悪魔が来たりてなんやかんや。(脚本)
〇パチンコ店
ドンッ!
船場 久太郎「なんやねんこの台! 全然出ぇへんやんけ!」
山田 珠子「これこれ、キュータロちゃん。 台に八つ当たりしたらアカンがな」
船場 久太郎「誰が毛ぇ3本のオバケやねん。 オレは”ひさたろう”やて何遍も言うてるやろ」
山田 珠子「せやかてキュータロちゃんのほうが 言いやすいしなぁ」
船場 久太郎「どんな理由やねんな」
山田 珠子「・・・うん?」
船場 久太郎「どないしたん、珠ババァ」
山田 珠子「誰がババァじゃ! ・・・キュータロちゃん、後ろ」
船場 久太郎「え?」
エマ「・・・やっと見つけた」
船場 久太郎「・・・コスプレ?」
山田 珠子「いや、チンドン屋やろ。 駅前に新しいスーパーできとったし」
エマ「はぁ? どこからどう見ても悪魔でしょ!」
船場 久太郎「いや知らんし!」
エマ「まぁいいわ。 あたしはアンタの魂を奪いに来ただけだから」
山田 珠子「ありゃまあ」
船場 久太郎「えっ・・・ オレ、悪魔に取り憑かれてんの?」
エマ(ふふっ、怖がってる怖がってる。 これなら簡単に魂を奪えそうね)
船場 久太郎「ってことは・・・」
船場 久太郎「玉が出ぇへんのは・・・」
船場 久太郎「お前の仕業かーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
エマ「え」
エマ「えええええ!?」
〇神社の本殿
久太郎はエマを近くの神社へ連れ出した。
エマ「ちょ、ちょっと! どこ連れてくのよ!」
船場 久太郎「見たら分かるやろ、お祓いしてもらうんや」
エマ「はぁ? お祓いって──」
船場 久太郎「通りでパチンコ勝たれへん訳や、 悪魔が憑いとるんやから」
エマ「それあたしのせいじゃないから!」
船場 久太郎「ここは厄除けで有名な神社なんや。 お前なんかチャチャッと祓ってパーッや」
エマ「話聞きなさいよ!」
エマ「・・・仕方ないわね」
船場 久太郎「なんや、空気が・・・」
エマ「あんたの動きは封じたわ。 さぁ、大人しくあたしに魂を──」
船場 久太郎「ぶへっくょい! おらぁ!」
エマ「え、ちょっ──」
船場 久太郎「あー、めっちゃ鼻こそばい」
エマ(呪文が効かない!? そんな、普通の人間ならひとたまりもない はずなのに・・・)
???「おーおー、神聖な神社で何しとるんや?」
船場 久太郎「ん?」
ガラの悪い男「こんなとこでオンナにコスプレさせて イチャコラしやがって・・・」
船場 久太郎「お前の知り合い?」
エマ「は? 知らないわよ、こんなヤツ」
ガラの悪い男「おっ、近くで見たらメッチャ可愛いや〜ん。 なぁなぁ、俺と遊ぼうや」
男は馴れ馴れしくエマの手を掴んだ。
エマ「・・・殺す!」
エマは再び呪文を口にした。
ガラの悪い男「うんうん、殺して殺して〜 ・・・ただしベッドの上でやでぇ」
エマ(コイツにも呪文が効かない!? そんな、どうして・・・!?)
