第12話 『世界で1番優しい神様』(脚本)
〇大きい病院の廊下
~病院~
子供「あれ? おにいちゃん だれ」
子供「えーじぇんと? くろー?」
子供「かっこいい!」
子供「え うん それ ぼくだよ」
子供「しろいキレイなおねえちゃんに」
子供「どんっ されたんだ」
子供「そうそれ つきとばされたんだ ぼく」
子供「へいきだよ ママはすごくおこってたけど」
子供「ぼく わかってるんだ」
子供「おねえちゃんは ぼくをたすけてくれたんだ」
子供「でも しんぱいだなー」
子供「おねえちゃん ずっとニコニコしてたけど」
子供「いたそうだったから」
子供「え けがしてたのかって?」
子供「わかんないけど・・・」
子供「いもうとが ないてるときみたいだったよ」
〇病院の入口
~病院・玄関口~
《燕》(スワロー)「・・・ヌシよ。やはり神娘(かみむす)がトラックの事故からあの子供を助けたようじゃの」
九郎(くろう)「そして深白は、突っ込んできたトラックとビルの壁に挟まれた」
《燕》(スワロー)「即死、じゃったろうな」
《燕》(スワロー)「じゃが神娘は復活した。 その際にトラックの運転手は──『消失』」
《燕》(スワロー)「トラックやビルの破損も『なかったこと』になった」
《燕》(スワロー)「ワレらは知識があったから記憶を保てておるが、他の者たちは、よくて幻を見たと感じておるくらいじゃろう」
《燕》(スワロー)「あの子供、印象だけは覚えておったな」
九郎(くろう)「わかっていた」
九郎(くろう)「深白は優しい神様だ」
《燕》(スワロー)「ヌシ・・・」
《燕》(スワロー)「む、雨か」
《燕》(スワロー)「しばらく止みそうもないの」
〇教室
~月曜~
~朝・学校~
深白(みしろ)「おはよー、クロくん!」
深白(みしろ)「ししし、デート楽しかったね!」
深白(みしろ)「最後はちょっとびっくりしちゃったけどね」
深白(みしろ)「いやー、わたしが神じゃなかったら大惨事だったよねー」
深白(みしろ)「神でよかった!」
九郎(くろう)「おはよう、深白」
九郎(くろう)「・・・いつも通りだね」
深白(みしろ)「えー? だっていつも通りだし。 いつも通りなのは当然じゃないかなー」
九郎(くろう)「無理してない?」
深白(みしろ)「わ、直球だ」
深白(みしろ)「んー、それはねー、ししし!」
深白(みしろ)「秘密!」
深白(みしろ)「ゲームで勝てたら教えてあげてもいーよ?」
〇教室
~放課後~
深白(みしろ)「《にらめっこゲーム》!」
深白(みしろ)「今日は《にらめっこゲーム》をするよー!」
九郎(くろう)「にらめっこ──」
九郎(くろう)「お互いに顔を見合って、さきに笑ったほうが負けのゲームだよね」
九郎(くろう)「にらめっこをするの?」
深白(みしろ)「なあに? クロくん。まるで自分が一方的に有利なゲームを提案されて戸惑ってる、みたいな顔をしてるね」
九郎(くろう)「僕が有利じゃないかな」
深白(みしろ)「うんうん」
深白(みしろ)「そーだよね」
深白(みしろ)「たしかにクロくんは無表情が板についてるよね。対してわたしはいつもニコニコしてるもんねー」
深白(みしろ)「だが甘い!」
深白(みしろ)「わたし、にらめっこ強いんだよ」
深白(みしろ)「どうかな? 気にならない?」
九郎(くろう)「わかったよ。《にらめっこゲーム》だね」
深白(みしろ)「ししし。じゃ、決まり!」
深白(みしろ)「あ、開始して1分経ってどっちも笑わなかったら、会話もOKにしよ?」
九郎(くろう)「うん。いいよ」
深白(みしろ)「よし!」
深白(みしろ)「にらめっこしましょ! わらっちゃだめよ!」
深白(みしろ)「あっぷっぷ!」
~1分後~
深白(みしろ)「──1分、経ったね」
九郎(くろう)「そうだね」
深白(みしろ)「やっぱりクロくん強いね」
深白(みしろ)「ぜんぜん笑わない」
九郎(くろう)「深白もだよね」
九郎(くろう)(とくに笑わせようとなにかしてくるわけじゃないけど。ただただ無表情だ)
九郎(くろう)(笑みの消えた深白を見るのは初めてだけど、とても自然に見える)
九郎(くろう)(まるでこちらの顔のほうが本当みたいに)
深白(みしろ)「表情くらい変えられるよ」
深白(みしろ)「そういうゲームだからね、これ」
深白(みしろ)「言ったでしょ」
深白(みしろ)「強いんだよ、わたし」
九郎(くろう)「いつもの顔は嘘ってこと?」
深白(みしろ)「どうかな」
深白(みしろ)「嘘をついているつもりはないよ」
深白(みしろ)「そう言うクロくんは?」
九郎(くろう)「僕?」
深白(みしろ)「わたしにはね」
深白(みしろ)「クロくんの無表情のほうが嘘に見える」
九郎(くろう)「・・・そうかな」
深白(みしろ)「うん」
深白(みしろ)「似てるんだよ。わたしたち」
九郎(くろう)「深白。どうしてこのゲームにしたの?」
深白(みしろ)「なんでかって?」
深白(みしろ)「ぜったい勝てると思ったからだよ」
深白(みしろ)「実際、クロくんは油断したでしょう?」
深白(みしろ)「でも本当はこんなふうにもできる」
深白(みしろ)「ほら、蛇(へび)って冷血動物だから」
深白(みしろ)「本当のわたしは冷たいんだよ」
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