OJT

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エピソード1(脚本)

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〇大会議室
岡島(教育係)「例年ならば新人には一ヶ月の研修期間を設けているが、今年は生産スケジュールが特にタイトだ」
岡島(教育係)「よってOJTでいく」
「OJT・・・・・・(ゴクリ)」
岡島(教育係)「それでは昼食休憩の後、午後一時までに現着だ」
岡島(教育係)「以上!!」

〇オフィスの廊下
石城「ねえ、戸崎くん」
戸崎「何だい、同期の石城くん」
石城「恥ずかしい話、僕まだビジネス用語とかよくわからなくて」
石城「さっき先輩が言ってた「OJT」ってなんだろう?」
戸崎「さあ・・・・・・ 「オジヤ食べる」とかじゃないか? ※OJiyaTaberu」
石城「オジヤを!?」
石城「昼食にってことかい?」
戸崎「そう推察するよ。──午後は新人の僕らには厳しい時間帯になる。それを見越して、先輩はあまり重たい物を食すな、と」
石城「いまスマホでも調べてみたんだけど、OJTは「On The Job Training」の略で、」
石城「実務を通じて仕事のスキルを学んでいくやり方、というようなことが書いてあるよ」
戸崎「そっちか」
石城「そっちしかないようだけど・・・・・・」
石城「あっ、もう一つわからないのが、午後一時ゲンチャクの「ゲンチャク」なんだ」
戸崎「げんちゃく? 粘着じゃなくて?」
石城「たぶん先輩はゲンチャクとおっしゃっていたよ」
戸崎「ゲン・チャク──韓流スターか?」
石城「午後一時に? こんな地方の職場に韓流スターが来るのかな」
戸崎「近頃は色々と興行で回っているとも聞く」
石城「いまスマホで調べたら、ゲンチャクは現地到着の略だとネットに書いてあったよ」
戸崎「フッ、現代っ子は何でもスマホ、スマホだな」

〇研究所の中枢
  数か月後──
岡島(教育係)「よし、石城もこの仕事に慣れてきたな」
岡島(教育係)「どうだ、PDCAサイクルを意識して回してるか」
石城「ぴ、PDCA──?」
岡島(教育係)「おいおい、そんなんで大丈夫か」
岡島(教育係)「さっき戸崎に同じことを聞いたら、「ブン回します」と息巻いていたぞ」
岡島(教育係)「おーい、戸崎──」
戸崎「ハァハァ」
岡島(教育係)「戸崎は、なぜ自転車の車輪を回してるんだ?」
戸崎「え、自分はPDCAサイクルを──」
岡島(教育係)「違う違う。PDCAサイクルは自転車のホイールにPDCAと書いて回すことじゃない」
石城(どっから持ってきたんだろう)
岡島(教育係)「PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったものだ」
岡島(教育係)「この計画から改善を一連のサイクルとして回すことで、業務を継続的に改善させていくことをいうんだ──簡単にいえば、だけどな」
戸崎「そっちでしたか」
石城「そんなことまで親切に説明していただいて、ありがとうございます」
岡島(教育係)「いいんだ。人に説明するということは、自分の知識を整理し、理解を深める一助になる」
岡島(教育係)「つまり、ウィンウィンなのさ」
戸崎「ウィンウィン・・・・・・」
戸崎「先輩こそ本物の潤滑油ですね」
岡島(教育係)「まあな──って、ほんとにわかってるのか?」
戸崎「そうですね。語感からして何か勢いよく回ってる感じだったので」
岡島(教育係)「それたぶん違う」

