読切(脚本)
〇シンプルな玄関
ザキ「どうも、はじめまして。 ザキと申します。 本日はよろしくお願いいたします」
もん子「よろしくお願いします」
ザキ、彼は人間ではない。兄がプログラミングしたアンドロイドだ。
彼はデパートの催事場用に作られたアンドロイドだ。バレンタインのチョコ売り場に、配属予定らしい。
お客様をキュンとさせ、ウキウキ気分でチョコを購入して頂くプランらしい
彼がちゃんと皆をキュンとさせられるか確かめて欲しいと、兄から頼まれている。
もん子「どうぞ、どうぞ。スリッパも、ご自由にお使いください」
ザキ「おじゃまします」
ザキ「あったかいスリッパですね。 秀吉のふところに、入っていたのかな? 俺の心も君にあっためられたいなあ」
もん子(兄さん、無理です。すぐ、連絡します。このプロジェクトは失敗です)
ザキ「わあ! カレーのいい香りがするね! 僕おなかペコペコだよ! 朝も昼も夜もおやつも、入浴剤も君のカレーでいいなあ!」
もん子(兄さん、あなたは、なんというものをお作りになったのですか)
〇明るいリビング
ザキ「とっても素敵な部屋ですね。座敷わらしになって住みたいくらいです」
ザキ「そして、君を幸せで溺れさせたいよ」
もん子「紅茶かコーヒーはいかがですか?」
ザキ「ぼくね、オレンジジュースがいいなあ!」
ザキ「君はオレンジジュースみたいに100パーセントステキだね!」
もん子「うちのオレンジジュースは、果汁50パーセントですけど、いいですか?」
ザキ「もちろん。残りの50パーセントは僕の愛で埋めるよ」
ザキ「なんだか浮かない顔をしているね? 僕との出会いが恐くなったのかな。 恋する前の鼓動の高まりに──」
もん子「こんなことをあなたに言うのは酷かもしれないけど、普通の話をしませんか?」
ザキ「・・・・・・」
ザキ「・・・・・・」
ザキ「ふ、普通って・・・な、に」
もん子「たとえば、天気の話とか」
ザキ「今日は晴れてるね!」
ザキ「日光を浴びるとセロトニンが作られてハッピーになるよね。ということは、君は僕の太陽だ。アイラブユー」
もん子「愛とか恋とか絡めないで話せませんか?」
ザキ「・・・・・・」
ザキ「・・・・・・」
ザキ「ぴ!」
ザキ「ピ──────────!!」
ザキ「ガコーガコーツんテントん? ”──”!!ミンシャっててぽほんやあー!! ──(『!?』)ナペ」
もん子「やばい! 壊してしまった!?」
もん子「ごめんなさい! 戻ってきて! 愛や恋のお話いっぱい聞かせて!」
ザキ「──」
ザキ「!」
ザキ「?」
ザキ「ほよ」
ザキ「君の瞳の輝きは、天使の持つスプーンのようだ。美しいだけでは済まされない」
もん子(あ! 戻ってきた)
ザキ「いつの間にか雨が降ってるね。 凄い雨音だ」
もん子(なんか、不安げだな。 雨が苦手なのかな?)
〇雷
ピカッ
ザキ「ひっ! カッ雷!」
もん子「雷ですね。 もしかして雷嫌いなんですか?」
ザキ「そうなんです。 光るのも音も恐くて恐くて。 おかしいですよね?」
もん子「そんなことないですよ。 誰だって、苦手なものはあります。 私だって、カメムシが苦手だし」
もん子「雷止むまで、布団被ってていいですよ。 となりで、気が紛れるように、変な話しててもいいですし」
ザキ「うっ」
もん子「大丈夫ですか?」
ザキ「今僕は、雷に打たれました」
もん子「えっ?」
ザキ「今、『キュン』が何か分かりました。 『キュン』は、優しさなのですね」
ザキ「相手を心配する優しい言葉こそが、最高のキュン言葉だと分かりました」
もん子「いや、それだけじゃないと思うけど・・・・・・」
ザキ「本当にありがとうございました」
ザキ「僕はこれから、真の優しさとは何かを探す旅に出ます! それでは、お邪魔しました」
もん子「え? あれ? チョコ売り場は!?」
もん子「どこ行くの? あれ?」
そして彼は姿を消した
数々のキュンの残骸を残して──
もん子(あー 兄さんに怒られちゃうなあー)
ザキ「すみません! 雷恐くて、戻ってきちゃいました!」
もん子(でしょうね! でも良かった!)
ザキ「雷止むまで、となりにいさせてください 僕がその間、すべてのカメムシとあまたの危険からあなたを守ります」
もん子(あれ? なんかいま、キュンときた? かも?)
ザキ「どうしました?」
もん子「心って、不思議ですね。 さっきのキュンとしました」
ザキ「僕も今生まれた気分です。 あなたの声が、世界そのものです」
ザキ「雷が止んでも、ここにいさせてください」
ザキ「あなたのそばで、旅をします。 心模様をたくさん見せて下さい」
もん子(兄さん、テストは合格です でも、 チョコ売り場には配属できません)
配属先は、私のとなりです
────────FIN
いきなり壊れたところ凄く笑いました🤣私は笑わせてくれる人にキュンとしますね。
AIと喋ってる感じが凄くでてるのと、そこから雷を怖がる落差も良かったです!
分かります。
僕も虫を退治してくれる人にキュンとした事ありますもの。
弱味をさらしてくれるところもまたキュンですね。
最後の配属先に、キュンときました!それにしても、お兄さんのプログラミングはすごいですねえ!キュンはどこに落ちているか分からないと、この作品を見て思いました!素敵な物語ありがとうございます!