この恋を、天に昇らせない。

Too Funk To Die

この恋を、天に昇らせない。(脚本)

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〇古い洋館
  とある街はずれの丘。
  ここには曰く付きの洋館が建っているんだとか──
「この家から出てけー!!」

〇洋館の一室
「ぎゃあー!!」
???「・・・」

〇洋館の一室
カノコ「私の家は誰にも渡すもんか!!」
  私は柳下カノコ、享年16歳。
  この家に住み憑いて数十年の、筋金入りの地縛霊だ。
???「カノコちゃーん、来てきてー」
  でも実は、この家にはもう一人、住人がいる。

〇華やかな裏庭
月島「どうかな、お花植えてみたんだけど」
  この「月島」と名乗る青年だ。
カノコ「わあ、きれい!」
カノコ「でも、なにもこんなことまでしてくれなくても」
月島「とんでもない!こんなのじゃ家賃として全然足りないくらいさ」
月島「それにやっぱり、カノコちゃんには華やかな色が似合うよ」
カノコ「えへへ、そうかな」
  私が人を寄せ付けていないはずのこの家に、なぜ彼が住んでいるのかというと──

〇洋館の一室
  数日前──
カノコ「出てけー!」
???「はは、そんな脅しボクには効かないよ」
カノコ「なんで・・!」
月島「なにもこの家を乗っ取ろうってわけじゃない」
月島「少しの間、ここにいさせてくれるだけでいいんだ」
カノコ「ダメ!」
月島「そんなこと言わないで、ほらお供物もあるし」
カノコ「これは・・・私の好きなミ○ドのドーナツ!」
月島「どう?」
カノコ「うう・・・」

〇豪華な客間
カノコ「食べ物に釣られるとは、私も大概だな・・・」
月島「うん!この部屋もだいぶきれいになった!」
カノコ「わあ、すごい!」
カノコ「ずっと埃被ったままだったのに・・」
カノコ「まるであの頃に戻ったみたい!」
月島「でしょ?」
月島「それにやっぱり、カノコちゃんにはきれいなものが似合うよ」
カノコ「・・でも、これでパパとママが一緒なら、完璧なのにな」
月島「カノコちゃんは、どうして亡くなったんか・・・聞いてもいい?」
カノコ「うん」
カノコ「私が死んだのは、この家に引っ越す当日」

〇川に架かる橋
カノコ「ふんふふーん♪」
カノコ「今日から新しい我が家だー!」
  キキーッ!!
カノコ「──えっ?」

〇黒
  ドンッ!

〇豪華な客間
月島「そ、それで、この家に住みたすぎて、まだ住んでもないのに地縛霊になったの!?」
カノコ「いいじゃん別に!住みたかったんだもん!」
カノコ「私が死んだショックで、パパとママはまた引っ越しちゃうし、もう散々だよ」
カノコ「・・やっぱり月島さんも「早く成仏しろ」って言うの?」
月島「・・ううん、言わないよ」
月島「カノコちゃんがずっとこの家に住めるように、ボクがしてあげる」
カノコ「月島さんが?」
月島「あ、いやなんでもない!」
月島「じゃあボク、向こうの部屋掃除してくる!」
カノコ「・・変なの」
  でも私は確かにこの時、彼のいる生活が続いてもいいと、思い始めていた。

〇洋館の一室
  月島さんは、数日に一度、どこかへ出掛けて行く。
  どこへ行くのか聞いても「仕事だ」としか言わないから、私も深くは聞かない。
カノコ「もう夕方か」
カノコ「月島さんがいないとこの家、すごく広く感じる・・」
カノコ「ん?」
  地縛霊の成仏ならお任せください
  心霊探偵・月島群雲
カノコ「どういうこと、これ・・・?」
カノコ「月島さんがここに来たのは、私を成仏させるため・・・?」