〇警察署の食堂
岡島(教育係)「戸崎くんはとてもフレキシブルな考え方をするんだな」
岡島(教育係)「ブレストでは案外頼もしい気もするが、もうちょっとファクトベースで考えたほうがいいかもしれないな」
戸崎「ホワイトベース?」
岡島(教育係)「それは某ロボットアニメのやつだ」
岡島(教育係)「まあ、なんというかもう少しエビデンスを重視しよう、ということだ」
戸崎「海老で・・・・・・」
岡島(教育係)「おっと課長から呼び出しだ。それじゃ私はお先に──」
石城「いまの先輩の話、僕はあまりわからなかったよ」
石城「戸崎くんはわかったのかい?」
戸崎「僕も完全には──。ホワイトソースは海老に合うというところまで、ぐらいかな」
石城「そんな話だったかな!?」
戸崎「ブレストファイヤー、ブライト艦長? マ●ンガーZか●ンダムの話かと思ったが」
戸崎「海老に帰着したな」
石城「僕なりに調べてみたんだけど、ホワイトではなく、ファクトじゃないかな?」
戸崎「What!?」
石城「ファクトは事実というような意味だから、ファクトベースは事実をもとにということじゃないかな」
石城「エビデンスは証拠、根拠を示す言葉だって」
戸崎「じゃあ海老は?」
石城「100%無関係だったね」

〇研究所の中枢
岡島(教育係)「いやあ、半年前はリスケで散々だったが、今月はKPIに予定より早く到達できそうだ」
石城「先輩、上機嫌だね」
石城「でも「KPI」ってなんだろう?」
戸崎「乾杯?」
石城「たしかに、先輩はお酒好きだったね」
石城「久しぶりに飲めるぞということなのかな」
戸崎「いや待て」
戸崎「あの世代、長渕かもしれん」
石城「でもKPIが長渕だと、長渕に到達するというのは、さすがに日本語がおかしくなるよ」
戸崎「あの筋肉──長渕の域・・・・・・」
石城「筋肉の話なの!?」
戸崎「KPIの前に言っていた、リスケ──このワード、少し危険な臭いがしないか」
石城「リスケ、リスク──ああっ!!」
戸崎「BINGO☆かな」
石城「でも先輩は妻子持ちで、残業時には必ず奥さんに連絡をし、週に1度の家族サービスを欠かさないぐらい安定した生活をしてるよ」
戸崎「なぜそんな詳しい」
戸崎「しかし石城くん、人は心にどんな闇を抱えているかわからないからね・・・・・・」
戸崎「表向きには家庭的なパパを装っていても、さ」
石城「そっか、社会人だものね」
戸崎「どうした石城くん、スマホ画面を見つめて」
石城「KPIは「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」というような意味合いのようだよ」
石城「そしてリスケは、リスケジュールの略だったんだ」
戸崎「そっちならそうと言ってくれれば、ね」
石城「そっちの意味しかないからじゃないかな」
戸崎「ともかく僕らにできることは、Z世代でソリッドにアライアンスを組み、それぞれにベストなアジェンダをセットした上での、」
戸崎「ラピッドなグロースへのコミットメントじゃないかなと。ジャストアイデアだけどね」
石城「うおお、戸崎くん!!」
石城「何言ってるか全然わからないよ」
戸崎「僕もさ」

〇諜報機関
  そして月日は流れ──
石城「いいか、このプロジェクトはマストだ」
石城「ステークホルダー全員のアグリーを取り付けろ。ASAPだ」
「はい!!」
若手社員2「石城マネージャー、少しよろしいでしょうか・・・・・・」
石城「今年入社した角川くんじゃないか。 どうかしたのかい?」
若手社員2「社会に蔓延る横文字の多さに圧倒される毎日で、気分はサムバティヘルプ──」
若手社員2「ボクはこの会社でやっていく自信がありません」
石城「私も新入社員の頃は、同じ悩みを抱えていたよ」
若手社員2「えっ、マネージャーもですか!?」
石城「ああ。ニューカマー襲う横文字のラビリンスを同期の戸崎くんと二人三脚で打開したものさ」
若手社員2「でも、戸崎さんという方は、今はこの会社にはいませんよね?」

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コメント

  • (笑)楽しかったです!最後まで一気に読ませて頂きました。ほんと最近横文字が多くてついていけなくなる時があります、、、自分と重ねながら読ませて頂きました。

  • 途中から笑いが止まりません! 2人の掛け合いはともかく、戸崎くんの並外れたという外れすぎた想像力が爆弾のようでした。先輩が戸崎くんが思い込んでいた韓流スターのファンだったところが最高です。ずっと読んでいたいけど、笑いすぎてお腹がいたくなりそうです。

  • ホント!若者の最近の会話には横文字が多くてかないません。横文字の意味を調べるのにスマホが大活躍しています。略語も然りです。

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