私の愛しいボディーガード(脚本)
〇教室
キーンコーンカーン・・・
放課後にチャイムが鳴る。
私──瀧山沙織(たきやまさおり)は、
この瞬間が好きだ。
沙織「今日も無事に、1日が終わりそうね」
だがチャイムが鳴りおわるまえに、
堂本 カズヤ「瀧山沙織だな?」
私の『平穏な日常』は崩れ去った。
堂本 カズヤ「俺は堂本カズヤ」
堂本 カズヤ「単刀直入に言わせてもらう」
堂本 カズヤ「殺されたくなければ、俺と一緒に来い」
沙織「・・・祖父の命令ですか?」
私の祖父──瀧山鷹秋は、
関東でも指折りの規模のヤクザのトップだ。
その一人息子の娘が私だ。
ヤクザの組長の、孫娘。
駆け落ちして組を出た父も母もすでに亡くなり、今は私だけでひっそり暮らしている。
堂本 カズヤ「組長は、死んだよ」
堂本 カズヤ「殺された」
沙織「なっ・・・」
パシュ!
堂本 カズヤ「伏せろ!!!」
彼は私に覆いかぶさった。
堂本 カズヤ「クソ・・・!もう来やがった!」
沙織「血・・・怪我してる」
堂本 カズヤ「掠り傷だ。早くここを出るぞ」
堂本 カズヤ「頼む・・・一緒に来てくれ」
堂本 カズヤ「あんたを守りたいんだ!」
〇大きな木のある校舎
手下「あっちだ!!」
沙織「あの人たちは・・・!?」
堂本 カズヤ「桜庭組の奴らだ。クソッ、学校で撃つかよ普通!」
桜庭組は、瀧山組と対立している組だ。
沙織「どうして私なんかを狙って・・・」
堂本 カズヤ「組長が死んで、あんたを後継者にかつぎ上げようって動きがある」
沙織「ええっ!?」
堂本 カズヤ「あんたにそんな気はなくても、後継者をつぶしたい奴らは沢山いるんだ」
堂本 カズヤ「とにかく走れ!」
〇ビルの裏
堂本 カズヤ「ハア・・・なんとか振りきれたな」
沙織「ハア・・・あの・・・車とか手配できなかったの?」
堂本 カズヤ「・・・俺、まだ17だからさ」
沙織「え、同い年?」
堂本 カズヤ「そんな不安そうな顔すんなって」
沙織「あなたも瀧山組のひと?」
堂本 カズヤ「まあ、下っ端だけどな」
堂本 カズヤ「でもあんたのジイサンには世話になった。 ジイサンが死ぬ前の遺言は」
堂本 カズヤ「『孫娘の沙織を守ってほしい』だ」
堂本 カズヤ「あんたは俺が、絶対に守る」
堂本 カズヤ「!」
堂本 カズヤ「追手が近づいてくる・・・」
堂本 カズヤ「・・・ごめん!」
カズヤにきつく抱き締められた。
堂本 カズヤ「静かに・・・じっとして?」
三つ編みをそっとほどかれる。
沙織「あ・・・!」
堂本 カズヤ「よし・・・気付かれてない」
堂本 カズヤ「もうしばらく、こうしていよう」
彼の身体からは、
血と汗と・・・優しい匂いがした
〇組織のアジト
堂本 カズヤ「・・・よし」
堂本 カズヤ「誰もいないな」
沙織「ここは?」
堂本 カズヤ「俺の隠れ家」
堂本 カズヤ「つっても、空き倉庫に勝手に住みついてる だけなんだけどさ」
堂本 カズヤ「まあ瀧山組のお姫様をお招きするところじゃないのは確かだな」
沙織「お姫様って・・・」
堂本 カズヤ「はは。お姫様。お手をどうぞ」
堂本 カズヤ「──っ」
沙織「ひどい怪我・・・!」
堂本 カズヤ「弾は貫通してるから平気。 ツバつけときゃ治るってやつ・・・」
沙織「そんなわけないでしょう! 止血するからじっとしてて」
堂本 カズヤ「ずいぶん手際がいいんだな」
沙織「・・・危ない目にあうのはこれが初めてじゃないから」
堂本 カズヤ「・・・そうか」
堂本 カズヤ「・・・話してないことがある」
堂本 カズヤ「組で雑用やってるとき、組長──ジイサンに呼び出された」
堂本 カズヤ「孫娘を見に行ってきてほしいって」
沙織「・・・」
堂本 カズヤ「ジイサンは心配してたんだよ。あんたのこと」
堂本 カズヤ「それで俺が・・・その、こっそり」
沙織「ストーカーしてたわけ?」
堂本 カズヤ「ごめん」
沙織「・・・それで?」
堂本 カズヤ「毎週水曜日。あんたのことを見に行った」
堂本 カズヤ「あんたはいつもひとりだった」
堂本 カズヤ「でも・・・堂々としてた」
堂本 カズヤ「いつも背筋をのばしてさ」
堂本 カズヤ「ヤクザの孫とか陰口言う奴らに、 ガツンと言い返してたことあったろ?」
堂本 カズヤ「あれはまじでかっこよかった」
堂本 カズヤ「ジイサンに伝えたら大笑いしてたわ」
堂本 カズヤ「さすが俺の孫だーって」
沙織「・・・そう」
堂本 カズヤ「気持ち悪いよな、ごめん」
沙織「・・・いいよ。許してあげる」
堂本 カズヤ「そうやって遠くから見てるうちにさ・・・」
堂本 カズヤ「俺・・・あんたのことを・・・」
ガチャ!!
