第7話 『七不思議を暴けゲーム(中)』(脚本)
〇黒
~某所~
《燕》(スワロー)「おーい、よい子とわるい子のみんなー。 聞こえておるかー。ワレじゃよー?」
《燕》(スワロー)「そう、組織最高のエージェント・コードネーム《鴉》(クロウ)の頼れる相棒《燕》(スワロー)じゃ!」
《燕》(スワロー)「・・・なーんての、ただの独り言じゃが」
《燕》(スワロー)「ヒマなのじゃ」
《燕》(スワロー)「なぜなら現在のワレはテレパシーの中継器である《子機》を壊されたため相棒の《鴉》と連絡がとれぬ状況じゃ。無念」
《燕》(スワロー)「スマホやケータイがあるじゃろって?」
《燕》(スワロー)「ケースによるが、ワレたちの業界では簡単に妨害されるから使い物にならん。今回も同様じゃな」
《燕》(スワロー)「だからこそ、ワレのようなヒキコモリの超能力者にも需要があるわけじゃ」
《燕》(スワロー)「むぅ・・・」
《燕》(スワロー)「むむむむぅ!」
《燕》(スワロー)「心配じゃー! あー! 《鴉》ぅー!」
ぎゅうううう!
《燕》(スワロー)「あ・・・ふぅ・・・やはり組織メンバー限定生産で手に入れたコードネーム《鴉》等身大抱き枕の抱き心地はサイコーじゃ・・・」
《燕》(スワロー)「落ち着くのぅ・・・」
《燕》(スワロー)「・・・すやぁ・・・」
《燕》(スワロー)「いや落ち着いておる場合ではないわ!」
《燕》(スワロー)「今このときも《鴉》はあのターゲット、神娘(かみむす)の手中に落ちておるというのに!」
《燕》(スワロー)「くっ、だが今のワレにできるのは信じ抜くことだけじゃ・・・!」
《燕》(スワロー)「必ずや《鴉》は、あの娘が戯れに用意したゲームに勝利する」
《燕》(スワロー)「秘密を聞き出し、任務を達成する」
《燕》(スワロー)「神を──殺す」
《燕》(スワロー)「ワレがフォローせねば、一般常識に関しては少しばかり心配じゃが・・・」
《燕》(スワロー)「ま、大丈夫じゃよな!」
〇学校の廊下
~学校~
深白(みしろ)「ししし! まーた、わたしの勝ちだねー」
九郎(くろう)「・・・・・・」
深白(みしろ)「『誰もいないのに鳴るピアノ』の正体が、まさかただの電子ピアノの不具合だったなんてねー」
深白(みしろ)「なのにクロくん、ピアノを真っ二つにしようとするし」
九郎(くろう)「いや、だって、おかしいじゃないか」
深白(みしろ)「おかしいって?」
九郎(くろう)「わかってみれば、なにも不思議なことがない。なのに不思議って呼ばれてる」
九郎(くろう)「どういうこと?」
深白(みしろ)「七不思議ってそういうものだよ」
九郎(くろう)「・・・・・・」
九郎(くろう)「・・・そうかもしれない」
九郎(くろう)「でも僕の常識ではね、そうやって油断した者からいなくなるんだ」
深白(みしろ)「クロくん・・・」
深白(みしろ)「安心して! いざとなったらわたしがクロくんを守るからね! 守護神だ!」
九郎(くろう)「いや、僕の任務はキミを殺すことだよ?」
九郎(くろう)「なんていうか・・・」
九郎(くろう)「キミが1番の不思議だね、深白」
深白(みしろ)「──あ」
九郎(くろう)「なに?」
深白(みしろ)「いま、ちょっと笑ったよね?」
九郎(くろう)「そうかな」
深白(みしろ)「ししししし!」
深白(みしろ)「さあ、6つの七不思議のうち、2つをわたしが解明。もう後がないよ? クロくんっ」
〇女子トイレ
~女子トイレ~
深白(みしろ)「放課後だから誰も使ってないけど──」
深白(みしろ)「平気で入ってきたね、クロくん」
深白(みしろ)「女の子の聖域に」
九郎(くろう)「聖域・・・?」
九郎(くろう)「べつに結界のようなものは感じなかったけど」
深白(みしろ)「男子なら感じて然るべきなんだよ?」
