バレンタインにチョコをもらいたいイケメン

水道水

チョコをもらいたいイケメン(脚本)

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〇学校の駐輪場
伊集院トキミツ「待ちに待ったぞ、バレンタインデー」
伊集院トキミツ「僕はこの日のために共学校に進学したんだ」
  神妙な顔で登校してきたこの男の名は伊集院トキミツ
  乗ってきたママチャリを停めるだけでも絵になるイケメン高1男子だ
  しかしこの男、実は人生でまだ一度も女の子からチョコをもらったことがない

〇教室
  小学生時代の彼はとぼけたハナタレ小僧であり全くモテず

〇特別教室
  中学に上がると謎の覚醒を果たすも進学先が中高一貫男子校だったため、
  女の子からチョコをもらう機会には恵まれなかった
  いつからか、女の子からチョコをもらうことは彼の悲願となっていた
  そして転機は高校進学を控えた中学3年生
  彼は5秒も悩んだ末に内部進学を蹴り、共学校に無事合格して今日に至る

〇学園内のベンチ
伊集院トキミツ(ただ、この一年あまり女子と話せず親しくなれなかったことがネックだな)
伊集院トキミツ(だが今日のために万全を期して縁結びのお参りもしてきた)
伊集院トキミツ(それに今はこんなにたくさん女の子がいるんだから今年こそ!)
  まばらに登校してくる女子たちを横目に彼は意気込んだ
  さて、この一年間女性免疫のなさゆえ、セルフ男子校生活を築いてしまったトキミツの運命やいかに?

〇大きな木のある校舎
伊集院トキミツ「さあ、まずは僕宛てにチョコが置かれていそうな場所をチェックだな」
伊集院トキミツ「こういうのは早く来て密かに机とかに忍ばせるのが定石だ」

〇学校の昇降口
伊集院トキミツ(まずは下駄箱を確認)
伊集院トキミツ(チョコなし)

〇学校の廊下
伊集院トキミツ(次に廊下のロッカーを確認)
伊集院トキミツ(チョコなし)

〇教室
伊集院トキミツ(最後は教室の机の中を確認)
伊集院トキミツ(チョコなし)
  チョコをもらいたいイケメン、完。
伊集院トキミツ「って終わってたまるか!」
伊集院トキミツ(出鼻をくじかれたな)
伊集院トキミツ(でも次の作戦がある)
伊集院トキミツ(内容はこうだ)
伊集院トキミツ(①長時間トイレで離席して僕の机をフリーにすることで本命チョコを忍ばせやすい環境を作りつつ)
伊集院トキミツ(②ときに積極的に校舎を徘徊することで女の子との単純接触回数を増やし、義理チョコをもらえる確率を増やす)
伊集院トキミツ(これらを休み時間ごと交互におこなう 名付けて「メビウスの輪」作戦だ)
伊集院トキミツ「よし、まずは①決行だ!」

〇個室のトイレ
  1時間目前

〇教室
  あれ、伊集院くんどこ行った?

〇渡り廊下
  2時間目前
伊集院トキミツ「②小走りで徘徊だ!」

〇渡り廊下
  競歩かな?

〇個室のトイレ
  3時間目前

〇教室
  ・・・
(すぐいなくなるから渡すタイミングがない!)

〇渡り廊下
  4時間目前
伊集院トキミツ(おかしいな、もらえる気配がない)
伊集院トキミツ「今日本当に2月14日か?」

〇個室のトイレ
  そして昼休み
伊集院トキミツ「くぅ、なぜもらえないんだ」
縁結びの神「はは、ざまあねえな」
  唐突に和服の男が空中にフヨフヨ浮かんで現れる
伊集院トキミツ「おわっ、だだだ誰だおっさん!」
縁結びの神「俺はお前が参拝した神社の縁結びの神、お前に天誅を下しに来た」
伊集院トキミツ「な、とりあえずあんたが神なのは納得するとして、天誅ってどういうことだ!」
縁結びの神「ぬかせ、お前が参拝ではたらいた無作法を忘れたか!」

〇神社の本殿
  1週間前
伊集院トキミツ「よし、お参りするぞ」
縁結びの神「おっ、参拝者が来たな」
伊集院トキミツ「あっ」
縁結びの神「ん?」
伊集院トキミツ(賽銭箱の目の前まで来たものの、財布に紙幣と500円玉しか入ってない・・・)
伊集院トキミツ(入れるにはちょっとためらう額だなぁ・・・)
縁結びの神「え?」
  キョロキョロ
伊集院トキミツ(崩そうにも近くに自販機が見当たらないなぁ)
伊集院トキミツ(・・・・・・)
縁結びの神「おい、まさか・・・!!」
伊集院トキミツ「こういうのはお金じゃなくて気持ちなんだよな、二礼二拍手一礼っと」
縁結びの神「無銭祈願、だと・・・!?」

