あの日、あの人と交差する

kukuri

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〇東急ハンズ渋谷店
  勤務を終えた透子。
透子「今日は、おススメした商品をお客様が買ってくれて嬉しかったなあ」
透子「あの新作の手帳、私も発売日に買ってすごく使い心地がいいんだよね」

〇渋谷のスクランブル交差点
透子「よし、今日も一日がんばった。何を食べようかな〜・・・」
  ドンッ!!
透子「あっ!!」
透子「(ぶつかっちゃった・・・) すっ、すみません。お怪我は・・・」
右京「大丈夫です、こちらこそすみません」
透子(えっ・・・歌い手のNeuくん!?)
右京「あの・・・どうかしました?」
透子「えっと・・・」
  そのとき、なにかもやのようなものに包まれ、景色が一変した。

〇渋谷のスクランブル交差点
  ドンッ!!
透子「わっ・・・すみません!」
  透子のカバンからペンやノートが飛び出している。
透子(どうしよう、カバンちゃんとしまってなかったんだ・・・)
透子(うわーん、早くしないと信号変わっちゃうよ・・・)
右京「・・・大丈夫?」
「よいしょっと・・・」
  かがみこみ、拾うのを手伝う右京。
右京「・・・はい。これで全部かな」
透子「ありがとうございます・・・!!」
右京「ううん、ぶつかってごめんね」
右京「あっ、信号が。 ・・・じゃあ!」
透子「あっ・・・」
  透子の行き先とは反対側に走っていってしまった右京。
  もっときちんとお礼を言いたかったが、信号が点滅しているのを見て、透子も急いで交差点を渡った。

〇渋谷のスクランブル交差点
透子(えっ、今の・・・何!?)
右京「・・・」
  右京も驚いて透子を見ている。
透子「あ、あの・・・」
右京「・・・もしかして、君も今、何か見てた?」
  頷く透子。
右京「あのさ・・・」
右京「あ、信号が・・・」
右京「・・・」
右京「君、もう帰らなきゃいけない?」
透子「えっと・・・まだ余裕はありますけど・・・ (えっ、これってお誘いかな!?)」
右京「なら、こっち来て!!」
  透子の手を引いて、駅と反対側に向かう右京。
透子(わわっ・・・!?)

〇レトロ喫茶
  コーヒーを飲む右京。
透子「・・・あの、すごくおしゃれなお店知ってるんですね」
右京「え? ああ、うん」
右京「いいでしょ、この店」
右京(まずいな・・・むりやり連れてきたけど、どうしていいのかわからない・・・)
透子「あ、あの・・・」
右京「ん?」
透子「こんなこと言ったらもう解散になっちゃうかもしれないんですけど・・・ Neuさんですよね・・・?」
右京「・・・!」
右京「・・・知ってくれてるんだ、僕のこと」
透子「はい、高校生のころから応援してて。初期の頃から、ずっとファンなんです」
右京「そうなんだ。嬉しいな・・・」
透子(よかった、引かれなかった・・・)
透子「あ、あの、それで・・・さっきのことなんですけど・・・」
右京「ああ、うん・・・ ・・・僕たち、一瞬、昔に戻ったよね?」
透子「(頷く)」
右京「・・・覚えてる。7年前。交差点でカバンの中身ばらまいちゃった子、君だよね」
透子「すみません、ご迷惑を・・・」
右京「・・・ううん。実は僕、君のおかげでここまで来れたんだ」
透子「えっ!?」
右京「あの頃の僕も知ってるんだよね? ほら、まだ全然有名じゃなかったでしょ。 それが・・・」
右京「『交差点でぶつかったあの子』、っていうオリジナル曲で、人気が出始めてさ」
透子「はい、すごく素敵な曲でした」
右京「あれは・・・君のことを歌ったんだよね」
透子「・・・!!」
透子「・・・そんなことが・・・」
  沈黙が訪れる。
  
  2人がコーヒーを飲む音と、オシャレな店内BGMだけが響いていた。
透子「・・・」
透子「・・・私、あそこの歌詞がすごく好きなんです」
透子「『ばらばらに歩く無数の人・・・』」
右京「『・・・二度もぶつかるなんて それは奇跡だ』」
右京「・・・ね?」
  その後、終電の時間まで、二人はカフェでの会話に花を咲かせた。
  文房具を売っているのだと透子が話すと、「あの時ばらまいたのも文房具だったね」と右京は笑った。
  「はい。ずっと好きだったんです」
  そう言うと、「お互い、好きなものを仕事にできて幸せだね」と右京は微笑んだ。

コメント

  • 素敵な偶然ですね!
    でも、二度続いたら偶然と言うよりは必然ですよね。
    二人で会う運命にあったのかな?と思いました。
    ロマンティックです!

  • こんな偶然、特別な人達にしか訪れないのでしょうか!? 7年前、彼女が彼を知っていたこと、ぶつかった時の彼女に強い印象をもったこと。再会もまた同じシチュエーションとは、強い縁を感じてしまいますね。

  • なんだか魅力的な出会いですよね、絶対に運命を感じてしまいますよね。タイトルもストーリーをうまく反映されていて作者様のセンスを感じました。

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