第19話 『女神に選ばれし勇者と勇者を選びし女神』(脚本)
〇異次元空間
女神ウヌバス「それで? いったい、何を願うつもり?」
女神ウヌバス「女神である私を無理矢理屈服させる?」
女神ウヌバス「それとも存在ごと消滅させる?」
女神ウヌバス「だけど、いくら『カウント3』でもそれは出来ないわよ」
女神ウヌバス「『カウント3』は女神である私が与えた神の力。だからこそ、そこには決して破れない制約がある」
女神ウヌバス「『カウント3』で、神を殺すことはできない」
八木カモメ「・・・・・・」
女神ウヌバス「疑うなら試してみればいい。 だけど気を付けなさい」
女神ウヌバス「もし願いを使っても、次の世界脅威を回避するまで、私は願いを補充しない」
女神ウヌバス「ここで無駄に願いを使うのは賢い選択ではないわよ」
八木カモメ「・・・・・・」
女神ウヌバス「どうせ無理なんだから諦めなさい。悪いようにはしないから。もう少しだけ私の相手を・・・」
八木カモメ「うーん」
女神ウヌバス「? なによ? さっきから黙りこくって?」
八木カモメ「いや、この状況が『こうなったらいいな~』っていうのは、なんとなくあるんですけど」
八木カモメ「ただどうやったら、それが全部出来るのかって、アイデアが浮かばないんですよね」
女神ウヌバス「・・・つまり、カモメ。アンタは特に具体的な対策を考えてきたわけでもない癖に、私に向かって啖呵を切ったわけ?」
女神ウヌバス「・・・カモメ。やっぱりアンタ、バカね」
女神ウヌバス「残念だけど、ここにいるのはアンタ1人。いつもみたいに、頼もしい仲間はいないわよ」
八木カモメ「そうなんですよね」
女神ウヌバス「アンタ1人じゃ何もできないわよ。わかったらさっさと戻って、次の世界脅威に備えて・・・」
八木カモメ「俺一人の頭じゃどうしようもない。 ・・・ああ、そっか」
八木カモメ「だったらこうすればいいのか」
ピカッ
女神ウヌバス「・・・・・・」
女神ウヌバス「何を願ったの?」
八木カモメ「あれ? 分からないんですか?」
八木カモメ「女神様なのに? この『カウント3』を与えた存在なのに? 俺がどんな願いを発動したのか分からないんですか?」
八木カモメ「『カウント3』の願いは口にしなくても、心で思うだけでいい。これは既に実証済みの事象です」
女神ウヌバス「・・・・・・」
八木カモメ「そう警戒しないでくださいよ、ウヌバス様。別に隠すつもりはないですから」
八木カモメ「いえね。常々思っていたんですよ。俺はいつも抜けているから、クロくらい頭がよければなって」
八木カモメ「そしてヒロみたいに抜け目のないアイデアがポンと思いつけばなって」
女神ウヌバス「!」
八木カモメ「そうです。ご想像の通りです」
八木カモメ「だから、そう願い。 それを手に入れてみました」
八木カモメ「そうしたら・・・色々と見えてきましたよ」
八木カモメ「ふむふむ、なるほど。ああ、流石クロの頭脳とヒロのアイデアだ。そうか・・・そうすればいいのか」
女神ウヌバス「何を、するつもり?」
八木カモメ「『カウント3』は神の力。つまりその一員である女神ウヌバス様を害することはできない」
八木カモメ「だから、こんなことをしよう思います」
八木カモメ「『俺の願い、発動★』」
ピカッ
ドクン
女神ウヌバス「!」
女神ウヌバス「えっ! な、なに? これ?」
八木カモメ「おっ、効いてきたみたいですね」
女神ウヌバス「くっ! なに? 私の胸の中にあるモノは? これは・・・鼓動?」
女神ウヌバス「カモメ、私に何をしたの?」
八木カモメ「愚かな人間は尊き存在である女神に危害を加えることはできない」
八木カモメ「だから『女神であるウヌバス様には人間になってもらいました』」
女神ウヌバス「なっ!」
八木カモメ「ああ、ちなみに願う際に『危害を加える為ではない』という理由付けも、きちんとしたので、問題なく人になれたでしょ?」
八木カモメ「それとオプションも付けてみました。 例えば・・・」
八木カモメ「ウヌバス様。俺の質問に答えて下さい。 『今、どんな気分ですか?』」
