クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第13話 『襲撃』(脚本)

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春日秋人

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〇白
深白(みしろ)「わたしがどうやって神になったのか」
深白(みしろ)「あれはそう──」
深白(みしろ)「クロくんが転校してくる2週間前だから、いまから3週間前のことになるかな」
深白(みしろ)「その日、ただの女子高生だったわたしは、まあ色々あって山の中をさまよっていたんだ」
深白(みしろ)「クロくん、人間だった頃のわたしがどんなだったか知ってる?」
深白(みしろ)「ししし、いじわるな質問だったかな?」
深白(みしろ)「わたしの過去の情報は、いまこの世界には『ない』からね」
深白(みしろ)「知ろうとしたって絶対に見つからないよ」
深白(みしろ)「え? うん」
深白(みしろ)「そう『消失』してるの」
深白(みしろ)「わたしの記憶にしか残ってない」
深白(みしろ)「だからすごい秘密だよー」
深白(みしろ)「あ、その顔は疑問に思ってるね。なのに友達がわたしに普通に接してきているのはおかしい、ってところかな? 当たり? やった」
深白(みしろ)「うーん、感覚でそうだってわかってるけど、説明するとなると難しいね」
深白(みしろ)「みんなの中では、《過去のわたし》だった記憶に《今のわたし》が上書きされてる感じなんだ」
深白(みしろ)「えっと、コンピュータで文字打ったりするときに一括置換ってあるよね」
深白(みしろ)「あんな感じで、《過去のわたし》が《今のわたし》に置き換わってるのね」
深白(みしろ)「だからほら、こんな真っ白くて長い髪になっても騒がれたりしなかったよ」
深白(みしろ)「うん。人間だったときのわたしは、普通の色の髪だったよ」
深白(みしろ)「長さも肩口くらいまでしかなかったし。いまはほら超長くて、なんだろ──神っぽい? クロくんはどっちが好みかなー?」
深白(みしろ)「どっちでも同じ? ふーん、そう。興味ない、と」
深白(みしろ)「じゃあ眼鏡をかけてたわたしにもべつに興味はな──え? そっちには興味があるの?」
深白(みしろ)「あるんだ。なぜ・・・」
深白(みしろ)「今度かけてみるね」
深白(みしろ)「──まあ、そんな感じで人間だった頃のわたしは地味な眼鏡っこだったんだ」
深白(みしろ)「話を戻すね」
深白(みしろ)「とにかくその日、わたしは山の中をさまよっていたの」
深白(みしろ)「街の東に広がる深い山の中を」
深白(みしろ)「入ったのは夕方だったかな?」
深白(みしろ)「よく覚えてないや」
深白(みしろ)「月が明るかったから、夜になっても転んだりはしなかった」
深白(みしろ)「青白い月の光に照らされた山の中は、まるで影絵の世界のようで」
深白(みしろ)「人間だったわたしは霞のかかった思考で、空に見える月を目指して、山道を登っていった」
深白(みしろ)「気がつくと目の前に白い鳥居があって」
深白(みしろ)「わたしはくぐった」
深白(みしろ)「昼になった」
深白(みしろ)「そう錯覚するくらい、あたりが明るくなった」
深白(みしろ)「たぶん"あそこ"は現実じゃなかった」
深白(みしろ)「だって遙(はる)か彼方に見えていた月が、ほとんど目の前にあったから」
深白(みしろ)「そこは月の光に満ちていた」
深白(みしろ)「わたしはもっと月に近づきたくて足を踏み出して──」
深白(みしろ)「膝を思いっきり強打した」
深白(みしろ)「ものすごい痛かった」
深白(みしろ)「その場でのたうち回ったもん・・・」
深白(みしろ)「まあ、おかげで霞(かすみ)のかかっていた思考はハッキリしたんだけど」
深白(みしろ)「わたしが膝を打ちつけたのは、四角い石の台座だった。直角のカドに、つんのめる形でぶつけたんだとわかった」
深白(みしろ)「じくじくする膝をさすりながら、わたしは台座のカドを恨(うら)みがましくにらんだんだ」
深白(みしろ)「そこで見つけたの」
深白(みしろ)「台座の上にいる、1匹の白い蛇(へび)を」

〇教室
九郎(くろう)「──白い蛇(へび)?」
深白(みしろ)「うん。でも最初は、そのコが蛇だってこともわからなかった」
深白(みしろ)「なぜって?」
深白(みしろ)「なんと! そのコは自分の尻尾を食べちゃってたんだよ! びっくりだよね!」
深白(みしろ)「ぱっくり丸呑(まるの)みしてた」
深白(みしろ)「こう8の字みたいになってて」
深白(みしろ)「だから、なんか白い縄(なわ)だなーって思って見てたの。でもハッと気づいたんだよ」
深白(みしろ)「蛇(へび)だコレ! って」
九郎(くろう)「それで、深白はどうしたの?」
深白(みしろ)「なにやってるのー!? って思って」
深白(みしろ)「助けなきゃって思った」
深白(みしろ)「だからそうしたの」
九郎(くろう)「とっさの判断だったわけだね」
深白(みしろ)「そのコの頭と、呑まれてない尻尾のとこを掴んで、おりゃーってかけ声一発っスよ」
九郎(くろう)「・・・その蛇もびっくりしただろうね」
深白(みしろ)「そしてわたしは神になったんだ」
深白(みしろ)「おしまい」
九郎(くろう)「え、そこでおしまい?」
深白(みしろ)「うん。気がつくと、わたしはもう今のわたしになってて、明け方の山の頂上に倒れてた」
深白(みしろ)「"あそこ"や、あのコががなんだったのか、わたしにもよくわからない」
深白(みしろ)「けどたしかなのは、わたしがその日、女子高生から神になったということ──」
深白(みしろ)「ししし、これがわたしの秘密その4でした」
九郎(くろう)「なるほど・・・」
九郎(くろう)「深白は、助けることで神になったんだね」
深白(みしろ)「え? えーと、そうなのかな?」
深白(みしろ)「あのコにはいい迷惑で、そのお返しって気もしなくもないというか」

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