第5話 『選ばれし勇者の末路』(脚本)
〇黒
──前略、女神ウヌバス様
折角、もう一度チャンスをいただいたにも関わらず、世界を救うはずの能力を、女の子のスカートを捲り、
さらには教頭のズラを吹き飛ばすことに使ってしまいました。
きっとそんな俺では、あと一つの願いで世界を救うことなんて、たぶんできないと思います。
というか、ぶっちゃけ無理です。
なので──
〇駅の出入口
八木カモメ「ひゃっほぅ! さあ今日は俺の奢りだ!」
──全てを諦め、休日遊ぶことにしました。
八木カモメ「さあ。この3つ目の願いで出した軍資金10万円で遊ぶぞ! 全部使ってやるぞ!」
相田英雄「・・・まさかあのヤギちゃんが、こんな行動に走るとは」
八木カモメ「ウリリリリリリィィィィィィィィッ!」
黒崎検事「完全に壊れたな。世界を救う重圧に耐えきれなかったと言った所か」
黒崎検事「ふん。ヤギも所詮はただの高校生だったな」
相田英雄「いや、それを同じ年のクロケンが言うなや」
八木カモメ「二人とも何をコソコソ話してんだよ! さっさと行こうぜ!」
相田英雄「それで? 何をするんだ?」
八木カモメ「まずはボウリングだ! 次に腹ごしらえにファミレスでドカ食い! そこからカラオケ!」
八木カモメ「あっ。だけどその前に我が妹であるツバメちゃんが、前に欲しいと言っていた猫のぬいぐるみを買う!」
黒崎検事「好きにしろ。どうせだ、その惨めな姿を最後まで見届けてやろう」
〇ボウリング場
〇ファミリーレストランの店内
〇雑貨売り場
〇繁華な通り
八木カモメ「よし、ぬいぐるみも買ったし、最後はカラオケだ!」
黒崎検事「というか、まったく金が消費できていないぞ。もっと派手に使ったらどうだ?」
黒崎検事「それだけあるなら多少高い服やアクセサリーでも、なんでも買えるだろう」
八木カモメ「・・・あー。そういうのはいいや。 自分でバイトでもして買うから」
黒崎検事「・・・・・・」
黒崎検事「そうか。まあ別に構わんがな」
募金お願いしまーす
八木カモメ「あれって・・・」
女の子「困っている人たちの為に募金をお願いしまーす」
八木カモメ「おーい、田辺さん」
女の子「あっ、ヤギくん。こんにちは」
相田英雄「あの子、うちの制服だけど、クロケン誰だか知っている?」
黒崎検事「確かA組の田辺だ。 ボランティア部だったと記憶している」
八木カモメ「募金活動?」
田辺「うん、ボランティアの一環でね。 ヤギくんもよかったらお願いできるかな?」
八木カモメ「もちろん」
八木カモメ「・・・・・」
八木カモメ「(チラリ)」
「・・・・・・」
相田英雄「わざわざこっち見なくていいから」
黒崎検事「ヤギが出した金だ。ヤギの好きに使えばいい」
八木カモメ「ありがとう、ヒロ、クロ」
田辺「?」
八木カモメ「じゃあ募金するね。 この箱の中に入れればいいかな?」
田辺「うん、お願い」
八木カモメ「はい、じゃあ、これ全部」
田辺「・・・って、一万円が一杯! えっ、これ全部!」
八木カモメ「全部全部。綺麗に使って」
田辺「本当にいいの!」
八木カモメ「いいの。いいの。 どうせ大した金じゃないからさ」
八木カモメ「それじゃあ、引き続き頑張ってね、田辺さん」
田辺「えっ! あっ! あ、ありがとうね、ヤギくん!」
〇開けた交差点
八木カモメ「二人ともすまん。奢れる金がなくなった」
黒崎検事「別に構わん。貴様に奢られるほど、俺は落ちぶれてはいない」
相田英雄「金がなくても、この面子が揃っていたら、それだけで楽しいしね」
八木カモメ「・・・ありがとう、二人とも」
相田英雄「さて、この後どうするかね。 ヤギちゃん家に行ってゲームでするかね」
黒崎検事「それでいいだろう。金もないしな」
八木カモメ「あっ、ちょっと待ってくれよ、二人とも」
〇異次元空間
女神ウヌバス「・・・・・・」
八木カモメ「おーい、二人とも・・・って、アレ?」
八木カモメ「ここって・・・」
女神ウヌバス「・・・・・・」
八木カモメ「・・・ど、どうもです、ウヌバス様」
謎の猫「にゃーご・・・シュボッ! ・・・熱っ! もう火を噴くのはやめるべきかな・・・」
八木カモメ「って、そのデカい猫って、前回俺が出した猫ですか?」
女神ウヌバス「そうよ」
八木カモメ「え? なんでここにいるんですか?」
女神ウヌバス「忘れたの? カモメが叶えてしまった願い事は、私が回収して管理することになったでしょ」
八木カモメ「そうでした。なるほど、それで・・・」
謎の猫「にゃーご」
八木カモメ「気に入ったんですね」
女神ウヌバス「そんなことよりカモメ。 ・・・アンタ、バカなの?」
女神ウヌバス「いや、バカなのは知ってたけど、筋金入りのバカなの?」
八木カモメ「こ、これには色々と深い事情がありまして・・・」
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