第6話 『世界救出戦略会議 in ファミレス』(脚本)
〇教室
八木カモメ「おはよう、ヒロ」
相田英雄「ヤギちゃん、昨日も変な夢を見たんだけど、あれって・・・」
八木カモメ「こういうこと」
相田英雄「右手の数字が『3』になっているってことは、女神様、またリセットしてくれたんだ」
八木カモメ「めっちゃ怒られたけどね」
黒崎検事「おい」
八木カモメ「あっ、クロおはよう」
黒崎検事「昨日変な夢を見た。 ヤギが妙な能力で教頭のズラを宇宙まで飛ばし、募金に10万円をぶっこむ夢だ」
黒崎検事「しかし実際には教頭のズラは飛んでいない。 今朝も教頭の頭上で健在だった」
黒崎検事「だが、あの夢の出来事が嘘だったとも思えない。かといってそんなことは無かったという記憶も残っている」
黒崎検事「自分の中に記憶が二重にあるような奇妙な感覚だ」
黒崎検事「この現象はいったいなんだ?」
八木カモメ「実は(かくかくしかじか)」
〇教室
黒崎検事「つまり女神がヤギの願いを回収したことにより、リセットがかかり、全ては俺たちだけが知る夢オチとなった、という訳か」
八木カモメ「そうみたい」
黒崎検事「およそ信じられん話だが、自分の身に起きていることを考えれば、冗談と聞き流す訳にもゆくまい」
黒崎検事「それに超常の存在である女神が、前回のヤギの能力の使い方に不満を感じてやり直させた、というのも頷けるしな」
黒崎検事「世界を救う為に与えた能力を、あんなしょうもないことに使われたら、そりゃ腹も立てるわな」
八木カモメ「ヒロもその原因だったと思うんだけど?」
相田英雄「あのスカート捲りは必要なことだった」
八木カモメ「とにかく、今度はきちんと仲間と相談して使えってきつく言われたよ」
黒崎検事「それが賢明だろうな」
八木カモメ「という訳で、放課後、作戦会議を開こう」
〇ファミリーレストランの店内
相田英雄「やっぱり、ファミレスでくっちゃべる時はドリンクバーとポテト山盛りが基本だよな」
黒崎検事「それでだ、ヤギ。そもそもの話、この後に訪れる脅威というのは、具体的に何なんだ?」
八木カモメ「というと?」
黒崎検事「・・・いや、だから、今後、いったい何が起こって世界は滅亡するのかと聞いている」
黒崎検事「戦争、災害、あるいは宇宙人襲来。 荒唐無稽に大怪獣の出現。 はたまた未知の細菌によるバイオハザード」
黒崎検事「世界を滅亡させる要因というのは幾らでも考えられるが、実際に訪れる危機とはなんなんだ?」
黒崎検事「女神は何に対抗すべく、ヤギに能力を与えたんだ?」
相田英雄「あっ、そういえば、俺も聞いていなかったな。なんなのヤギちゃん」
八木カモメ「・・・・・・」
相田英雄「ゴクリ」
八木カモメ「・・・そういえばなんなんだろう?」
相田英雄「分からないのかよ!」
八木カモメ「もうすぐ起こるって言われたけど、実際になんなのか聞いてない」
相田英雄「聞けよ!」
八木カモメ「つ、次に会った時に聞く」
黒崎検事「その次というのはいつだ? どうやったらヤギは女神に会える?」
八木カモメ「これまでの流れだと、願いを3つ切らしたら強制的に夢の中の女神様の前に瞬間移動させられるから、その時かな?」
八木カモメ「まあ同時に説教されるタイミングでもあるけど」
黒崎検事「こちらからの連絡手段はなく、一方的に面倒事を押し付けられている、といった所か」
相田英雄「ならさ。今回も願い事3つ全部無駄に使えば? そうすれば女神様から勝手に呼び出しがかかるんだし」
八木カモメ「いや、怒られたばっかりだし、流石に今回はきちんと使いたいな」
黒崎検事「・・・現状では世界の脅威について何も分かっていないこと。そして何よりヤギの阿呆さ加減は改めて分かった」
黒崎検事「改めて話の全容を整理すると」
黒崎検事「世界の危機を知った女神は、世界を救うべく、どんな願いでも3つ叶う能力を選ばれし勇者に与えることにした」
黒崎検事「その勇者に抜擢されたのがヤギだった。 ・・・この人選には些か疑問だがな」
相田英雄「まあ、ヤギちゃんはないわな」
八木カモメ「だよね。 ウヌバス様、ちょっと間抜けだよね(笑)」
相田英雄「・・・いや、ヤギちゃん。自分で笑うなって」
黒崎検事「その上で、奇妙に思うことがある。 未だヤギが勇者の座に居座っていることだ」
黒崎検事「この阿呆はすでに二度失敗している。 しかも、脅威がやってくる前に、訳の分からないことで能力を無駄に消費して」
相田英雄「普通はクビにするよな」
黒崎検事「しかし女神は替えようとしない。 普通に考えて、これはおかしい。 考えられる理由があるとすれば・・・」
相田英雄「【世界を救う勇者】という役どころを、ヤギちゃんから変更できない?」
黒崎検事「その可能性が高い」
黒崎検事「女神にとって『カウント3』を使い世界を救う勇者はヤギでなければならない」
黒崎検事「これは女神にとって絶対だ」
黒崎検事「だから、どれだけヤギが阿呆な失敗をしてもやり直しをさせている」
相田英雄「ということは、脅威が解消され世界が救われるまでは、ヤギちゃんが何をやらかしても多めに見てくれる?」
黒崎検事「憶測ではあるが、間違ってはいないと俺は考えている」
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