勘弁してよ朝戸さん!

高山殘照

午前10時、打ち合わせ(にならなかった)(脚本)

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高山殘照

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〇おしゃれな居間
朝戸「次の新作 砂のゾンビ というのはどうだろう」
鹿部「砂、ですか」
朝戸「銃弾も素通りするゾンビ これは 怖いんじゃないか」
鹿部「それだけだと ちょっと弱いですね 見た目的に・・・・・・」
鹿部「あ、いっそ 常に燃えてるというのは」
朝戸「燃える砂、か いや燃えた後と考えれば 灰のゾンビという線もあるな」
朝戸「火葬されてなお 襲ってくる灰のゾンビ いいな!」
鹿部「ええ」
朝戸「さすが鹿部(しかべ)さんだ 君が担当になってくれて 本当によかった」
鹿部「んっ」
鹿部「いえ、私はただ 少しでも朝戸(あさと)先生の お力になれれば、それで」
朝戸「でもね 鹿部さんが来てくれてから 執筆がスムーズになったんだ」
鹿部「んんっ」
朝戸「話してるだけで 思ってもみなかった アイディアがポンポン出るし」
鹿部「んんんっ」
朝戸「第一、話してるだけで楽しい」
鹿部「んんんんんんっ!!」
朝戸「どうしたんだい ずいぶん唸ってるけど」
鹿部「いや、あの、その 実は朝ごはん食べてなくてですね お腹なりそうなので」
朝戸「それはダメだ ちょっと席外すよ」
鹿部「・・・・・・」
鹿部(ああ、ダメ! なに、あの人、よすぎる!)
鹿部(超グロホラー書きまくる 売れっ子なのに なんで、あんなにお気遣いの紳士!)
鹿部(ダメダメ、勘違いしちゃ あの人はきっと、誰にだってああなの それはそれで危なっかしいけど)
朝戸「男の手作りで悪いけど よかったら、これ食べて」
鹿部「んーーーーーーーっ!」
鹿部「こ、これ、もしかして先生が」
朝戸「なんか興が乗ってね 余った桜でんぶ使ってたら こうなっちゃった」
鹿部「こうなっちゃい、ましたか」
鹿部(ハート・・・・・・ 朝戸先生が、ハート)
朝戸「もし気持ち悪いなら 別のを」
鹿部「いえいえいえ! 食べます! いただきます!」
朝戸「そう? 嬉しいな」
鹿部(笑顔! 満面の!!)
鹿部「で、ではいただきます」
鹿部「・・・・・・」
鹿部「おいしい! とくにこの卵焼き!」
朝戸「甘い卵焼き、好きなんだ よかった 僕もなんだ」
鹿部(身長180cm超えの男が 卵焼きを甘くする! 卵に、砂糖を入れて、焼く!)
朝戸「なんか膝バシバシ叩いてるけど どうしたの?」
鹿部「いえ、ちょっと虫がいて」
朝戸「この辺、自然が豊かだからね 虫も多いし それに」
朝戸「おっ、来た」
鹿部「え?」
朝戸「いいもの見せてあげる」

〇川のある裏庭
猫「にゃーん」
朝戸「鈴の音がしたと思ったら やっぱりお前か ちっちゃい首輪なのに、よく鳴るなあ」
猫「ぬぁーん」
朝戸「この三毛猫 庭によく来るんだよ 猫、好き?」
鹿部「ええ」
朝戸「僕も」
鹿部(だから! 100点満点の笑顔!)
朝戸「ここを撫でると弱いんだよな ほーら よーしよしよし」
猫「にぃやぁーん」
鹿部「ふ!?」
朝戸「こちょこちょこちょこちょ」
猫「ふす、ふす、ふす、ふす」
朝戸「ぶえーっくしょい!」
朝戸「よしよしよし」
朝戸「ふぇーっくしょん! えーっくしょん!」
鹿部(もう、ダメ、限界)

〇おしゃれな居間
鹿部「まず 内部に吸音材を詰めた お手製の防音袋を用意します」
鹿部「そしてごく自然に 顔を深く突っ込みます」

〇黒背景
  頭が完全に入ったら
  叫びます
  なーにーあーれー!
  屈託なく
  猫とじゃれてるんですけどー!
  しかも明らかに
  猫アレルギーなのに
  無理やり遊んでるんですけどー!
  私もいるんですけど
  無防備なんですけど
  これ以上至近距離で
  朝戸先生浴びたら
  心の臓が止まるんですけどー!

〇おしゃれな居間
朝戸「鹿部さん、鹿部さん!」
鹿部「ふぇっ?」
朝戸「どうしたんだい そんな袋に 顔入れたりなんかして」
鹿部「いえ、ちょっと 色々、限界で」
朝戸「吐きそうなの? もう少し、我慢できる?」
鹿部「とりあえず ご迷惑かけるので 離れていただいて」
朝戸「気にしないで」
朝戸「よいしょっ」
鹿部(え、これって、私、今)
鹿部「『お姫様だっこ』されてる?」
朝戸「それで、ここからどうしよう」

〇簡素な一人部屋
朝戸「ベッドに寝かせて・・・・・・ いや男の部屋でそれは マズいだろ」

〇家の廊下
朝戸「他にどこか 横になれるところは・・・・・・」

〇古風な和室(小物無し)
朝戸「うん、和室なら、いいな」
鹿部(わー、朝戸先生 抱っこしたまま歩き回れるなんて 力強いなー)
鹿部(そうじゃなくて この状況、なに? 夢?)
朝戸「ねえ」
鹿部「はい!?」
朝戸「僕にできることなら なんでもいって」
鹿部(顔が)
朝戸「なんでもしてあげるから、さ」
鹿部「顔がよくて、とても近い!」
鹿部「も」
朝戸「も?」
鹿部「も・・・・・・」

〇空
  もう勘弁してー!

コメント

  • どんなにキュンキュンしても反応する訳にはいかない担当編集の立場が面白かったです♥️

  • あ、おもしろい。爆速列車で運ばれ、最後の叫びがエコー、または、字が岩になって飛び出しそうな印象でした。
    感謝。

  • 鹿部さんの反応が読者の心の内を代弁しているようで、とても面白かったです!また、それに気づいていない作家先生の行動の一つ一つにキュンときました。素敵な作品ありがとうございました!

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