可愛い弟のお願い

香月文香

可愛い弟のお願い(脚本)

可愛い弟のお願い

香月文香

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〇個別オフィス
義弟「おや、義姉さん」
義弟「まさかこんなところで会うなんて 思ってもみなかったよ」
義弟「僕としては、もう二度と あなたに会いたくなかったけど」
義弟「・・・ニコニコしてるけど 僕の声、聞こえてた?」
義弟「僕は、あなたに会いたくなかったと 言ってるんだよ?」
義弟「はあ? 可愛い弟に会えて嬉しい、って?」
義弟「あのな、たかが親の再婚で 「姉弟」とやらになっただけだろ」
義弟「簡単に姉貴面しやがって・・・」
義弟「それで、何? ここに何の用?」
義弟「ここは迷子の猫探しから浮気調査まで 何でもござれの探偵事務所ですけど?」
義弟「この不夜城で困ったときは 我が探偵事務所へお任せあれ」
義弟「報酬はお高めですが、 その分「確かな」成果をお届けしますよ」
義弟「というのがモットーだけど・・・」
義弟「な、なんで泣いてる!?」
義弟「別に、あなたから法外な報酬を もらおうなんて思わないよ」
義弟「一応、家族なわけだし・・・」
義弟「え? 何?」
義弟「目にゴミ? そんなベタな言い訳を・・・」
義弟「あ、マジでまつ毛が目に入ってる」
義弟「はいはい、取ってあげるから目閉じて」
義弟「・・・よし、取れた」
義弟「って、急に目を開けるな!」
義弟「こっちにも心の準備ってもんが・・・」
義弟「じゃなくて!」
義弟「ハァ。 結局、世の弟は、 姉には逆らえないものなんだ」
義弟「僕はあなたの実の弟ではないけど」
義弟「それで、依頼は何?」
義弟「ペットのカナリアがどこかへ飛んでいった? ストーカーに追われてる?」
義弟「──まさか、浮気調査とか?」
義弟「ああ、違うのか」
義弟「・・・そうか」
義弟「なら良かった」
義弟「いや良くはないのか?」
義弟「ごめん、ちゃんと聞いてるよ。 依頼は人探しだって?」
義弟「その人の写真とかある?」
義弟「え? ああ、スマホに送ってくれたのか」
義弟「ふーん、雑魚っぽい顔の男だね。 こういう顔の男が好み?」
義弟「そ、そんなに怒らなくてもいいだろ。 悪かったよ、つまらない冗談で」
義弟「とにかく、この男を探せばいいんだね。 ひとまず、こいつの情報を教えてくれ」
義弟「は!? 居場所は分かってる?」
義弟「この地図の場所か? すぐ近くの雑居ビルじゃないか。 なんでわざわざ僕に?」
義弟「大事なものをこの男が持っているから 返してもらいたい、か」
義弟「それって何? 土地の権利書とか?」
義弟「・・・言いたくないなら、いいけど」
義弟「それじゃあ、お仕事開始しますか」

〇寂れた雑居ビル
義弟(いま気づいたが ここは最近力をつけてる半グレの巣窟だな)
義弟(こんなところにいる男と 一体どんな関係があるんだ?)
義弟「ひとまず入ってみようか」

〇雑居ビルの一室
義弟「こら、袖を引っ張るな」
義弟「やっぱり危ないし あなたは事務所で待ってて欲しいんだけど」
義弟「うん、なに? よく聞こえなかった」
義弟「・・・あの、顔が」
義弟「顔が、近い! 本当に近い!」
義弟「離れて!」
義弟「あー、はいはい。 「お姉ちゃんだから」 弟を放ってはおけない、ね」
義弟「本当にそれが好きだよね。 覚えてる?」
義弟「僕が昔 階段から落ちそうになったときのこと」
義弟「あのときも、あなたは僕を庇って 代わりに大怪我したよね」
義弟「ぼろぼろのあなたを見て 僕がどんな気持ちだったか分かる?」
義弟「分からないだろ。 だから平気で、「お姉ちゃんだから、弟を守るのは当然のこと」なんて言えたんだ」
義弟「言っておくけど 僕は責任を取ろうと思っていたんだよ」
義弟「そうしたら、あなたも少しは僕のことを──」
義弟「いや、なんでもない」
義弟「とにかく、ここまで来て帰れるか」
義弟「そんな不安そうにしなくても大丈夫だって」
義弟「一応僕も鍛えてるし 今度は、何があってもあなたを守るから」
義弟「──絶対に」
義弟「だから、僕のそばを離れないで」
  (──廊下の向こうから足音が響く)
義弟「まずい、誰か来た。ドアの陰に隠れて」
義弟(あの男だ! 何かを抱えてこちらへ来る。 あのビニールシートに包まれたものは何だ?)
怪しい男「ボスですか? ええ、あのコソコソ嗅ぎ回ってた女は これから処分しますよ」
怪しい男「馬鹿な女ですよねえ。 俺たちに騙された祖母のために 直談判しに来るんですから」
義弟(女? どういうことだ? ああ、ビニールシートの中身が、見え——)
義弟「──おい」
義弟「お前が抱えている人間を 今すぐに返してもらおうか」
怪しい男「はあ?」
義弟「その人は僕の好きな人で お前みたいな人間が触れていい存在じゃない」
怪しい男「何意味分かんねえこと言ってんだ!」
怪しい男「だいたい、頭おかしいんじゃねえのか!?」
怪しい男「「一人」で乗り込んでくるなんて!」
義弟「・・・一人? まあそうかもね」
義弟「──そばを離れないでって言ったのに」

〇病室のベッド
  数日後、病院にて──
義弟「目が覚めた・・・っ!」
義弟「ほんとうに、よかった──」
義弟「あと少しでも発見が遅れていたら どうなっていたか分からないって・・・」
義弟「え?」
義弟「変な夢を見てた? 僕の事務所に行った夢?」
義弟「夢でも何でもいいよ。 あなたが無事ならそれで・・・」
義弟「ええ? それだけじゃなくて、僕があなたを好きとか言うって?」
義弟「僕がどんな想いを抱えて実家を出たか、 ご存じか?」
義弟「・・・まあ、知っていてその態度なら、 小悪魔を通り越して人でなしだけど」
義弟「今さらそんな顔をしてもだめ」
義弟「あなたの可愛がってた弟が 一体どれだけ成長したのか」
義弟「・・・ちゃんと、確かめてよ?」

コメント

  • 何だかんだで、義弟は義姉の事を放っておけないし、大切なんだなという事が台詞から伝わってきました!ラストの展開で甘さが爆発して、とても良かったです!素敵な物語、ありがとうございました!

  • 義姉の台詞がないので、彼女がどんなトーンで話しているのか想像しながらでしたが、きっと義弟が感じる想いと同じものを持っているのでしょうね。異例な形のラブストーリーがとても気に入りました。

  • 読んでてキュンキュンしました。
    お姉さんの方も、なんとなく気持ちには気づいてて…みたいな感じのラブストーリーかと思ってたら、オチ読んでびっくりしました!
    結ばれて欲しいなって思う二人です。

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