船場 久太郎「おいゴルァ! ちょっと待たんかい!」
ガラの悪い男「あ? 何だよ」
船場 久太郎「コイツはオレに取り憑いた悪魔や。 勝手に手出しせんといてもらおか」
ガラの悪い男「はぁ? 悪いけど、お前らの設定に付き合う気は──」
船場 久太郎「パチンコぼろ負け八つ当たりパ〜ンチ!」
ガラの悪い男「いってぇ! まだ喋っとるやろが!」
船場 久太郎「おい、走るぞ!」
エマ「ええっ!?」
久太郎はエマの手を引き、走り出した。
〇ラブホテルの部屋
船場 久太郎「はぁ・・・ あー、ひっさびさにガンダしたわ」
エマ「ここって・・・」
船場 久太郎「親戚のおっちゃんが経営してるホテルや」
船場 久太郎「金無さすぎてなー、今ココ住んでんねん」
エマ「・・・」
船場 久太郎「アカン、膝がわろてる。 ちょっとベッドで横ンなるわ」
エマ「・・・呪文が・・・」
船場 久太郎「え?」
エマ「呪文が使えないんだけど!! っていうか魔力が湧き上がってこないし、 それに、それに・・・」
船場 久太郎「ちょ、お前さっきから何言うて──」
エマ「うわぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」
船場 久太郎「ええっ!? な、なんで泣くん!?」
エマ「うるさい! さっさと魂渡しなさいよ!」
船場 久太郎「いや、そんなん言われても魂の出し方 知らんし・・・ っていうか持っていかれても困るし・・・」
エマ「バカ! 最悪! うわぁぁぁぁぁん!」
船場 久太郎「ちょ、こんなとこで泣くなって── あーもう!」
久太郎は慌てて起き上がり、エマを胸元に
抱き寄せた。
エマ「・・・! やだ、離してよぉ・・・」
船場 久太郎「お前が泣き止んだらな」
エマ「そ、そんなこと・・・ひっく、 言われても・・・うっ、うっ・・・」
船場 久太郎「ゆっくりでええから。 な?」
久太郎の手が、エマの背中をトントンと
優しくさする。
すると、次第にエマは落ち着きを取り戻して・・・
エマ「・・・はぁ」
船場 久太郎「ん、落ち着いたみたいやな」
エマ「こんなことして・・・ あたしに貸しをつくったつもり?」
船場 久太郎「いや、女の子が泣いとったら慰めんのは 当たり前やろ」
エマ「お、女の子?」
船場 久太郎「え、もしかして男──」
エマ「違うから! そーゆーことじゃなくて──」
船場 久太郎「はは、分かってるって。 冗談やん」
エマ「あのねぇ──」
船場 久太郎「ふぁ・・・ 何か眠なってきたなぁ」
エマ「え・・・」
船場 久太郎「ぐー・・・」
エマ「早っ・・・ っていうか、この状態で寝るつもり?」
船場 久太郎「うーん・・・ 悪魔って、意外とぬくいんやなぁ・・・」
エマ「はぁ? ちょ、離して──は、離れない・・・」
船場 久太郎「むにゃむにゃ・・・ 確変・・・きた・・・」
エマ「・・・」
エマ「悪魔を抱いたまま夢を見てるの? 心底バカな男ね」
エマ「・・・?」
エマの耳元に久太郎の鼓動が響く。
そのリズムに耳を傾けていると・・・
エマ(不思議ね・・・ この男から聞こえる音は、なんだかとても 心地が良い・・・)
エマ「・・・ぐぅ」
エマ「はっ! ダメダメ、こんな男につられて 寝てる場合じゃないわ」
船場 久太郎「ん・・・ もうちょいこっち、来ぃ」
エマ「あ、ちょっと──」
船場 久太郎「お前さぁ・・・ 悪魔とか、辞めたら?」
エマ「何よ、命乞いのつもり?」
船場 久太郎「いや・・・ 何か、めっちゃ抱き心地ええから・・・」
船場 久太郎「抱き枕に・・・ 転職したらええと思う・・・」
船場 久太郎「ぐぅ」
エマ「・・・変なヤツ」
かくして、悪魔のエマは
悲しいくらいにギャンブル運がない男、
船場久太郎の魂を奪えるのか──
パチンコ狂いのダメ男と思いきや、徐々に良い面が見えてきて、ラストには可愛くイイ男に思えてきてしまいました。この2人の関係性、見続けたくなりますね!
関西弁で、クズなようでいてその実男らしい主人公とちょっと強気な悪魔ちゃんの組み合わせがとても可愛らしかったです。二人のドタバタ劇がこれから繰り広げられると思うと、ワクワクします!素敵な作品、ありがとうございました!
なんだか読んでてキュンキュンするお話で、こういうの好きです。
彼はなんだかんだで守ってくれるところはかっこいいし、寝てしまうところがかわいいし、なかなか無敵な男のような気がします笑