〇洋館の一室
月島「ただいまー。あれ、どしたの?電気も付けずに」
月島「ってカノコちゃんは幽霊だから電気つけないか」
カノコ「・・・」
カノコ「出てって」
月島「えっ?」
カノコ「月島さんも私を成仏させるつもりだったのね」
カノコ「これ、見たの」
月島「あちゃ・・見られちゃったか」
月島「カノコちゃん、それは違う」
カノコ「言い訳なんて聞きたくない!」
カノコ「そうやって優しくして、隙を狙ってたんでしょ!?」
月島「・・それは」
???「もういいんだ、カノコ」
カノコ「この声は・・・」

〇洋館の一室
パパ「もう苦しまなくていいんだよ、カノコ」
カノコ「パパ・・・!?」
月島「お父さん!ボクが説明してからお呼びするって言ったのに!」
パパ「すまないね、見ていられなくて」
カノコ「ど、どう言うこと・・?」
月島「ボクが、キミを成仏させようとしていたのは本当だよ」
月島「騙してて悪かった」
カノコ「でもどうしてパパが・・?」
パパ「カノコを成仏させてもらうように依頼したのは、私なんだよ」
カノコ「ええっ!?」
月島「というか、お父さんもお母さんもカノコちゃんのことが気がかりで成仏できてなくてね」
月島「カノコちゃんを成仏させてくれたら、自分たちも成仏できるからって」
カノコ「それで月島さんがこの家に?」
月島「最初は確かにカノコちゃんを成仏させようと思っていた」
月島「ボクは手荒な真似は好きじゃないから──」
月島「どうやったらキミの未練がなくなるか、一緒に過ごしながら探ろうと思ってね」
カノコ「そっか、お花や掃除はそのために」
月島「・・でも、もう終わりにしようと思ってさ」
月島「ごめんなさいお父さん。ボク、カノコちゃんを成仏させられません」
パパ「どういうことかね?」
月島「ボクはこの家で、カノコちゃんとずっと一緒にいたくなってしまったんです」
月島「お父さん。カノコちゃんとこの家を、ボクにください!」
カノコ「え、ええ!?そんな急に・・!」
パパ「この子のこと、よろしくお願いします」
カノコ「二人ともそんな勝手に決めないでよ!」
月島「ダメかい?」
カノコ「ダメじゃ、ないけど・・」
パパ「この家に囚われ、新しい自分を歩き出せないお前を、私たちはずっと憂えていた」
パパ「今まで寂しい思いをさせて、すまなかった・・」
カノコ「パパ・・!」
パパ「ありがとう、月島さん」
パパ「これで思い残すことなく成仏・・でき・・」

〇空
カノコ「パパー!!」
  私、もう寂しくないよ
  ううん、本当言うと少し前から寂しくなんかなかった
  だって私、一人じゃないから──

〇古い洋館
  こうして、私たちの家は「月島心霊探偵社」として、新しいスタートを切った。
「出てけー!」

〇豪華な客間
月島「だ、ダメだよカノコちゃん、お客さんを脅かしちゃ」
カノコ「だってこの人、幽霊の私のこと馬鹿にするから・・・」
月島「ちょっと驚かれただけですよね?」
月島「でも安心してください、うちの助手はとっても優秀ですから」
カノコ「月島さん・・・」
月島「それで──」
月島「成仏させたいのは、どんな霊ですか?」
  おしまい

コメント

  • 地縛霊と霊媒師の相性は普通に考えたらお互い敵?のように感じてしまいますが、霊思いなんですねぇ。
    生まれて初めて霊思いなんて言葉使いましたが笑

  • 地縛霊の少女と謎のイケメンとの同棲(?)生活、という設定だけでドキドキしますね!可愛い2人の恋模様を楽しませてもらいました。

  • 確かに霊媒師の方って一般的にその手法にぎょっとさせられることがありますけど、月島さんはまったく違うタイプで地縛霊からも好かれてしまいそうですね。次元の違う恋愛だけど応援したくなります。

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