第8話 『七不思議を暴けゲーム(下)』(脚本)
〇学校の廊下
九郎(くろう)「次は『毒ガス教室』──」
九郎(くろう)「6つの七不思議もこれで4つ目か」
九郎(くろう)「どういう七不思議なの? 深白」
深白(みしろ)「『毒ガス教室』──」
深白(みしろ)「放課後の決まった時間、旧校舎にあるその教室に行くとね・・・」
深白(みしろ)「ものすごく臭いんだ」
九郎(くろう)「臭い? それだけ?」
深白(みしろ)「体調不良になって病院に担ぎ込まれた人もいるって噂だよ」
九郎(くろう)「実際に被害が出ているの?」
九郎(くろう)「ガス漏れしてるとか」
九郎(くろう)「でもそれなら問題になってないのはおかしいよね」
深白(みしろ)「ね、不思議」
九郎(くろう)「行って確かめるしかないみたいだね」
〇説明会場(モニター無し)
~毒ガス教室~
深白(みしろ)「普通の空き教室みたいだね」
九郎(くろう)「たしかに。どこにもおかしなところはないね。毒ガスを発生させる装置なんてものも見当たらな──ん?」
深白(みしろ)「どうしたのクロく──って、くさっ!」
深白(みしろ)「なにこれくさっ!」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「納豆とドリアンとくさやと放置した生ゴミを混ぜたようなにおい!」
深白(みしろ)「くさすぎて視界がぐにゃぐにゃしてきた! ク、クロくんは平気なの?」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「あ! 息を止めてる!」
九郎(くろう)(10分くらいなら息を止めていられるからね。そして、においの来た場所もだいたいわかった)
九郎(くろう)(ここだ)
深白(みしろ)「え、どうして床板をはがして──あ!」
深白(みしろ)「地下への階段」
深白(みしろ)「なんでこんなものが?」
深白(みしろ)「うっ、においが強く──」
深白(みしろ)「クロくん、まさか、そこを降りていこうっていうの?」
深白(みしろ)「くさいのに・・・?」
深白(みしろ)「すごい・・・」
深白(みしろ)「わたしは、もう・・・」
深白(みしろ)「だめ・・・」
深白(みしろ)「クロ・・・くん・・・」
深白(みしろ)「・・・・・・」
〇学校の廊下
~5分後~
九郎(くろう)「非公式倶楽部『くさやの会』。 それが『毒ガス教室』の正体だ」
九郎(くろう)「彼らは『臭気』に学び『臭気』と遊ぶことで世界の真理に到達できると信じ、日々『臭気』の研究をしていたんだ」
九郎(くろう)「『くさや神』を崇めながらね」
九郎(くろう)「その歴史は古く──」
深白(みしろ)「あのねクロくん」
深白(みしろ)「わたし、自分が神様になるまで、この学校は普通なんだと思ってた」
〇階段の踊り場
~登り降りの数が合わない階段~
九郎(くろう)「6つの七不思議も4つまで解明。 ここまでの勝負は2対2の同点だね」
深白(みしろ)「ゲームを提案したときには、まさかこんなに色々な発見があるとは思わなかったなぁ」
九郎(くろう)「そうなの?」
深白(みしろ)「ししし。おもしろいからいーけどね」
深白(みしろ)「さて到着! ここが『登り降りの数が合わない階段』だね。内容は言葉通りの意味だから説明しなくてもわかるよね」
深白(みしろ)「あ、でも、条件があるんだった」
深白(みしろ)「男女がいっしょに数えたとき、最初に女が数えて、そのあとに男が数えると、数が減ってるんだって」
九郎(くろう)「数え間違いじゃないかな」
深白(みしろ)「それだとどこの階段でもありえるよ」
深白(みしろ)「この場所だからこその『なにか』があるはずじゃないかなー?」
九郎(くろう)「『なにか』か」
九郎(くろう)(他と違うところ。 しいて言えば西日で明るい、くらいかな)
深白(みしろ)「じゃあ、まずはわたしが数えるね」
九郎(くろう)「うん」
深白(みしろ)「いーち、にー、さーん、しー、ごーう」
~~
深白(みしろ)「にじゅうごっ」
深白(みしろ)「25だよ! クロくん!」
九郎(くろう)「じゃ、今度は僕が数えるね。1。2。3」
~~
九郎(くろう)「──25。25だ。同じだね」
深白(みしろ)「あれー? 同じ? おかしいなぁ」
九郎(くろう)「やっぱり数え間違いだよ」
深白(みしろ)「うーん、それが真相? クロくん、変な感じとかしなかった?」
九郎(くろう)「なかったよ」
九郎(くろう)「しいていえば、深白が登っているときスカートの中が見えていたことだけど」
深白(みしろ)「え」
深白(みしろ)「・・・見えて、たの?」
九郎(くろう)「黒がお気に入りなんだね」
深白(みしろ)「見えてたね!」
深白(みしろ)「ばっちり見えてたねー!」
九郎(くろう)「見えてたって言ったよ」
九郎(くろう)「深白?」
深白(みしろ)「・・・わかった」
深白(みしろ)「男が数え間違えるんだこれ。女の子のスカートの中を見ちゃったあとにまともに数えられるわけないもん」
九郎(くろう)「いやおかしいよ。数えられるでしょ」
九郎(くろう)「数えられたよ?」
深白(みしろ)「おかしいのはクロくんだから」
九郎(くろう)「納得がいかない・・・」
九郎(くろう)「女性の下着には男性の思考能力を低下させるエンチャントが?」
九郎(くろう)「七不思議になってるってことは、一般の女性までがそんなものを身につけて?」
深白(みしろ)「とっ、とにかく、わたしの3勝目だから! し、ししし!」
〇渡り廊下
~渡り廊下~
深白(みしろ)「校舎の2階部分をつなぐ渡り廊下──」
深白(みしろ)「ここが6つある七不思議の最後のひとつ」
深白(みしろ)「『目隠し渡り廊下の怪』の場所だよ!」
九郎(くろう)「ここまでスコアは3対2。今回のゲーム、ここで負ければ僕の負け確定か」
九郎(くろう)「不思議の内容は?」
深白(みしろ)「目をつむってこの渡り廊下を歩くと、全身をたくさんの手に触られるんだー。でも目を開けたらなにもいないんだって」
九郎(くろう)「なるほど。わかったよ」
九郎(くろう)「風だね」
九郎(くろう)「ちょうどここは風の通り道だ」
九郎(くろう)「七不思議を知っていると、強い風が吹くだけで、そういう錯覚をしてしまうんだよ」
九郎(くろう)「僕が試してもいいけど。僕だと錯覚しないと思う。そういう体質だからね。深白、やってみてよ」
深白(みしろ)「待って。知ってるよ・・・。このパターンはわたしが恥ずかしい目に遭うやつだ」
九郎(くろう)「よくわからないけど、試してみて風以外の真相がわかれば深白の勝ちだよ?」
深白(みしろ)「くっ、わたしが試さないとクロくんの不戦勝に・・・」
九郎(くろう)「試しても、ただの風で僕の勝ちだと思うけどね」
深白(みしろ)「うぐぐぐぐ」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)