クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第11話 『デート(下)』(脚本)

クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

今すぐ読む

クロと蛇神と、カノジョの秘密
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇おしゃれなレストラン
  ~ショッピングモール~
  ~レストラン~
深白(みしろ)「こうしてお店でテーブルを挟んで座ってると思い出すね」
深白(みしろ)「ほら、クロくんとやった最初のゲーム」
九郎(くろう)「お互いに相手の好きなものを当てる、ってやつだね」
深白(みしろ)「そうそう!」
深白(みしろ)「ししし、なんだかすごく懐かしい気がする」
深白(みしろ)「まだ1週間も経ってないのに、おかしいね。 それだけ楽しかったってことかなー?」
深白(みしろ)「クロくんは?」
九郎(くろう)「そうだね。ひとつの任務に対する期間でいえば、ずいぶん長くなってきたよ」
深白(みしろ)「ぶー、そゆこと聞きたいんじゃないんですけど・・・」
深白(みしろ)「クロくんだなぁ」
深白(みしろ)「ね、せっかくだし、また食べさせあいっこしようよ」
九郎(くろう)「いや料理を頼んだのは深白だけだからね。深白だけ食べればいいんじゃないかな。僕は持参した食料が──」
九郎(くろう)「僕は持参した食料が──」
深白(みしろ)「はいそこ! 豆禁止!」
九郎(くろう)「え」
深白(みしろ)「そう思ってクロくんのぶんも頼んでるんだから。わたしだけであんなに食べられないよ」
深白(みしろ)「あ、きたきた」
深白(みしろ)「クロくんの好きな七草がゆだよー」
深白(みしろ)「ふーふー」
深白(みしろ)「はい」
深白(みしろ)「あーん、して?」
深白(みしろ)「ししし!」

〇モールの休憩所
  ~ガーデンエリア~
深白(みしろ)「タピっちゃう?」
九郎(くろう)「タピ?」
深白(みしろ)「タピっちゃおう!」
九郎(くろう)「ああ、タピオカジュースのことだね」
九郎(くろう)「人気だって学校で深白の友達が話してるのを聞いたよ」
九郎(くろう)「待ってて。買ってくるよ」
深白(みしろ)「ありがとー」
深白(みしろ)「わたしは座れるベンチを確保しておくね」
九郎(くろう)「ん。任せたよ」
九郎(くろう)「・・・・・・」
《燕》(スワロー)「《鴉》(クロウ)よ。 話があるんじゃが・・・」
九郎(くろう)(《燕》(スワロー)? なにかあった? 声が沈んでるみたいだけど)
《燕》(スワロー)「それが、少し前に本部から通信があっての」
九郎(くろう)(うん)

〇黒
《燕》(スワロー)「──《鴉》が使い物にならなくなるじゃと?」
《雀達》(スパロウズ)「カラスくんはヘビ様ちゃんの毒に冒されちゃったんだよー」
《雀達》(スパロウズ)「だから私達、忠告しようって」
《燕》(スワロー)「ヘビ様というのはあの神娘のことか?」
《燕》(スワロー)「毒とは、どういう意味じゃ?」
《雀達》(スパロウズ)「ツバメちゃーん、ツバメちゃーん、ちょっとは自分の頭で考えようよー」
《雀達》(スパロウズ)「いまのカラスくんを見てればわかるでしょ?」
《雀達》(スパロウズ)「最高のエージェントがすっかり骨抜きにされちゃってねー? ね?」
《雀達》(スパロウズ)「タカおじさんが言ってたんだよ?」
《雀達》(スパロウズ)「このままでは今後の任務にも差し障るかもしれませんね、って!」
《雀達》(スパロウズ)「まして神の娘に取り込まれることがあれば、組織にとって──いえ世界にとって大いなる損失です、って!」
《雀達》(スパロウズ)「あまり猶予はありませんね、って!」
《燕》(スワロー)「・・・・・・」
《雀達》(スパロウズ)「そのときは私達の出番なんだって!」
《雀達》(スパロウズ)「たいへん! たいへん! ねー?」
《燕》(スワロー)「ハッ! 《鴉》に出来ぬことをオマエたちが出来るとでも?」
《雀達》(スパロウズ)「あははー! ツバメちゃーん、知らない? 知らないの? よく言うじゃなーい?」
《雀達》(スパロウズ)「ひとりで出来ないこともふたりなら。ふたりで出来ないことも3人ならって、ね? ね?」
《雀達》(スパロウズ)「だから私達はー、なんでも出来るんだよー?」
《雀達》(スパロウズ)「ねー?」

