ようこそ僕の村へ

白井涼子

エピソード7(脚本)

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白井涼子

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〇小さい滝
  滝の前にやってきた桃井と百合。
  百合は目の前を流れる滝をしげしげと眺めている。
奥谷百合「しょぼっ」
奥谷百合「まあ写真なら盛れるわよね。 取り敢えず、自撮りっと・・・」
桃井太郎「リリーさん、キャラが・・・」
  スマホに打ち込みを始める百合。
  すると、桃井のスマホに通知の音がする。
桃井太郎「!」
  『ルミト君、龍神滝に来たよ。素敵な場所だね。ルミト君が育った所に来てると思うと感動』
奥谷百合「むふふ」
桃井太郎「・・・裏と表があり過ぎる」
奥谷百合「こんなもんでいいかしらっと。 ツイットナーに・・・はい、投稿完了」
桃井太郎「ははっ、ありがとうございます」
奥谷百合「ねえ、あそこ何?」
桃井太郎「あそこは・・・」
「うわあぁぁぁぁぁん」
奥谷百合「何かしら?」
桃井太郎「えっ、何? あれは・・・」
  ブーッブー・・・
  桃井のスマホに通知が来る。
  差出人には、田中二郎の名前。
  『迷子の子供を救出せよ!』
桃井太郎「はっ?」
悠斗「えーん、えーん」
奥谷百合「どうしたの?」
桃井太郎「救出って、何? どういうこと?」
  再び田中からメールが届く。
  『悠斗が迷子のふりをする。かっこよく解決せよ。母親は駐車場だ!』
  そのとき、山道の上でガサガサと音がする。
  振り向く桃井。
桃井太郎(田中さんに、遊造さんまで!?)
悠斗「えーん、えーん。 太郎お兄ちゃーん」
桃井太郎「子供嫌いなのに〜・・・」
桃井太郎「悠斗君。どうした? お母さんは?」
悠斗「はぐれちゃった。 えーん、太郎お兄ちゃーん」
桃井太郎「うっ」
  桃井に抱きつく悠斗。
  桃井はちょっと嫌そうな顔をする。
奥谷百合「懐かれてるわね」
桃井太郎「そうみたいですね。 いやー、まいったなーははっ」
悠斗「子供が少ないこの村では・・・遊び相手に、いつも困ります。そんな時・・・そんな時、えっと・・・」
「?」
桃井太郎「?!」
悠斗「そんな時、太郎お兄ちゃんが昔の遊びを教えてくれたり、時には宿題を手伝ってくれたり・・・くれたりです」
奥谷百合「・・・うん、随分ご丁寧な、説明的な」
桃井太郎「はっはは。この子いつもこんな感じで大人っぽいんですよ」
奥谷百合「しっかりしてそうだけどね。 でも迷子なのね」
桃井太郎「こっちには降りてきてないから駐車場の方かなー。行ってみようか?」
  悠斗の手をとり、歩き出す桃井。
悠斗「ありがとー。 太郎お兄ちゃん、本当に優しいなー」
  歩き始めた悠斗、桃井の足を踏みつける。
桃井太郎「痛っ、足わざと踏んだな」
奥谷百合「どうしたの?」
桃井太郎「いえいえ何でも、大丈夫です。 上行ってみましょう」
奥谷百合「? そう・・・ね」

〇山道
「・・・・・・」
運野遊造「来たぞ」
運野遊造「どうした? 悠人、一人か?」
悠斗「ううん。お兄ちゃんと、お姉ちゃんが」
桃井太郎「お母さんとはぐれちゃったようで」
田中次郎「そっか。じゃああっちの駐車場の方かな。 こっちにはいないぞ」
桃井太郎「行ってみます」
奥谷百合「そうね、行ってみましょう」
田中次郎「あっ、リリーさんは大丈夫。後はタロちゃんに任せよう、なっ」
運野遊造「ああ・・・あっ、そうだ!」
運野遊造「流石タロちゃん、優しいな〜」
田中次郎「おっおう。子供、大好きだからなー。 放っておけなかったんだろうなぁ・・・」
「・・・・・・」
奥谷百合「?」
奥谷百合「・・・私に言ってます?」
「いやいやいや」
運野遊造「まさか、なあ?」
田中次郎「んだ・・・」
田中次郎「滝! 滝どうでしたか?」
奥谷百合「えっ? ああ、まあ、まあ素敵な所でしたわ」
運野遊造「まあまあでしたか」
奥谷百合「違います」
奥谷百合「今のは「まあまあ」じゃなくて、まあ、まあって感嘆符を二回連続で入れただけです!」
運野遊造「そうそう、さっきの、タロちゃんですがね」
奥谷百合「?」
運野遊造「優しい以外にもいいとこが沢山あって、ほらっ、えっと」
田中次郎「えっ、俺!?」
田中次郎「タロちゃんの良いところ・・・田舎生まれの田舎育ち! 純情だ」
奥谷百合「あなたも? あなたも田舎生まれの田舎育ち?」
田中次郎「・・・んだ」
奥谷百合「やっだー、純情に見えなーい」
田中次郎「何!?」

〇田舎駅の駐車場
マリア「フン、フフン、フーン♪」
  車のボンネットに寄りかかりゲームをしているマリア。
悠斗「ママー!」
桃井太郎「マリアさん」
  悠斗、桃井と繋いでいた手を思いっきり振りほどくと、マリアの元へ駆けていく。
桃井太郎「・・・っ!」
マリア「おカエリー」
悠斗「おっちゃん達の考えた台詞、子供っぽくなくて疑われたよー。僕の演技は完璧だったけどね」
桃井太郎「台詞忘れて手のひら見たけどね」
悠斗「言うなよー! やな奴!」
  お互いに、あっかんべーをする桃井と悠斗。
マリア「オーシット!」
  ゲームの画面から顔を上げるマリア。
マリア「死んじゃったよ、タロちゃん。 ドウシテクレル?」
桃井太郎「僕のせいですかー」
マリア「ンナ訳ないネ。冗談ダヨ。それより良い小遣い稼ぎがデキタヨ、アリガトネ」
桃井太郎「小遣い?」
悠斗「ふふっ」
  悠斗、ポケットをまさぐる。
悠斗「田中のおっちゃんが、バイト代出すからすぐに滝に来いって」
桃井太郎「アルバイトだったんだ・・・」
  ——パシャッ
桃井太郎「ん、何だ今の音?」
桃井太郎「誰かいたような・・・」

〇スナック
桃井太郎「子供にお金渡して嘘までつかせるなんて」
田中次郎「いーだろ。そのお陰でタロちゃんの印象はちょっと良くなったかもだろ」
桃井太郎「どうなんですかねー」
田中次郎「それに総監督は・・・」
桃井太郎「爺ちゃん!?」
桃井繁蔵「わしゃ、あの子が良い」
桃井太郎「は?」
桃井繁蔵「太郎のお嫁ちゃんには、あの子が良い」
桃井太郎「お嫁ちゃんて。リリーさんはそう言うつもりで呼んだんじゃないよ」
桃井太郎「それに、ルミト君に夢中だし・・・」
桃井繁蔵「ルミトなんておらんじゃろ!」
桃井繁蔵「全く、訳の分からぬ人物を作り出しおって。 何がハーフじゃ。何がルミトじゃ」

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