal clubの時間がやってくる。
気が重いのは、英語が苦手なのもあるけど。
一番はやっぱり・・・
〇役場の会議室
愛華「せんぱーい!」
牧野さん「せんぱい!」
今野先輩「先輩はどうですか?」
事ある毎に四方八方から女子の声。
そしてお目当てはもちろん、先輩。
先輩「そうですねぇ・・・・・・柚木さんはどう思いました?」
柚木みのり「はい?」
声がひっくり返った。
なんで私なの!よりによってこんなときに!
ほら!美人たちの目が怖いよ!
先輩「柚木さん、今この手法で実験されてますよね?ここの手技ってどれくらいかかるんでしたっけ?」
柚木みのり「ああ、えーっと、例えば16サンプルやるとしたら、3時間くらいです。 私の場合」
先輩「ありがとうございます。 ではそうすると・・・」
心臓止まるだろー!
今の何!
いじめ?新手のいじめ?
もう嫌だこの空間・・・
だめだ・・・気持ち悪くなってきた・・・
柚木みのり「すみません、ちょっと体調が良くないので退席してもいいですか?」
先輩「大丈夫ですか?私も付き添っ・・・」
柚木みのり「大丈夫です!失礼します!」
〇明るい廊下
先輩まで一緒にきたらそれこそ死ぬんだよ・・・
愛華「みのりーん?」
柚木みのり「え・・・愛華ちゃん・・・?どうして?」
愛華「心配だから私が付き添うって言ってきたんだよーん! 医務室いこ!」
本当に優しいな・・・私もこういう人になりたかった・・・・・・
愛華「ねえみのり」
〇明るい廊下
廊下の角を曲がり少し歩いたところで
愛華ちゃんの声が低くなった。
愛華「先輩となに話してたの?」
柚木みのり「なにって・・・」
愛華「journal始まる前!2人で!何話してんだって聞いてんだよ」
愛華「まさかあんたも先輩狙ってんの?」
手が震える・・・怖い・・・こんな愛華ちゃん・・・知らない・・・
柚木みのり「そ、そんなわけ、ないじゃん。こんな私だし」
絞り出した精一杯の言葉が、
自分に突き刺さる。
愛華「だーよねー?ごめんねー?怖いこと言っちゃってさぁ。んじゃ、私せんぱいのとこいくから!」
柚木みのり「待って」
思わず声が出てしまった。
怖い。
だけど、変わりたい。
柚木みのり「私も、好きでは、あるから」
愛華「はぁ?なめてんの?」
エレベーター前の窪みに押し込められる。
愛華「あんたなんか相手されるわけないよねー? あんたじゃつり合わない」
愛華「わかるー?喧嘩うっといて何泣きそうになってんの?マジでうざ」
「なにしてるんですか!」
柚木みのり「あっ・・・」
先輩。
愛華「医務室行く途中でしんどくなったみたいでー!ここで様子見てたんですよー」
先輩「違いますよね?」
先輩の声が、私の知らない冷たさを帯びている。
愛華「えっ・・・ なにが違うんですかー!そうだ!先輩に聞こうと思っ」
先輩「論点をずらさないでください。 journal clubでも指摘したはずです」
愛華ちゃんは、
先輩の腕に伸ばそうとした手を、下ろした。
愛華「なんで・・・・・・・・・なんでみのりなの!」
先輩「好きだからです」
・・・・・・え?
今、なにが・・・
〇明るい廊下
急に走り去った愛華ちゃんは、泣いていたのかもしれない。
〇明るい廊下
先輩「突然あんなこと言ってすみませんでした。気にしないでください。私の勝手な」
柚木みのり「気にします!・・・・・・・・・気に・・・させてください」
手が震える。顔も見れない・・・それでも。
柚木みのり「私、は、先輩が、好き!」
・・・・・・返事がない。
泣きそうなのを我慢して見上げると
顔を赤らめ、右手で口元を覆って視線を逸らす先輩がいた。
先輩「・・・・・・これは・・・・・・だめですね。 私が冷静ではなくなってしまいます・・・・・・・・・」
柚木みのり「・・・?」
先輩「・・・・・・ちゃんと言わせてください。 私は、あなたが好きです」
〇明るい廊下
身体中の熱さは、初夏の日差しのせいか、
それとも・・・。
ストーリーを見て、この二人はお似合いのカップルだなとすごく感じました。また、愛華ちゃんの豹変っぷりや、先輩のイケメンぶりに心が躍らされました!
素敵な作品ありがとうございました!
先輩がかっこよすぎて、ラストシーン見返しちゃいました。素敵!!
あいかちゃんの言動で可愛い女性の裏側をみたようで怖かったです。私も主人公と同じくネガティブキャラなので、こういう話を読むと勇気がもらえます。