第8話 『バージョンアップ』(脚本)
〇教室
──翌日
黒崎検事「・・・まったく同じ状況だ」
黒崎検事「頭の中の記憶では、昨日は放課後に一人で図書館に行ったはずだ」
黒崎検事「だが、お前たちとファミレスに行ったという妙にリアルな夢を見たせいで、記憶が二重に存在する感覚に陥っている」
八木カモメ「俺たちも同じだよ。 毎度毎度、夢オチって感じだよな」
八木カモメ「という訳で、昨日の願いも、例に漏れず、女神さまに回収してもらってチャラになりました」
相田英雄「そうだよな! 俺、能力使えなくなっていたもん!」
相田英雄「今朝から幾ら念じても女の子のスカート捲れなかったもん」
八木カモメ「やっぱり試したんだ」
相田英雄「ずっと試しているよ! だけど二時間以上粘っているけどなんも起きないんだよ!」
相田英雄「頭では、すでに能力は失われた、と理解している!」
相田英雄「だけど諦めきれない! だから俺は試し続ける! 女の子のスカートが動く、その時まで!」
八木カモメ「そこまで自分の欲望に忠実でいられるヒロのことを、心の底から尊敬するよ」
黒崎検事「この阿呆のことは置いておくとして。 やはり願い事増やすのはナシだったか」
八木カモメ「なんでも女神様が言うには──」
〇異次元空間
女神ウヌバス「いるのよね、そういうあざといことして神の力を手に入れようとする人間」
女神ウヌバス「そういうのは私、許さないから」
女神ウヌバス「私が願い事は3つって言ったら3つなの。 このルールは絶対よ」
〇教室
黒崎検事「なるほど。女神が決めたことは絶対か」
八木カモメ「あと、前回指摘があった能力の発動条件について。一部仕様が変更になりました」
黒崎検事「ほう、どんな?」
八木カモメ「合言葉が付きました」
〇異次元空間
女神ウヌバス「カモメが想像以上に要領が悪いことは分かったわ。仕方ないから、今後は能力を使う前に何か合言葉を唱えなさい」
八木カモメ「合言葉、ですか?」
女神ウヌバス「能力の発動条件、枕詞、呪文詠唱。なんでもいいわ。これから能力を使う、という合図となる言葉ね」
八木カモメ「なんでもいいんですか?」
女神ウヌバス「なんでもいいわよ。例えば『万人が崇拝せし、偉大なる女神ウヌバスよ。矮小なる我が願いを聞き届けたまえ』とか」
八木カモメ「・・・えっ、ちょっと待ってください。長すぎて覚えられなかった。なんですっけ? 『長ネギがスーパーで?』」
女神ウヌバス「全然違うわよ! なに聞いてんのよ!」
八木カモメ「すいません。覚えられないんでペンとメモ貸してもらえますか?」
女神ウヌバス「ああもう、何でもいいわよ! 長くなくても、それらしくなくても、何でもいいから!」
女神ウヌバス「とにかくアンタが覚えられる、好きな言葉にしなさい!」
八木カモメ「言葉だけですか? 動作とかもアリですか?」
女神ウヌバス「だからなんでもいいわよ。 さっさと決めなさい」
八木カモメ「えーっと、それじゃ。 こう右手を胸の前で掲げて」
女神ウヌバス「掲げて?」
八木カモメ「『俺の願い、発動★』」
〇教室
「・・・・・・」
相田英雄「ダセェ」
黒崎検事「信じられないくらいダサい」
八木カモメ「えっマジで?」
相田英雄「いや、ちょっと引くんだけど」
黒崎検事「ない。それはない」
八木カモメ「・・・確かに女神様も凄く引きつった表情で、『もうそれでいいわ』ってオッケーしてもらったんだけど」
相田英雄「ヤギちゃん。それ、見捨てられたんだよ」
黒崎検事「だな」
八木カモメ「えっ、この合言葉、ダメ? えっ、どうしよう。変更とかできるかな、コレ?」
相田英雄「もうそれでいいって」
黒崎検事「実際問題。それで出来そうなのか?」
八木カモメ「うん、大丈夫。 一度、女神様の前で試させてもらったから」
〇異次元空間
女神ウヌバス「それじゃあ試しに、一度ここでやってみなさい」
八木カモメ「ここで使えるんですか?」
女神ウヌバス「なによ、気づいてなかったの? カモメが私の前に戻ってきた時に能力回数を元に戻してあげているのよ」
八木カモメ「そうだったんですか? ・・・あっ、本当だ。 右手の数字が『3』に戻っている」
女神ウヌバス「そういうことだから。 ほらっ、さっさと試してみる」
八木カモメ「分かりました。 ・・・えっと、まずは『俺の願い、発動★』」
ピカッ
八木カモメ「おおっ、手の数字が光り始めた」
女神ウヌバス「能力が使える状態も分かりやすくしたわ。 それで願い事を言えば使えるから」
八木カモメ「分かりやすいですね」
女神ウヌバス「本当にね。なんでこの私がここまで優しくしなきゃいけないのかしら」
八木カモメ「では早速、願い事を」
八木カモメ「『女神様の際どい衣服がさらに際どくなる!』」
女神ウヌバス「・・・へっ?」
パサリ
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