第11話 『勇者たる者の心意気』(脚本)
〇教室
ウラたん「ご主人様。高い、高い、してください」
八木カモメ「いいよ。それっ」
ウラたん「きゃっきゃっ」
相田英雄「ヤギちゃん。 楽しそうに幼女と戯れているな~」
黒崎検事「・・・・・・」
黒崎検事「世界の滅亡を危惧した女神は、ヤギに『カウント3』というチート能力を与えた」
黒崎検事「だが、その危機は、存在しない」
黒崎検事「これはいったいどういうことだ?」
相田英雄「ウラちゃんが嘘を言ったり、間違ったりしている可能性は?」
黒崎検事「なくもないが。それならヤギがウラを具現化した時に何か細工したことになる」
黒崎検事「だが、ヤギにそんな頭はないだろう」
相田英雄「確かに。 ヤギちゃんはそんなことしないだろうしね」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「・・・あのさ、クロケン」
相田英雄「どうしてクロケンは、ヤギちゃんに協力しているの?」
黒崎検事「? どういう意味だ?」
相田英雄「女神だの、世界の滅亡だの。突然、ヤギちゃんが言い出した訳の分からないことに、なんで協力しているのかってさ」
相田英雄「普通信じないし、協力もしないでしょ」
黒崎検事「そういうお前はどうなんだ、スケヒロ?」
相田英雄「俺? 俺はアレだよ。 ヤギちゃんのマブダチだからだよ」
黒崎検事「なら、俺もそれでいいだろう」
相田英雄「いやでも、クロケンはそこまでバカじゃないだろ? 何か見返りを求めているとか?」
黒崎検事「見返りがあるとは思っていない。 色々とあるが、まず第一に」
黒崎検事「ヤギだけに任せたら、世界は滅亡する」
相田英雄「それな」
黒崎検事「あとは単純に好奇心だな」
相田英雄「好奇心?」
黒崎検事「この世には実は女神という存在がいて、人間に特別な能力を与える」
黒崎検事「そんなお伽噺みたいなことが実際に起こりえるのならば、その一部始終を目撃したい」
相田英雄「それに意味があるの?」
黒崎検事「0だと思っていたことが1だった。 これがどういうことか分かるか?」
黒崎検事「世界は俺が思っているほどツマラナイものではなかった、ということだ」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「・・・それで? その話のオチは面白いのかな?」
黒崎検事「さてな。想像に任せる」
黒崎検事「俺がヤギに協力するのはそんなところだ。 それで? スケヒロはどうなんだ? まさか言わないなんてことはないだろうな?」
相田英雄「俺はシンプルだよ。ヤギちゃんと一緒にいたら楽しいっていうのが一つ。あとは、まあ・・・」
相田英雄「恩返しがしたいから、かな」
黒崎検事「それはどういう・・・」
八木カモメ「二人とも何をコソコソ話してんの?」
相田英雄「ヤギちゃんがあまりに楽しそうにしているから、声を掛け辛かっただけ」
黒崎検事「声をかけて仲間と思われたくなかったというのもあるがな」
黒崎検事「それよりこれからどうする? 世界を滅亡させる脅威はないのだろう?」
八木カモメ「そうなんだよね、ウラたん」
ウラたん「はいです、ご主人様」
ウラたん「世界は変わらず人間のドロドロの欲望が入り混じるディープ空間ですが、緊急を要するような滅亡の危機はありません」
相田英雄「・・・この子。 素敵な笑顔でめっちゃ怖いこと言うよな」
八木カモメ「まあ、そういうことなら、もう脅威がやってくるまで何もしなくていいんじゃない」
相田英雄「まあ、そういうことなら、もう脅威がやってくるまで何もしなくていいんじゃない」
八木カモメ「当分起こる気配もなさそうだし。それに、もしかしたら女神様の間違いだったかもしれないしさ」
相田英雄「ならさ。それまでは、好き勝手に『カウント3』を使いまくるっていうのはどう? 面白そうじゃん」
八木カモメ「・・・いや、それは止めておこうよ」
八木カモメ「だって、楽しめないじゃん。世界の危機があるって分かっていて、それを無視して遊んだって」
八木カモメ「楽しくするなら世界を救った後に、皆で盛り上がった方が絶対に楽しいって」
「・・・・・・」
八木カモメ「大丈夫、大丈夫。なんとかなるって」
八木カモメ「俺一人じゃどうにもならないけど、俺にはヒロとクロがいるからさ」
ウラたん「ウラもいますよ」
八木カモメ「そうそう、ウラたんもいるし」
八木カモメ「ピンチっていうのはさ、自分と一緒になんとかしようって仲間がいればさ、案外どうにかなっちゃうもんだから」
「・・・ふっ」
相田英雄「まったくヤギちゃんらしい」
黒崎検事「その能天気さを分けてほしいものだ」
相田英雄「・・・もしかしたら、ヤギちゃんのそういう所が選ばれた理由なのかもね」
八木カモメ「? 何か、言ったヒロ?」
相田英雄「んにゃ、なんでもない。というかさ、どっちにしろ『カウント3』はもう1回リセットしてもらわないとマズくない?」
八木カモメ「そうか。ウラたんを出すのに2つ使っちゃったから。あと1つも使っちゃわないとダメか」
相田英雄「何か好きなことに使っちゃえば。世界を救う報酬の前払いってことで。それくらいいいでしょう」
八木カモメ「・・・あっ、なら一つだけ、やってみたいことがあったんだ」
黒崎検事「ほう。それはなんだ?」
八木カモメ「学校でらーめん食べてみたかったんだよね。カップ麺とかじゃなくて出前のヤツ。しかも教室で、皆一緒にさ」
黒崎検事「無欲なんだか、単なる阿呆なんだか」
相田英雄「だけど、確かにそれはちょっとやってみたいね」
ウラたん「ご主人。ウラを忘れるのはとてもいけないことなのです」
黒崎検事「なんだ? この人形もメシを食べるのか?」
ウラたん「当たり前です。このメガネ野郎。 警察に通報して豚箱に放り込みますよ」
相田英雄「相変わらず可愛い素振りで口が悪いな、ウラちゃん」
八木カモメ「よし。では早速『俺の願い、発動★』」
ピカッ
出前の人「ちわーっす、出前でーす」
相田英雄「はやっ! 最速過ぎるだろう!」
出前の人「らーめん4人前ですね~。 お代は結構ですので。では失礼しまーす」
黒崎検事「便利過ぎるな『カウント3』」
八木カモメ「うおーっ! 教室でらーめんとかテンション上がるわ! 早く食べよ、食べよ!」
八木カモメ「では世界を救う前祝に。いただきまーす」
「いただきま~す」
〇異次元空間
謎の猫「にゃーご」
女神ウヌバス「ちゅるちゅる、もぐもぐ、ごくん」
女神ウヌバス「これ、美味しいわね」
八木カモメ「あれ~?」
八木カモメ「俺、まだらーめん食べてなかったんですけど~。っていうかまたこの展開ですか~」
女神ウヌバス「ちゅるちゅる、もぐもぐ」
八木カモメ「・・・あのウヌバス様」
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