〇組織のアジト
桜庭 リョウ「よくやったな、カズヤ」
堂本 カズヤ「兄貴・・・!なんでここに」
桜庭 リョウ「瀧山組への潜入、ご苦労だった」
桜庭 リョウ「しかも孫娘まで懐柔するとは」
桜庭 リョウ「素晴らしいよ」
沙織「どういうこと・・・?」
桜庭 リョウ「こいつは桜庭組の・・・俺の弟分だよ」
桜庭 リョウ「瀧山組にスパイとして潜り込ませたんだ」
堂本 カズヤ「・・・っ」
堂本 カズヤ「瀧山組長を殺すなんて聞いてなかった・・・どうしてあんなこと!」
桜庭 リョウ「何言ってる。組長を消せたのは お前の情報あってこそだぞ」
堂本 カズヤ「そんな・・・」
桜庭 リョウ「悪いがお嬢さん。君も死んでもらうよ」
桜庭 リョウ「斬り刻んだ君の死体を手土産に、 瀧山組に乗り込むとしよう」
堂本 カズヤ「逃げろ、沙織!」
桜庭 リョウ「邪魔するな、この野良犬が」
堂本 カズヤ「ぐあっ・・・」
堂本 カズヤ「沙織に触るな・・・!」
沙織「・・・」
桜庭 リョウ「怖くて声も出ないようだね」
沙織「私はあなたは許せない」
桜庭 リョウ「え?」
ドサリ。
堂本 カズヤ「刀を奪って・・・一太刀で・・・」
沙織「・・・戻って伝えなさい」
沙織「金輪際、私や、瀧山組にかかわるなと」
沙織「いいですね?」
手下「ひっ・・・ひい・・・」
沙織「・・・」
沙織「ほんとは気付いていたの」
沙織「あなたが桜庭組の人間だってこと」
堂本 カズヤ「・・・俺は・・・!」
沙織「守るって言ってくれたのが嘘じゃないのは わかってる」
沙織「嬉しかったよ」
〇橋の上
堂本 カズヤ「これからどうするつもりだ?」
沙織「瀧山組に行くしかない、かな」
今の私を保護できるとしたら、瀧山組しかないだろう。
私を狙うのは桜庭組だけではないのだから。
堂本 カズヤ「・・・俺と逃げないか」
沙織「ありがとう。でもいいの。 私の宿命ってやつと向き合ってみるよ」
堂本 カズヤ「さすが、俺の惚れた女だな」
沙織「惚れた、って・・・」
堂本 カズヤ「言ってなかったっけ?」
沙織「そ、そんなこと今言われても」
堂本 カズヤ「はは。そこは見抜けなかったんだな」
堂本 カズヤ「あんたが瀧山組に行くなら、俺も行く」
沙織「・・・せっかく足を洗うチャンスなのに?」
堂本 カズヤ「もう遠くから見てるだけなのは嫌だ」
堂本 カズヤ「あんたはひとりでも強いけどさ」
堂本 カズヤ「せめてあんたが少しでも傷つかないように、そばにいさせてほしい」
堂本 カズヤ「誰よりもそばに」
私の『平穏な日常』は終わった。
沙織「悪くない取引ね」
堂本 カズヤ「だろ?」
私と彼の新しい『日常』が、始まろうとしている。
おお!ボディガードよりも強い、というか、大人よりも肝が据わってる。振りかざすのと実際に斬るのでは全く異なるでしょうから。
格好良くて素敵なキャラです。これだと彼女を守る為には、更に鍛えないといけませんね。これからの活躍に期待です。
始まりから終わりまでがスッキリとまとまっていて、読後感がいいですね。収まりの良さは、完成度に直結するんだなと改めて思いました。
二人共かっこよくて、ほれぼれしてしまいました!組を引っ張っていく未来の姿が見えたような気がしました!戦闘シーンも面白かったです!素敵な物語、ありがとうございました!
カッコよすぎるー!こんなキャラ、惚れてしまう!