女神ウヌバス「非常に焦っています。こんなことはまったく想像していませんでしたから。どうすればいいのかしら?」
女神ウヌバス「! 口が勝手に・・・」
八木カモメ「俺の質問には全て答えるというルールもその一つです。まあ正確には『俺の命令には絶対服従』なんですけどね」
八木カモメ「だから、『ウヌバス様、俺がいいと言うまで、何もせずに動かないでくださいね』」
女神ウヌバス「! 身体が動かない!」
女神ウヌバス「・・・私を・・・どうするつもり?」
八木カモメ「エッチなことをします」
女神ウヌバス「なっ、なななっ!」
八木カモメ「冗談です」
女神ウヌバス「脅かさないでよ!」
八木カモメ「後でします」
女神ウヌバス「後でするの!?」
八木カモメ「だけどその前に幾つか俺の質問に答えて下さい」
女神ウヌバス「! いや、止めて! 質問しない──」
八木カモメ「まずは手始めに。 『ここは本当に俺の夢の中なんですか?』」
女神ウヌバス「違います。ここは現世と天界の狭間。 主神より私に与えられた『願いの間』」
女神ウヌバス「いや・・・もう話したくない」
八木カモメ「『ここでウヌバス様は何をしているんですか?』」
女神ウヌバス「私の役目は人間の願いを叶えること。その為に、私はここから、あなたたち人間を見ていました」
女神ウヌバス「ひとりでずっと」
八木カモメ「『なぜ世界を滅ぼそうとしたんですか?』」
女神ウヌバス「世界を滅ぼすつもりなどありません」
八木カモメ「なら『なにが目的だったんですか?』」
女神ウヌバス「・・・っ」
八木カモメ「『答えて下さい』」
女神ウヌバス「・・・寂しかったのです」
八木カモメ「!」
女神ウヌバス「私は誕生して間もない女神。女神としての私の力は『人間の願いを実現すること』」
女神ウヌバス「私は人間のどんな願いでも叶えてあげることができる」
女神ウヌバス「でも、それだけ」
女神ウヌバス「私は、自分一人だけでは何も生み出すことができない女神なのです」
女神ウヌバス「私はここでずっと世界を、人間を見てきた」
女神ウヌバス「ずっと一人で、孤独に、人間の願いを叶えてきた」
女神ウヌバス「願いを実現し、だけどその事を"誰にも気づいてもらえずに"」
女神ウヌバス「何も代わり映えしないこの場所で、ただ一人で、ただひたすらに」
八木カモメ「・・・・・・」
女神ウヌバス「どうにかしたかった。 何かを変えてみたかった」
女神ウヌバス「だけど私一人ではどうすることもできない。私は人間の願いがあって、初めて力を発揮できるから」
女神ウヌバス「だから・・・人間の力を借りることにしました」
八木カモメ「その人間が俺だったんですね」
女神ウヌバス「どのように声をかけるか色々と悩みました」
女神ウヌバス「だけど結局、世界の危機を回避する為に女神が人に接触する」
女神ウヌバス「そんなありきたりな形しか思い浮かばなかったのです」
女神ウヌバス「寝ているカモメをここに呼び寄せ、『世界が滅びの危機にある』と偽りを伝えました」
八木カモメ「やっぱり世界脅威なんて、初めからなかったんですね」
女神ウヌバス「はい。そんなモノは存在しない。 だからあなたに作ってもらうしかなかった」
八木カモメ「だから俺の叶えた願いを回収し、管理すると"俺に願わせた"」
八木カモメ「世界脅威として、いつでも出せるように」
女神ウヌバス「そうです。少しでも私の嘘を続けるために。少しでも長くあなたとお話する為に」
女神ウヌバス「全ては・・・私の我儘なのです。誰かと何かをしてみたいという、私自身の願いを叶える為の、ただの我儘」
八木カモメ「どうして俺だったんですか?」
女神ウヌバス「!」
女神ウヌバス「そ、そんなの! アンタが何にも考えてなさそうなバカだったからよ!」
八木カモメ「『本当は?』」
女神ウヌバス「・・・っ」
女神ウヌバス「カモメは特別じゃない普通の人間です」
女神ウヌバス「だけど他人を尊重し、慈しむことができる」
女神ウヌバス「自分の幸せが周囲の人間からもたらされるモノだと自然と理解している人間」
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