僕の花嫁(脚本)
〇教会の控室
咲希「『もう、おそいよ』」
彼女が拗ねたような、照れているような表情でこちらに振り向く
すごく綺麗だ、、、
似合ってるよ
今日は待ちに待った結婚式
目の前にいる綺麗な花嫁を見て顔が綻ぶ
〇レトロ喫茶
僕と咲希の出会いは5年前
僕らが20歳だった頃
僕はカフェで働いていた咲希に一目惚れをした
足繁くカフェに通い、僕らは仲良くなっていった
咲希「『あ!』」
咲希「『いらっしゃいませ~ 良い席取っといてありますよ』」
???「『こんにちは、席ありがとう』」
???「今日はマンデリンとミルクレープのセットにしようかな」
『わかった!すぐ用意するから待っててね』
そういうと咲希は駆け足でカウンターの中に戻っていった
取っといてもらったいつものカウンター席に腰を掛け
咲希がコーヒーを淹れている姿を見守る
〇レトロ喫茶
始めてここに来た日
1人で4人掛けの席に座るのが忍びなくて、カウンター席に座った
カウンターの中には綺麗な顔立ちのウェイトレスがいた
不馴れなのか、サイフォンの前でバタバタ動いたかと思うと
今度はコーヒーが落ちきるのを真剣な表情でじっと見つめていた
そして上手く淹れられたのか、彼女は頬を緩めた
クールな見た目な反して、コロコロと表情が変わる彼女が可愛らしかった
僕が見すぎたため、彼女と目が合ってしまった
咲希「『今美味しいの出しますからね』」
???「『ありがとうございます』」
???「『、、、あの』」
この日、コーヒーについて質問をしたのをきっかけに
僕らはいろんなことを話すようになった
そして次第に仲良くなっていった
〇レトロ喫茶
咲希と出会って2年、何度かデートを重ねた後、僕はついに決心した
咲希「『わかった!』」
咲希「『9時過ぎちゃうかもしれないけど大丈夫?』」
???「『大丈夫、待ってるね』」
僕はこの日、咲希と駅まで一緒に帰る約束をした
〇公園通り
咲希「『外、すっかり暗くなっちゃったね』」
咲希「『待たせちゃってごめんね』」
咲希「『それで、話ってなあに?』」
???「『、、、、』」
「『実は、僕は白血病なんだ』」
咲希「『え?』」
〇渋谷のスクランブル交差点
18歳の時に医師に急性リンパ性白血病と言い渡されたこと
余命1年と言われていたこと、それから今日まで3年間生きていること、今までの生活
全てを彼女に打ち明けた
咲希「、、、、」
咲希「『話してくれてありがとう』」
咲希「『、、正直、すごく驚いたし、いつも明るいから気が付かなかった』」
咲希「『今は大丈夫なの?』」
???「『うん』」
「『咲希と出会ってからずっと、調子が良いんだ』」
咲希「『そっか』」
咲希「『どうして急に、話してくれようと思ったの?』」
〇ハチ公前
駅に着いた僕たちは、そのまま脇道に逸れて、銅像の側に腰を掛けた
「『僕が伝えようって思ったのは』」
「『咲希に隠し事したくなかった』」
「『それと、僕の気持ちを伝えたかったから』」
???「『、、、ここからが本題なんだ』」
咲希は黙って頷いた
咲希も緊張しているのが伝わってくる
「『、、咲希、君の事が大好きです』」
???「『咲希に始めてあった頃、余命宣告を過ぎても生きられている自分に、喜びと、これからの不安でいっぱいだった』」
「『でも、咲希の笑顔を見ると不安な気持ちが消えて、胸が温かくなるんだ』」
「『こんなこと言う資格も、責任もないのかもしれない』」
「『それでも、僕は君と付き合いたい』」
咲希「『スゥーーーー』」
彼女は深く息を吸い込んだ後、真っ直ぐな瞳を僕に向けた
咲希「『ばかだなあ』」
咲希「『好きになるのに、資格も責任もいらないよ』」
咲希「『、、、私もあなたのことが大好き』」
咲希「『私といると調子が良いんだよね?』」
咲希「『それならずっと一緒にいたら無敵だね!』」
彼女の笑顔に、僕の不安は打ち消された
この広い世界の中で、咲希に出会えて良かった
僕は彼女に出会うために、人生全ての運を使い果たしたのかも知れない
〇教会の控室
現在
咲希「『もう、おそいよ』」
母「『そう?時間ぴったりよ』」
咲希「『お父さんはまだ着かないの?』」
咲希「『渋滞にはまっちゃったみたいよ?』」
咲希「『えーー!』」
母「『あっ着いたって連絡来たわ』」
母「『咲希、準備は良い?』」
咲希「『うん!』」
咲希「『それじゃあ行こうか、優大』」
咲希「『今日は私たちにとって幸せな日になるわ』」
咲希は待合室を後にする
〇結婚式場のレストラン
それでは、新郎新婦の入場です
咲希「『行こう、優大』」
うん、咲希
彼の気持ちを思うととても切なくなりました、また彼女の気持ちを思うとなんともいたたまれないですよね。でも二人が幸せな気持ちでいてくれるならいいですね。
結婚できて、本当によかったです。まさかの白血病だなんて、それをカミングアウトするのも、受け入れるのも容易なことでは無いと思います。でも運命の相手だからこそ乗り越えられたのですね。
どんな辛いことでも、たとえ可能性がなくても、それでも前に前に進んでいこうと、そんな気持ちが伝わってきました。
私も頑張らないとなぁ!