エピソード1(脚本)
〇大学の広場
六助「おーい! ちずー!」
来た
ヤバいヤツが来た
私は何も聞いていない
そう念じて大学の校舎に向かった
六助「ひどいな、ちず無視なんて」
六助「昨日はあんなに激しかったのに」
ちず「はぁ!?」
ちず「周りが誤解するようなことを言うな!」
ちず「歯茎ちぎるぞ」
六助「誤解じゃない 本当だよ」
六助「昨日、ちずが俺の夢に出てきたんだ」
六助「そして、飢えた吸血の民である俺に──」
六助「血と愛を分け与えてくれた」
六助「あの温もりを俺は忘れない」
六助「いつかこの牙が人を襲うことになっても」
ちず「はいはい、ワロスワロス」
六助「ちょっと置いてかないでぇ~」
六助「幼馴染じゃん」
ちず「友達でいたいなら その中二病を2秒以内にどうにかして」
ちず「高校まではまだ我慢したけど 私たちもう大学生だよ?」
六助「闇夜の王としては・・・」
ちず「そういうやつ!」
六助「昨日はあんなに濃密な夜を過ごしたのに」
ちず「吐きそうなんだけど」
六助「吐くほどうれしいんだね」
ちず「デスノート落ちてないかな~」
六助「探し物? 俺も探そうか?」
ちず「じゃ、お願い」
六助「頼まれた!」
六助「・・・」
六助「デスノート何に使うんだろな!?」
〇講義室
六助「ちず・・・」
ちず「なに?」
六助「ごめん 一冊しか見つけられなかった」
ちず「マジでデスノートじゃん」
ちず(一冊でもすごすぎるんだけど・・・)
ちず「なくさないよう 自分の名前でも書いておけば?」
六助「さすがちず、あったまいいー!」
六助「あれ? それって俺死んじゃうんじゃ?」
六助「死、か── 腐り、朽ち果てた肉体に縋る亡者も──」
ちず「それより見て」
六助「はい」
ちず「右京君・・・」
ちず「かっこよくない?」
私は右京君の横顔を指さした
六助「俺のような漆黒を纏えば、 多少闇の住人に見えないこともないが」
ちず「貴様に聞いた私が愚かだった」
六助「愚かな君も好きだ」
ちず「好きならまず愚かを否定しろよ」
ちず「釘刺しておくけど──」
ちず「邪魔すんなよ」
六助「闇夜の王の名に賭けて、 君を悲しませることはしない」
〇警察署の食堂
ちず「あ、あの・・・」
右京「何だい?」
六助「ちずに近づくな」
ちず「・・・」
六助「貴様・・・ まさか貴様も闇の眷属か?」
右京「ははっ 君たちおもしろいね」
ちず(君たちって・・・ 私も入ってるんですけどー)
ちず(六助、後で覚えてろよ)
六助「ちずに近づくな 約束しろ」
右京「ははっ 仲良いね」
右京「ちょっと君たちに興味わいたけど 友達には・・・」
六助「・・・」
右京「なれそうにないね」
ちず「・・・」
ちず「六助 あなたが私にまとわりつかないで」
六助「俺は君が心配で・・・」
ちず(ちょっとおかしなヤツだと思ってたけど)
ちず(まさかここまでとはねぇ)
六助「待って! ちず!」
ちず「近寄らないで!」
六助「あ・・・」
六助「・・・その・・・」
私は最後まで聞かずにその場を後にした
〇講義室
モブ子「ねぇ、最近 六助くんずっと休んでるよね?」
モブ美「もしかして狙ってるの?」
モブ子「だってカッコイイじゃん」
モブ美「顔だけでしょ 話したら子供っぽくて驚いたし」
モブ子「そこがいいんだって」
ちず(言い過ぎたかな・・・)
ちず(あいつ私と出会ったときも ああだったな・・・)
ちず(小さな頃からあんなんだから イジめられてさ)
ちず「・・・」
ちず「先生、体調が悪いので 早退させてください」
〇空き地
ちず「あれ?」
ちず「右京君?」
右京「奇遇だね サボり?」
ちず「えと・・・ そんなところです」
右京「それじゃあさ 遊びに行こうよ」
ちず「え?」
右京「嫌かな?」
ちず(嫌じゃない)
ちず(嫌じゃないけど・・・ 何であいつの顔が浮かぶの?)
