第20話 『世界を救った勇者が思い描いた結末』(脚本)
〇川に架かる橋
相田英雄「おいっす、ヤギちゃん」
八木カモメ「おはよう、ヒロ、クロ」
黒崎検事「昨日の隕石も夢オチになっていたということは、女神によるリセットがかかったということだ」
相田英雄「だけど、ヤギちゃんの右手の数字がない。 ということは・・・」
八木カモメ「うん。バッチリ決着を付けてきた。 もうこれで大丈夫」
相田英雄「やるね、ヤギちゃん。 文字通り世界を救ったわけだ」
黒崎検事「まあ、俺たち以外、誰も知らないけどな」
八木カモメ「それで十分だよ」
黒崎検事「だがよく女神を倒せたな。 いったい、どうやったんだ?」
八木カモメ「実は──」
〇川に架かる橋
黒崎検事「なるほど。最初の願いで俺の頭脳とスケヒロの発想を手に入れた、か。ヤギにしてはなかなか面白い手を考えたな」
相田英雄「でもさ、別に俺たちじゃなくてもよかったんじゃない?」
相田英雄「それこそ俺たち以上に頭の良い大人なんて沢山いるんだし」
八木カモメ「そんなことないって二人は俺にとって最強だからさ」
相田英雄「?」
黒崎検事「スケヒロ、ウラの言葉を忘れたか? 『カウント3』はヤギの"願望通りに世界を改変する"最強能力だ」
黒崎検事「つまり実際はどうか、というのは関係ない。重要なのはヤギが俺たちのことを最高の頭脳の持ち主だと思っていることだ」
相田英雄「イメージって怖いわぁ」
黒崎検事「なぁ、ヤギ。・・・その、ウラはもう──」
八木カモメ「うん。人形としては残っているけど、もう動かない」
黒崎検事「そうか」
相田英雄「なに? クロケン、ウラちゃんがいなくなって寂しいの?」
黒崎検事「ふん。冗談はよせ、やかましいのがいなくなって清々した」
相田英雄「ふーん。まあそういうことにしておくか。・・・それで、ヤギちゃん、さっきの話の続きだけどさ」
相田英雄「二つ目の願いで女神様をヤギちゃんに絶対服従の人間にしたんだよね。それからどうしたの?」
八木カモメ「もう悪さをしないようにした」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「えっ? それだけ?」
八木カモメ「それで充分だろ」
黒崎検事「なら、最後の願いは何にしたんだ?」
八木カモメ「全てを終わりにした」
黒崎検事「? ・・・それって、どうゆうこと?」
八木カモメ「二人の想像に任せるよ」
「・・・・・・」
八木カモメ「さあ、早く学校行こう」
相田英雄「・・・なあ、どう思う、クロケン?」
黒崎検事「ヤギに限ってそれはないと思うが、やってしまった可能性はあるな」
相田英雄「世界を救う為に女神を手に掛けた勇者。それにより、世界の平和は保たれましたとさ、めでたしめでたし」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「・・・いや、なくね?」
黒崎検事「ああ、ないな。まあ、大方」
相田英雄「ヤギちゃんっぽいオチを付けたってところだろうな」
〇学生の一人部屋
猫「・・・・・・」
八木カモメ「ただいま、ウラたん」
ウラたん「・・・・・・」
八木カモメ「ただいま、にゃあちゃん」
猫(むっ)
猫「誰がにゃあちゃんよ」
八木カモメ「ウヌバス様、喋っている所を誰かに聞かれたらマズいですって」
女神ウヌバス「知らないわよ! そんなこと!」
女神ウヌバス「というか、なんで『カウント3』の最後の願いが『私が一年間アンタの家で飼いネコとして暮らす』なのよ!」
八木カモメ「ツバメちゃんが前から猫を飼いたいって言っていたもので。それにウヌバス様も猫好きじゃないですか」
女神ウヌバス「だからって自分でなりたいって訳じゃないわよ!」
女神ウヌバス「・・・分かっているの? 私はあんなことをしたのよ」
女神ウヌバス「私はとっても悪いことをした、悪い女神なんだから。私のことなんて消滅させればよかったのに」
八木カモメ「その恰好で凄まれても、可愛くしか見えないんですけど」
女神ウヌバス「猫にしたのはアンタでしょ!」
八木カモメ「まあまあ、そう怒らずに。・・・ああ、そうそう、いい機会だから聞いてみたかったんですけど」
女神ウヌバス「何よ?」
八木カモメ「なんで『カウント3』だったんですか?」
八木カモメ「あれだけ願い事を補充できるんだったら別に叶えられる願いは3つじゃなくてもよかったですよね」
八木カモメ「それなのに、なんで3つだったんですか?」
女神ウヌバス「回数が決まっているから、人間はちゃんとどう使おうか考えるの」
女神ウヌバス「それに無制限に叶うなら、それは単なる必然。人はそうなりたいと願うことを忘れてしまう」
八木カモメ「おお、なるほど。深い」
女神ウヌバス「カモメには世界脅威となる願いを作ってもらわないといけなかったから、最初は発動条件をかなり緩く設定したけど」
女神ウヌバス「ホント碌なことに願いにならなかったわよね」
八木カモメ「いや、あの時は、ただ思ったことに『カウント3』が反応するみたいな感じで、なかなか難しかったんですって」
女神ウヌバス「ただまあ、あの隕石の被害を失くしたことは素直に感心したけどね」
女神ウヌバス「カモメを選んでよかったって思えたから」
八木カモメ「えっ、何か言いました、ウヌバス様?」
女神ウヌバス「別になんでもないわ」
八木カモメ「でも途中で、それを止めて合言葉を付けてくれて助かりましたよ」
女神ウヌバス「アンタの仲間二人が、とても人間らしい食わせ者だったから、そっちの方が良いと思ったのよ」
八木カモメ「というと?」
女神ウヌバス「そういう人間に対しては、きちんとした条件を用意してあげた方が、逆に考えるのよ」
女神ウヌバス「願いの回数が決まっているから、抜け穴を探す。絶対に使うなと言われたら、余計に使いたくなる」
女神ウヌバス「実際、そうだったでしょ?」
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「スゲェ、本当だ! あれ全部ウヌバス様の掌の上だったってことだったんだ!」
八木カモメ「流石は女神様!」
女神ウヌバス「ふん、あれくらい当然よ」
八木カモメ「凄いですね、イイ子イイ子」
女神ウヌバス「っ! 気安く撫でるな!」
八木カモメ「痛ぇ、引っ掻かれた!」
女神ウヌバス「ああもう! 急に触れるから! まだ猫の身体に慣れてないのよ! 早く傷口を洗ってきなさい!」
八木カモメ「・・・・・・」
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