九郎(くろう)「つまり──男子高校生にのみ有効な限定結界ってことだね」
九郎(くろう)「僕は17歳だけど、あくまで偽装転校生だ。 それで効果がないのかもしれないね」
深白(みしろ)「違うから」
深白(みしろ)「動物にはテリトリーってあるでしょ? そんな感じって言えばわかる?」
九郎(くろう)「あるね。ん、ああ、なるほど」
深白(みしろ)「わかってくれたかな?」
九郎(くろう)「わかったよ」
九郎(くろう)「女子達がマーキングしてるこの場所は女子達のテリトリーだってことだよね」
九郎(くろう)「納得だ」
深白(みしろ)「言い方・・・っ」
九郎(くろう)「それで、『トイレの山田さん』だったよね。このテリトリーに住んでるってことは、女子達の群れのボスってことだよね」
深白(みしろ)「うん。わたしの例えがマズかったね! テリトリーの話は忘れて?」
深白(みしろ)「ええとね、『トイレの山田さん』っていうのは、学校の七不思議でもとくに有名なものなんだ」
深白(みしろ)「誰もいないはずの女子トイレで、ある手順を踏んで呼びかけると、山田さんから返事があるっていう」
九郎(くろう)「・・・ある手順を踏むと呼びかけに返事をする? ──っ、そうか。わかった」
九郎(くろう)「──っ、そうか。わかった」
九郎(くろう)「深白、ここは僕の勝ちだ」
深白(みしろ)「え、すごい。もう解明できたってこと?」
九郎(くろう)「トイレに住む山田さんの正体、それは僕の同業者──エージェントだ」
深白(みしろ)「もし女子トイレに潜むような変態エージェントがいたら、わたしが消してるよね」
九郎(くろう)「そんな。どうして」
九郎(くろう)「僕が拷問したときも自分からは攻撃しなかった深白なのに」
九郎(くろう)「深白はトイレの神様だったの?」
深白(みしろ)「トイレの神様じゃないけど! 女の子の味方だよ!」
深白(みしろ)「クロくんもわたしに無断でそういうことしたらダメだからね! メだよ!」
九郎(くろう)「必要がなければしないよ?」
深白(みしろ)「必要があればするんだ!?」
深白(みしろ)「まあ、クロくんはそうだよね・・・」
九郎(くろう)「とにかく『手順』を試してみようか」
九郎(くろう)「それで『正体』はわかるはずだよ」
深白(みしろ)「どうやるの?」
九郎(くろう)「まず女子がトイレの3番目の個室に入る」
九郎(くろう)「次に用を足す」
九郎(くろう)「トイレットペーパーで3回おしりを拭いたところで、山田さんと3回呼びかける」
九郎(くろう)「じゃあ深白、頼むね」
深白(みしろ)「頼まれたらしょーがないなぁ」
深白(みしろ)「・・・・・・」
深白(みしろ)「・・・え?」
深白(みしろ)「わたしがやらなきゃなの?」
深白(みしろ)「さっきの手順を?」
九郎(くろう)「僕は男子だからね」
九郎(くろう)「女子である深白が3番目の個室に入って、用を足して、トイレットペーパーで3回おしりを拭いたところで、3回呼びかけないと」
九郎(くろう)「ああ、僕がここにいたらマズいのかな。でもお互いに起きることを確認できないとフェアな勝負にならないし」
九郎(くろう)「仕方ない。なるべく気配を消しておくね」
九郎(くろう)「深白の力には通用しないかもだけど、隠密にはそれなりに自信があるんだ」
九郎(くろう)「(スッ)・・・」
深白(みしろ)「薄くなった!?」
深白(みしろ)「いやいやいや・・・え? クロくんそこにいる気なの? わたしがトイレするのに?」
九郎(くろう)「じゃないとフェアな勝負にならないよね」
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鳥仮面ズ、この物語のキャラだったのね…