第3話 『世界を救う為に必要な、とても重要な証明』(脚本)
〇異次元空間
女神ウヌバス「あのね、カモメ」
女神ウヌバス「私はさ。与えた能力を使って世界を救えって言ったのよ」
女神ウヌバス「それなのに、なんでアンタはその能力で、『空飛ぶ謎の猫を出して』、『学校を隕石で吹っ飛ばして』」
女神ウヌバス「そして最後に『隕石で吹っ飛んだモノを元に戻して』いるのかしら?」
八木カモメ「いやでも、隕石で吹っ飛ばした学校とかをあのままにしておく、って訳にはいかないじゃないですか」
女神ウヌバス「そういうこと言ってんじゃないわよ! そもそも吹っ飛ばすなって言ってんのよ!」
八木カモメ「ですよね~」
女神ウヌバス「ホント、アンタなんなの! 脈絡なさすぎ!」
女神ウヌバス「予測できなさすぎ! というかなんでもアリか!」
女神ウヌバス「カモメ。アンタ想像以上よ、まったく」
八木カモメ「えーっ、ということはやっぱり世界を救う勇者はクビでしょうか?」
女神ウヌバス「なによ。続けたいの?」
八木カモメ「いや、正直やりたくはないんですけど、このまま何もしなければ世界が滅ぶみたいですし」
八木カモメ「できればもう一回チャンスを貰えないかなと」
女神ウヌバス「あの体たらくで?」
八木カモメ「いや、他にやってくれる誰かがいるならいんですけど・・・俺以外に候補の人とか、いたりします?」
女神ウヌバス「今の所、アンタ以外に力を与えるつもりはないわ」
八木カモメ「えっ! それってヤバくないっすか!」
八木カモメ「だってこれから世界を襲う脅威って、なんか相当ヤバイんですよね!?」
女神ウヌバス「そうね。『カウント3』が無かったら、まず太刀打ちできないわね」
八木カモメ「ならダメじゃないっすか! 俺がやらなかったら世界滅亡じゃないですか!」
女神ウヌバス「まあそうなるわね」
八木カモメ「それは困ります! 流石に困ります! すいません!」
八木カモメ「マジでお願いします! もう一回チャンス下さい!」
女神ウヌバス「・・・・・・」
八木カモメ「お願いします! 神秘的でとっても美人の女神ウヌバス様!」
女神ウヌバス「・・・・・・」
女神ウヌバス「まあいいわ。 私も別に世界を滅ぼしたいわけじゃないしね」
女神ウヌバス「仕方がないから、もう一度だけチャンスをあげる」
八木カモメ「あざーす!」
女神ウヌバス「とりあえず、カモメが叶えてしまった願いは、私が回収して管理しておくから」
八木カモメ「? えっとそれってどういう・・・」
女神ウヌバス「カモメがしでかした尻ぬぐいをしてあげるって言ってんのよ。文句ある?」
八木カモメ「ありません! それでお願いします!」
女神ウヌバス「分かりました。その願い、叶えましょう」
ピカッ
女神ウヌバス「いいこと? 次はしっかりやりなさいよ」
八木カモメ「御意!」
女神ウヌバス「あと今後も私のことはきちんと敬うように」
八木カモメ「了解です! 際どい恰好の女神ウヌバス様!」
女神ウヌバス「際どくない! 神秘的!」
〇学生の一人部屋
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「・・・朝か」
ゴソゴソ
八木カモメ「日付は翌日か」
八木カモメ「・・・あー、とりあえず昨日の事を思い出せ、思い出せ」
八木カモメ「えっと、まず最初に女神ウヌバス様の夢を見て能力を授かった」
八木カモメ「そのあと、空飛ぶ謎の猫が出現して、隕石で学校が吹き飛んで、それを元に戻したまでは覚えている」
八木カモメ「問題はその後だ」
八木カモメ「3つ目の願いを叶えたら、いつの間にかウヌバス様の前にいた」
八木カモメ「そしてメッチャ怒られて、なんとかもう1回チャンスをもらった」
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「俺の感覚では時間がすっ飛んだようにも思える」
八木カモメ「だけどその一方で、昨日、学校に行った記憶も授業中にずっと寝ていた記憶もある」
八木カモメ「これってどういうことだ?」
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「考えても分からん。とりあえず支度をするか」
ガチャリ
八木ツバメ「うわっ! あのお兄ちゃんが一人で起きている、だと!」
〇川に架かる橋
相田英雄「おいっす、ヤギちゃん」
八木カモメ「おはよう、ヒロ」
相田英雄「・・・・・・」
八木カモメ「・・・・・・」
相田英雄「実はさ、変な夢を見たんだよ」
相田英雄「ヤギちゃんから美人の女神に世界を救う能力を貰ったって言われて、その願い事で隕石がウチの高校を吹き飛ばすって夢」
