第15話 『断罪裁判』(脚本)
〇教室
黒崎検事「それではこれより、スケヒロの断罪裁判を執り行う」
相田英雄「止めて、そのタイトル。怖すぎるから」
黒崎検事「ウラ、スケヒロが世界脅威で間違いないんだな?」
ウラたん「はいなのです。まだとっても小さいですが、やがて世界を滅ぼす脅威になります」
八木カモメ「昨日のヒロと今日のヒロの違いといえば、やっぱり・・・」
黒崎検事「三割ほど不細工になったな」
相田英雄「んな訳ねぇだろ、変わらずイケてるわ!」
八木カモメ「頭がアホになったとか?」
相田英雄「だからヤギちゃんに言われたくないんだけど!」
相田英雄「そうじゃなくて! どう考えてもこのサイコキネシス能力でしょ!」
黒崎検事「それでだ、ウラ。今回の世界脅威にはどう対処したらいいと思う?」
ウラたん「今回はとてもイージーです」
ウラたん「まずは『カウント3』で、引き金を引くだけで人の生命活動を停止することも出来る黒光りするブツを出します」
ウラたん「それをうまく使い、銃口から発射される弾丸でヒーローさんの生命活動を停止させます」
相田英雄「ちょっと、いきなりハード過ぎない!? いらぬ被害が出てるよ!」
黒崎検事「そうだぞ。スケヒロを始末したぐらいで実刑を食らうのは割に合わん」
相田英雄「そっちの被害!」
相田英雄「そうじゃなくて、今尊い命が一つ犠牲になっていたよね!」
ウラたん「ご安心くださいなのです。その後の処理も『カウント3』を使えば簡単なのです」
ウラたん「ヒーローさんだった物体と黒光りする物を抹消すれば、証拠は何も残りません」
黒崎検事「悪くないプランだ。 よし、今回はそれでいこう」
ウラたん「それがいいと思うのです」
相田英雄「いや、よくないよね! そういう黒い計画はよくないよね!というかクロケンとウラちゃん、今回は息ピッタリなのね!」
相田英雄「ヤギちゃんも何か言ってよ!」
八木カモメ「さようなら、わが友ヒロ。ヒロのことはなるべく忘れないようにするよ」
相田英雄「随分と薄い友情関係だな!」
黒崎検事「まあ冗談はこれくらいにして」
黒崎検事「今回の世界脅威がスケヒロなら話は簡単だ。そのサイコキネシス能力を『カウント3』で消せばいい」
八木カモメ「うん、それで済みそうだ。いやー、また昨日みたいにトンデモナイのを想像していたからちょっとホッとしたよ」
黒崎検事「なら早速始めよう」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「あー、そのことなんだけどさ」
相田英雄「それはちょっと待った方がいいんじゃないかな?」
黒崎検事「? どういうことだ、スケヒロ?」
相田英雄「確かに俺のこの力は、将来的に世界脅威になりえるかもしれない。だけど逆に言えば、世界を救うことにだって使えるじゃん」
相田英雄「これは本来『カウント3』を使って、ようやく獲得できる能力だ。だけど今はそうじゃない」
相田英雄「ヤギちゃんは『カウント3』を温存したまま俺も超能力が使える。これって大きな戦力になると思うんだよね」
八木カモメ「・・・なるほど。 確かに、そういう風にも考えられるか」
黒崎検事「何を言っている、スケヒロ。そもそも、お前が世界脅威なんだ。それを排除しないと意味がない」
相田英雄「大丈夫だって、俺、世界を破滅させるようなことしないから」
八木カモメ「まあ、ヒロがそういうなら」
黒崎検事「騙されるな、ヤギ。スケヒロのことだ。大方、サイコキネシス能力が惜しくなっただけだろう」
黒崎検事「碌なことに使わないに決まっている。スカート捲りだの、ブラのホックを外すだの、そういうのがしたいだけだ」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「・・・そんなことはなくはないが、そんなことはしない」
黒崎検事「誤魔化しが荒い! 欲望に素直か、この阿呆は!」
黒崎検事「こうなったらスケヒロを一度跡形もなく消滅させた後、綺麗なスケヒロとして復活させるか?」
相田英雄「止めて。それはたぶん100%俺じゃなくなっちゃうから」
相田英雄「いや、違うんだって! 私欲じゃなくてさ、この状況は逆に使えるって思うのよ!」
相田英雄「世界脅威は今後、次々と出現するんだろ?」
相田英雄「あのロボット襲来したのは昨日で、翌日の今日にはこうして新たな世界脅威がもう出現しているんだ」
相田英雄「はっきり言って、ペース早すぎ。 その対処に追われてたらやってらんない」
相田英雄「だけど今は俺という世界脅威がある以上、次の世界脅威は来ないってことじゃん」
八木カモメ「ああ、なるほど! 確かに、そうだ!」
相田英雄「これはチャンスだ。俺たちが置かれた状況を打破する方法を考える時間稼ぎになる」
相田英雄「クロケンだけじゃなく、ヤギちゃんだって分かっているんだろ?」
相田英雄「世界脅威を影で操っている元凶は、ヤギちゃんに『カウント3』を与えた女神様だって」
「・・・・・・」
相田英雄「ヤギちゃんがかつて『カウント3』で叶えて回収されたはずの願いが、こうして世界脅威として使われている」
相田英雄「もはや疑う相手は一人しかいない」
相田英雄「なら俺たちがすべきことは? 次々とくる世界脅威を退けること?」
相田英雄「そうじゃないだろ。 俺たちがすべきことは・・・」
相田英雄「元凶を断って、世界脅威の襲来事態を失くすことだ」
黒崎検事「・・・・・・」
黒崎検事「相変わらず抜け目のない奴だ」
黒崎検事「だがスケヒロの言う事は一理あるな」
相田英雄「だろ」
相田英雄「だから、ちょっと様子見よう。俺は逃げも隠れもしないんだ。そんな一日二日で俺が世界を滅ぼす存在に変化すると思う?」
黒崎検事「どうするヤギ?」
八木カモメ「いいと思うよ。ヒロの言う事はもっともだし」
相田英雄「決まりだね」
黒崎検事「ヤギが言うなら仕方がない。今日の所は見逃してやる。命拾いしたな、スケヒロ」
相田英雄「言い方が怖いんだよ。 クロケンはどこぞの怖い人か?」
〇川に架かる橋
──翌日。
黒崎検事「ヤギ、今朝も早いな」
八木カモメ「ああ、クロ。おはよう」
黒崎検事「? どうした? 浮かない顔して?」
八木カモメ「いや、ウラたんがさ」
ウラたん「メガネ、昨日より世界脅威がほんの少し大きくなりました」
黒崎検事「それはどういう──」
相田英雄「おーい、二人とも」
八木カモメ「あっヒロ」
相田英雄「見てくれよ、ぬん!」
女の子「きゃーっ」
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