ちず「私・・・ あいつに会わないといけないので」
右京「待って」
右京「逃さないよ」
ちず「え?」
右京「君・・・ 自覚ないだろうけど」
右京「すごくおいしそうな血をしてるよ」
右京「香りだけで天にも昇りそうだよ」
ちず「何を言って・・・」
右京「六助君だっけ? よく耐えてるよね」
ちず「意味が・・・」
話している間に
右京君の体に異変が起こった
ちず(筋肉が盛り上がって・・・ それに・・・)
ちず「牙?」
ちず「目も赤い・・・」
右京「吸血鬼・・・」
右京「そう言えば分かるかな?」
ちず「まさかそんなものが・・・」
後ずさったお陰で当たらなかった
でも、私が立っていた地面には
大きな爪痕が残っていた
右京「君、運がいいね」
右京「でも、運だけじゃ ここまでだ」
ちず「六・・・」
ちず(いや、ダメだ! あんな酷いこと言ったのに!)
ちず(都合よく助けを求めるなんて!)
右京「じゃ、いただきます」
〇空き地
六助「待て」
ちず「六助!」
六助「言っただろう ちずに近づくな、と」
右京「君も吸血鬼なんだろ? 一緒に吸うかい?」
六助「俺は人の血は吸わない」
六助「ちずが好きだから」
六助「人とともに生きる」
右京「はははっ」
右京「吸血一族だったら爵位は知ってるよね?」
右京「吸血鬼の強さは爵位で決まる」
右京「僕は公爵」
右京「日本じゃ僕に勝てる人間なんて──」
右京「え?」
右京君は何故か倒れた
六助「殺気だけで倒れたか」
六助「俺に爵位はない」
六助「吸血鬼の王だからな」
ちず「・・・」
ちず「まさかこれまで言ってきたことって・・・」
ちず「中二病とかじゃなく本当のこと?」
六助「そだよ!」
六助「昨日、俺とちずは濃厚な夜を過ごした それも事実だ」
六助「いだッ!」
ちず「小さく折りたたむぞ」
六助「女の子がそういうこと言わない!」
ちず「その・・・六助」
六助「何?」
ちず「助けてくれてありがとう」
ちず「それから、ごめんなさい」
ちず「私のこと本気で心配してくれてたのに 疑ってたわ」
六助「何のこと?」
ちず「そういう気・・・ つかえるようになったんだね」
六助「ガチで忘れた ははははっ!!」
ちず「いや、だって、 ここ最近休んでたし・・・」
六助「風邪引いたってメッセージ、 ちずにも送ったと思うけど」
ちず「はぁ・・・ 思い出したよ」
ちず「六助が真面目で 嘘つけない性格だって」
ちず(あれ?)
ちず(でもそしたら・・・ こいつさっきから・・・)
ちず「まさか私のこと本気で・・・」
六助「好きだよ」
ちず「はは・・・」
ちず「困ったな 全然ときめかない」
六助「ちずは嘘つきだけど 体は正直だよね」
六助「顔に出ちゃってるぞ」
ちず「今の言い方史上最悪に 気持ち悪かったんだけど・・・」
ちず「貴様は本当に私のことが好きなのか?」
六助「今すぐかぶりついて チューチューしたいくらいには好きだね」
ちず「冗談に聞こえないっての」
おわり
ヒロインと六助くんの軽妙なやりとりが非常にツボでした!
幼馴染っていう関係性良いですよね!六助くんの一途さが伝わり、とてもキュンとしました!
素敵な作品ありがとうございました!
えー!まさかの終盤バトルが始まるなんて...!六助君、良いやつすぎる...すごく面白かったです!
右京くんもヴァンパイアだったとは気が付きませんでした!
ヴァンパイアってクールで妖艶なイメージで描かれる事も多いと思いますが、一緒に居ると元気を貰えるような素直で懐っこいヴァンパイアも素敵だなと思いました。