エピソード6(脚本)
〇田舎の役場
〇役場の会議室
奥谷百合「ダメダメダメー、どれもありきたり。 何かパッとしたのないのー?」
佐々木「何か怖い」
桃井太郎「真剣に考えてくれているんですよ」
奥谷百合「そうよ、私ここで結果出さないといけないの、真剣なの!」
奥谷百合「そうすればきっと・・・」
奥谷百合「とにかく呼ぶわよ。 観光客、増やすわよ!」
「おー」
奥谷百合「特別な風習とか行事とかは?」
桃井太郎「風習、行事・・・うーん」
奥谷百合「ねぇ、このホワイトボード、何で祠祭りにバツしてるの?」
奥谷百合「祭とかだったら絵になるし、人呼びやすいんだけど」
桃井太郎「あっ、これは・・・」
奥谷百合「何? どういう事?」
桃井太郎「駄目です。これだけは!」
他の職員たちも、「んだんだ」と桃井に同意する。
奥谷百合「だから、何なのよ?!」
佐々木「まあまあ、今日は温泉にでも入ってゆっくりしてください」
桃井太郎「そうですね、案内します」
〇バスの中
運転席の田中、ミラーで車内の後方をチラチラと見ている。
田中次郎(乗ってる、乗ってる)
〇バスの中
桃井太郎(リリーさんと並んで座ってる〜。 携帯を見る横顔も美しい〜)
スマホを操作している百合。
奥谷百合「・・・何この視線」
桃井太郎「はっ、えーっと」
奥谷百合「・・・今日行くところについては、村の存在を知ってもらうためにツイットナーで所々呟いておくわね」
桃井太郎「ありがとうございます!」
奥谷百合「あなたの、為じゃないから」
桃井太郎「そうですよね・・・」
奥谷百合「ルミト君、見てくれてるかなー」
桃井太郎「見てる、でしょうね」
窓の外を眺める百合。外には谷や川が広がっている。
路肩を一人のおばあさんが歩いている。
彼女の近くで、停車するバス。
奥谷百合「バス停?」
桃井太郎「えっとー」
田中次郎「えー、今からトメ婆ちゃんが乗ると思うので、少々お待ちください」
奥谷百合「乗ると、思う・・・?」
桃井太郎「本数少ないから、待ってあげたり、バス停じゃない所でも乗ったり下りたり出来るんです」
奥谷百合「ふーん、そうなんだー」
バスに乗り込んでくるおばあさん。
とめ「あんれ、まー」
おばあさんに駆け寄り、野菜をカゴに詰める桃井。
桃井太郎「とめ婆ちゃん、いっぱい取れたな。 ほいほい、はい全部入った」
桃井太郎「ほれ、ここさ座れ」
おばあさんの籠を席まで運ぶ桃井。
とめ「婆さんとこのタロちゃんかー、優しか子じゃね。もう一人の孫とは大違いじゃ」
桃井太郎(!? なんでそれを)
奥谷百合「もう一人の孫って、ルミト君?」
とめ「家の孫のお婿さんにしたいわー。 まだ小学生じゃけーどな、わっはっは」
車内に笑いが起こる。
桃井太郎「・・・・・・」
席に戻る桃井。
奥谷百合「さっきの、ルミト君の事? なんか印象悪いの?」
桃井太郎「そんな事はないと思うんですけど・・・」
〇バスの中
田中次郎「クック・・・」
運転席の田中、ミラー越しに桃井と百合を見ながらニヤリと笑う。
〇田舎駅の駐車場
田中次郎「あーもしもし」
田中次郎「俺だ。ああ、作戦はうまくいった——」
桃井太郎「さっきのとめ婆のアレ。 何ですか?」
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