〇個室のトイレ
縁結びの神「というわけで今日は俺がいる限りチョコはもらわせねえぞ」
伊集院トキミツ「うん、僕が過失10割なのは分かったけど屈しないからな」
縁結びの神「おいおい」

〇教室
  そして昼休みの終わり
  教室に戻ると
クラスみんなに配る系女子「やっと見つけた伊集院くん」
クラスみんなに配る系女子「チョコあるんだけど甘いの平気?」
伊集院トキミツ(遂にキタ!クラスみんなに配る系女子だ 義理でも本当にありがたい!)
伊集院トキミツ「うん、すごい平気!」
縁結びの神「非モテを救済する女神の登場だな」
縁結びの神「だがさせん!」
非モテを救済する女神「ん、あれぇ?」
伊集院トキミツ「ど、どうしたの?」
非モテを救済する女神「ごめん、ちゃんと人数分用意したと思ったけど足りなかったみたい・・・」
伊集院トキミツ「あ、そうなんだ・・・」
伊集院トキミツ「ま、まあ、もらったチョコが多すぎて困ってたくらいだから気にしないで」
非モテを救済する女神「そ、そっか、たしかに伊集院くんモテそうだもんね、ならよかった」
伊集院トキミツ(嘘です1個ももらってません・・・)
縁結びの神「見栄を湯煎して人の形に整形したような男だな」
伊集院トキミツ(くぅ、なんかしやがったなこの野郎)
伊集院トキミツ(でも諦めないぞ!)

〇個室のトイレ
  しかし無情に時は過ぎ、放課後
伊集院トキミツ「結局もらえなかった・・・」
縁結びの神「なんかごめんな」
伊集院トキミツ「さてはあんた、あれ以外も見えないところでフラグへし折ってたな?」
縁結びの神「あ、いや、実は俺が介入したのは昼の1回きりだぞ」
伊集院トキミツ「へ?」
縁結びの神「みなまで言わせる気か? つまりお前は非モt・・・」
伊集院トキミツ「どりゃああああああ!!!!」
縁結びの神「うるさ 大声でかき消すなよ」
伊集院トキミツ「今までの努力は無駄だったのか・・・」
縁結びの神「まあお前のこと見てるやつはどこかにいるから元気出せ」
伊集院トキミツ「充分反省したんでどうかご神託を」
縁結びの神「仕方がないやつだな」
縁結びの神「そうだな今日はもう家路に着け」
縁結びの神「いいことあるから」
縁結びの神「そんで今後は参拝に限らず日頃のおこないを大事にしろよ」
伊集院トキミツ「イエッサー」
縁結びの神(切り替え早いなこいつ)

〇学校の駐輪場
伊集院トキミツ(言われた通り大人しく帰るか)
???「ここにいた」
伊集院トキミツ(え?まさか)
???「どうしても直接渡したかったから伊集院くんのこと追いかけてきました」
???「受け取ってください」
伊集院トキミツ「あ、ありがとう」
伊集院トキミツ(僕は今クレバスよりも深い感動に包まれています)
???「じゃあね」
伊集院トキミツ「あっ」
伊集院トキミツ(行っちゃった)
伊集院トキミツ(確か隣のクラスの子だよな)
伊集院トキミツ(3月にお礼しないとな)
伊集院トキミツ(でもこのチョコなんか見覚えが)
伊集院トキミツ「まあいっか」

〇おしゃれな住宅街
伊集院トキミツ「おっさんにお礼参りしないとな」
  チョコが割れないように、普段よりゆっくり自転車を漕いで帰ったトキミツだった

〇おしゃれな住宅街
  一方その頃
???「今度こそ脈アリかな」

〇特別教室

〇おしゃれな住宅街
???「私可愛くなったよね? 伊集院くん」

コメント

  • まさかの途中の展開が伏線になっていて、びっくりしました!最後まで楽しく読ませていただきました!とりあえず、ハッピーエンドということで良かったです!素敵な物語ありがとうございます!

  • こんなところに伏線があったとは!笑
    縁結びの神さまおもしろくて好きです。
    やっとチョコをもらえた、と思い込んでる彼がかわいいですが、本当のことを知ったら…とも考えてしまいます。笑

  • 最初からオチまで楽しませて頂きました!
    確かにお賽銭で500円は…躊躇うかもしれませんが、だからといってこんな邪魔しなくてもいいのにー!笑
    ラストのオチは少し驚きましたが、チョコが貰えたから結果オーライ?笑

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