死が2人を分かつまで(脚本)
〇おしゃれな食堂
先輩「最近若い子の自殺が多いみたいねぇ」
先輩「そうみたいですね」
先輩「若い子と言ってもさなえちゃんにはあまり縁がなさそうだけど・・・」
さなえ「そ、そうですか?」
先輩「なんでも、前兆とかサインがあるみたいで・・・」
先輩「いつもと変わった行動をするらしいですね」
先輩「そう。 まずは身辺整理を始めるそうよ」
さなえ「身辺整理・・・」
〇簡素な一人部屋
さなえ「な、何これ!」
ハク「どうだ、綺麗になっただろー」
さなえ「あの汚部屋をどうやってここまで・・・」
ハク「前は前で計算された配置だったんだって」
さなえ「一体どういう心境の変化が・・・?」
ハク「・・・何でもねーよ」
〇おしゃれな食堂
先輩「・・・さなえちゃん?大丈夫?青ざめてるけど」
さなえ「あ、ああいえ!何でもないです・・・」
先輩「それで、両親や昔の友人を訪ねたりもするらしいですね」
さなえ「両親や昔の友人・・・」
〇モヤイ像
さなえ「楽しかったね、ガングロギャル体験」
ハク「・・・・・・・そうか?」
さなえ「来週末ゾウの糞から作るコーヒー体験があるんだって」
ハク「何でお前はそういうもんばっかに興味持つかねー」
ハク「・・・・・・あ、わり、来週末予定あったわ」
さなえ「どこか行くの?」
ハク「ちょっと実家にな」
さなえ「珍しいね」
ハク「や、野暮用があってな」
〇おしゃれな食堂
先輩「そう、それで唐突に昔話を始めたりするのよね」
先輩「さ、さなえちゃん、大丈夫・・・?」
さなえ「・・・・・・・・・」
〇簡素な一人部屋
ハク「なあ、覚えてるか? 俺たちが初めて会った時のこと」
ハク「俺がバイトクビになって落ち込んでる時に、お前が泣きそうになりながら財布探しててよ」
ハク「これからの生活のことで頭いっぱいでそれどころじゃ無かったからよ 正直見なかったことにしようかと思ったけど」
ハク「・・・あの時見ないふりしなくて良かったってすげー思うんだよな」
ハク「だからこうして今お前と一緒にいられる」
ハク「いやー、やっぱり良いことはするもんだな!」
〇おしゃれな食堂
先輩「さ、さなえちゃん?」
ガタッ!
さなえ「私・・・行かないと・・・!」
先輩「ちょ、ちょっと!どこに行くのよ!」
〇簡素な一人部屋
ハク「ありがとう・・・・・・っと」
さなえ「ハク!」
ハク「さなえ!? 何でお前ここに・・・仕事はどうした!?」
さなえ「良かった・・・生きてる!」
ハク「いや・・・そりゃ生きてるだろ」
さなえ「私・・・何があったとしてもハクの味方だよ 辛いことがあるなら全部一緒に背負うから 生きていて・・・」
ハク「・・・・・・・・・」
さなえ「たとえ足が臭くても背が低くてもハゲたとしても・・・」
ハク「いやそりゃ言い過ぎだろ」
ハク「あー・・・ なんか壮大な勘違いしてねェか?」
さなえ「勘違い・・・?」
ハク「俺が死ぬとか」
さなえ「違うの・・?」
ハク「死のうなんて一度も思ったことねぇな」
さなえ「で、でも・・・今日職場でね・・・」
ーーーーーー
ーーー
さなえ「・・・で、全部当てはまってたから、心配で居ても立っても居られなくなって・・・」
ハク「・・・・・・・・・・・」
ハク「わり、それは完璧に俺が悪いわ」
〇簡素な一人部屋
ハク「こんな感じで言うつもりじゃなかったんだけどよ」
ハク「あー・・・その・・・」
ハク「・・・・・・俺と結婚してくれないか?」
さなえ「・・・・・・!!」
ハクはそう言うと、デスクの上に置いてあった箱を開いて見せた
さなえ「・・・指輪・・・」
ハク「まあ、あれだ」
ハク「一緒に暮らすなら荷物も減らそうと思ってよ あー、あと実家帰ったのは色々相談に乗ってもらってたからで」
ハク「だからそんな心配しなくて大丈夫だって」
さなえ「ハク・・・!」
ぎゅっ
ハク「うおっと」
ハク「へへっ・・・」
〇簡素な一人部屋
ハク「・・・・・・それで」
ハク「返事・・・聞かせてくれるか・・・?」
さなえ「するよ・・・する!何回でも結婚する!」
ハク「何回でもって・・・」
ハク「・・・ゴホン じゃ、これからもよろしくな」
さなえ「もちろん! こちらこそ!」
〇オフィスのフロア
部長「・・・もしもし!?さなえくんか!?今どこにいる!」
部長「何も言わず帰るなんて社会人としての自覚がだね──」
部長「・・・え?恋人が死んでしまうかと思ったら?全然そんなことはなくて?プロポーズされた?」
部長「よ、よく分からんが・・・・・・」
部長「と、とりあえず!半休ということにしておくからね!まったく!」
プツッーーー
部長「まったく、よく分からんーー 分からんが──」
部長「非常に気になるじゃないか」
ーーーーおわり
途中まで、気が気じゃなかったのですが、無事ハッピーエンドにたどり着いて、ほっとしました!最後の部長のオチにも笑わされました!タイトルの回収が素晴らしいなと思いました!
素敵な物語、ありがとうございました。
部長がおもしろかったです。笑
見事にオチをつけてますね。
でも、たしかにそういった人の前触れに似てますよね。
心配になった彼女の気持ちもわかります。
恋人同士なら相手がどんな精神状態かより分かりそうな気もしないでもないですが、その彼女の先走っていく所が、彼にとっては好きな要素なのかもしれないですね! 会社から彼の元に急いでいた彼女の胸は張り裂けそうだったでしょうね。