〇モールの休憩所
  ~現在・ガーデンエリア~
《燕》(スワロー)「というわけじゃ、任務が長引けば、《雀達》(スパロウズ)の投入が検討されとる」
九郎(くろう)(どうかしてる)
九郎(くろう)(《雀達》に深白を殺せるわけがない)
《燕》(スワロー)「あやつらはガキんちょじゃからの・・・」
《燕》(スワロー)「本部としては、ヌシというエージェントを失うことを恐れての賭けのようじゃが・・・」
九郎(くろう)(うん。報告ありがとう《燕》)
九郎(くろう)(僕が早く深白を殺せればいいんだよね)
《燕》(スワロー)「そう、じゃな」
九郎(くろう)(タピオカ買えたから、深白のところに戻るよ)
《燕》(スワロー)「うむ・・・」

〇モールの休憩所
九郎(くろう)「深白。買ってきたよ。 けっこう時間かかっちゃったね」
深白(みしろ)「あ、ク、クロくん・・・」
九郎(くろう)「深白、どうしたの? くねくねして」
深白(みしろ)「く、くねくねは、してないと思うけど」
深白(みしろ)「・・・飲み物とりすぎちゃってたみたいで」
九郎(くろう)「トイレだね。行ってくるといいよ」
深白(みしろ)「デリカシーって知ってるかなクロくん!」
深白(みしろ)「行くけど!」
九郎(くろう)「・・・・・・」
《燕》(スワロー)「あれはヌシがわるいぞ」

〇映画館のロビー
  ~シアター~
  ~上映前・ロビー~
九郎(くろう)「上映時間114分か──」
九郎(くろう)「深白、トイレに行っておかなくて大丈夫?」
深白(みしろ)「なんのことかなクロくん」
深白(みしろ)「神はトイレに行かないんだよ?」
九郎(くろう)「でもさっき──」
深白(みしろ)「行かないんだよ?」
九郎(くろう)「・・・・・・」
九郎(くろう)(おかしいよ《燕》)
九郎(くろう)(デリカシーって細やかさだよね)
九郎(くろう)(だからデリカシーのつもりで不測の事態をあらかじめ想定して細かく確認をとったんだよ)
九郎(くろう)(なのに意味不明の嘘をつかれた)
九郎(くろう)(どういうことだろう?)
《燕》(スワロー)「まずヌシは乙女心を学ぶべきじゃろうな」

〇映画館の座席
  ~上映中~
九郎(くろう)「あれ? 深白。寝ちゃった?」
深白(みしろ)「すー・・・すー・・・」
《燕》(スワロー)「む。ヌシの肩に頭を乗せて・・・」
《燕》(スワロー)「あざとい。ウソ寝なのではないか?」
九郎(くろう)(呼吸はちゃんと寝息だね)
  パサッ
《燕》(スワロー)「む。神娘(かみむす)のポーチからなにか落ちたぞ」
九郎(くろう)(僕が動くと深白を起こすかもしれない。 《燕》が拾ってくれない?)
《燕》(スワロー)「お? おお! 任せろ!」
《燕》(スワロー)「ワレも物理的に役に立つときが来たのじゃな!」
《燕》(スワロー)「──ほれ。これじゃ!」
九郎(くろう)(ありがとう。さて──)
九郎(くろう)(これは、手帳だね)
九郎(くろう)(付箋がたくさん挟んである)
九郎(くろう)(中身は──)
《燕》(スワロー)「ま、待て! 勝手に見てしまうのか?」
九郎(くろう)(見ない理由はないよね)
《燕》(スワロー)「た、たしかに神娘の自宅は結界のようなもので侵入できぬ。じゃから神娘が無防備な今がチャンスなのかもしれぬが、むむ・・・」
《燕》(スワロー)「・・・本部の件もある。 ためらっておる場合ではないか」
九郎(くろう)(中身は──今日のデートの計画表だね)
九郎(くろう)(色々と、調べていたみたいだ)
九郎(くろう)(うん・・・新しい情報はないね。 気づかれないうちにポーチに戻しておこう)

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第12話 『世界で1番優しい神様』

成分キーワード

ページTOPへ