八木カモメ「夢じゃない。 俺もその記憶があるからマジだと思う」
相田英雄「その手の数字! やっぱりアレって現実だったの!」
八木カモメ「だけど覚えているの俺たちだけみたいだ。 家族に聞いても昨日のことは誰も覚えていないんだよね」
相田英雄「俺も確認したけど同じだった。 それだけじゃなくて俺自身、昨日、学校で普通に授業を受けた記憶もある」
相田英雄「つまり昨日のあの出来事を、夢として覚えているのはヤギちゃんとオレだけ、ってこと?」
八木カモメ「そうみたいだね。 たぶん女神様がそうしてくれたんだと思う」
相田英雄「女神様にまた会ったの!?」
八木カモメ「うん。また夢に出てきた」
相田英雄「その・・・女神様なんて?」
八木カモメ「メッチャ怒られたけど、もう1回チャンスをあげる、って許してもらった」
八木カモメ「そんで失敗した願いは回収してくれるって」
相田英雄「回収?」
八木カモメ「たぶん、昨日叶えた願い、それ事態をなかったことにしてくれたんだと思う」
相田英雄「なるほどな」
相田英雄「つまり今のこの状況は、昨日の願いがリセットされて、願いが発動しなかった状態ってことか」
相田英雄「ただその失敗の記憶を、俺たちだけが覚えている」
八木カモメ「感覚的には夢オチって感じだよね」
相田英雄「正直、女神様の粋な計らいに助けられたけど」
相田英雄「・・・そうなるとやっぱり・・・この話って本当なの?」
八木カモメ「本当だろうね」
相田英雄「・・・・・・」
相田英雄「ねぇ、ヤギちゃん。 今からもう一回、願い事を使ってみない?」
八木カモメ「いや、もう学校を隕石で吹き飛ばすのは止めよう。アレは誰も幸せにならない」
相田英雄「違うって! 俺だってあんなのはもうたくさんだ!」
相田英雄「そうじゃなくて能力が本当か、もう一回だけ何かで試そうってこと!」
相田英雄「ちょっとしたことでいいから! 隕石とか、ああいう大掛かりなのはなしで!」
八木カモメ「えーっ、マジで?」
相田英雄「使ってくれたら信じる! 全面的に信じる!」
相田英雄「そしてこの件に関して、俺は全力でヤギちゃんに協力する!」
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「・・・確かに、俺もまだ半信半疑だし。 ヒロがそこまで言うなら」
相田英雄「よし、そうと決まれば、あちらを御覧ください!」
八木カモメ「あちらって、前を歩いている清楚系の女の子のこと? あれって近くの女子高の制服だよね」
相田英雄「今からその力で、あの子のスカートを捲ってみよう」
八木カモメ「ちょっと待て! そんなことするの!」
相田英雄「だって、見たいだろ、ヤギちゃん!」
八木カモメ「そりゃ見たいよ! だって男の子だもん!」
相田英雄「ならやろう! その能力を発揮しよう!」
八木カモメ「いやでもコレ、世界を救う為の力だよ!」
相田英雄「馬鹿野郎! 女の子のスカートも捲れないヤツが世界を救えるわけねぇだろ!」
八木カモメ「どういう理屈だよ!」
相田英雄「いいかヤギちゃん。目的はあくまで確認だ」
相田英雄「俺たちの中にある昨日の記憶は本当なのか? 何よりその能力は本物なのか?」
相田英雄「それが証明された時、すなわち本当に世界に危機が迫っている、ということになる」
八木カモメ「・・・・・・」
相田英雄「この証明には意義がある」
相田英雄「最早、あの子のスカートを捲ることに世界の命運が掛かっていると言っても過言ではない」
八木カモメ「・・・・・・」
八木カモメ「・・・確かに、ヒロの言うとおりだ」
相田英雄「分かってくれたか、ヤギちゃん! では早速、お願いします!」
八木カモメ「いくぞ! 『あの子のスカートをフワッとさせたい!』」
ピカッ
相田英雄「光った! ヤギちゃんが光った!」
ぴゅうううっーーーー!
相田英雄「そして突然の突風が!」
キャー
「・・・・・・」
相田英雄「見えたか、ヤギちゃん」
八木カモメ「見えたよ、ヒロ」
相田英雄「黒だったな。まさかの」
八木カモメ「しかもヒラヒラの付いてた攻撃的なタイプだった」
相田英雄「清楚系女子なのにね」
八木カモメ「そのギャップに凄くグッとキタな」
「・・・・・・」
相田英雄「よかったな、ヤギちゃん」
八木カモメ「ああ、よかったよ、ヒロ」
「・・・・・・」
相田英雄「なんにしても証明された訳だ。 その『カウント3』の能力は本物ってことが」
八木カモメ「そして、本当に世界に危機が近づいているということだ」
「・・・・・・」
相田英雄「マジかぁ~」
八木カモメ「ヤッベェな~」
〇黒
リセット完了。
──残りカウント2
To be continued