龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第壱佰壱話 赤黒激突(脚本)

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〇荒野
橘一哉(やべえ)
  一哉は内心呟いた。
  隙が無い。
  文字通り『気を張り』、こちらを見据える瑠美。
  本人は神気発勝で即応態勢を整え、得物の斧槍には赤龍の炎の龍気。
  どこからどう見てもやる気満々である。
  一哉の一挙手一投足、僅かな挙動も見逃すまいと意識を向けている。
橘一哉(やりにくいなぁ)
  しっかり構えを整えている相手に闇雲に突貫するほど一哉も間抜けではない。
  それともう一つ、一哉にとってのやりにくさがあった。
  それは、
橘一哉(相変わらず、気の立て方が独特だなぁ)

〇荒野
  一哉の感じる『やりにくさ』。
  それは、瑠美自身の戦いに臨む姿勢にある。
穂村瑠美(私は別に、橘くんに恨みがあるわけじゃない)
穂村瑠美(特段、憎らしいと思ってるわけでもない)
穂村瑠美(けど、)
  この戦いには、負けられない。
  それは、魔族が相手でも同じだ。
  瑠美自身が、魔族に恨みや憎しみがあるわけではない。
  あちらが瑠美の命を狙ってくるから、止むを得ず応戦しているだけ。
  瑠美自身が、魔族に対してどうこうしようという訳ではないのだ。
  そんな瑠美が、

〇荒野
橘一哉(やる気満々の割には、いつもの様子も残ってるな・・・)
  戦いに関しては比較的受け身。
  そんな瑠美が、今回ばかりは積極的に戦いに臨む姿勢を見せている。
  普段とは異なる様子ではあるが、それでも普段と変わらない所もある。
橘一哉(こっちの出待ちか)
  瑠美は動かない。
  自分からは動かず、一哉の出方を窺っている。
  今までの瑠美が知る一哉とは違うと、彼女も分かっているのだ。
  そして、一哉の実力の程も。
  得意の剣ではない。
  しかし、素手での戦闘経験もそれなりに積み、要領は分かっているはず。
  まして、あの四神との会盟の時。
  一哉は朱雀の使い手の雀松司から、素手の闘技を伝授されている。
  無闇に動けば、却って危ない。
  それが分かっているから、瑠美は不用意には動かない。
  ・・・と、思いきや。
穂村瑠美「────────────────!!!!!!!!!!」
橘一哉「うそぉ!?」
  極大の炎が、迸った。

〇荒野
黒龍「いきなり火天真言だと!?!?」
  一哉の中にいる黒龍も、思わず声を上げていた。
橘一哉「こんちくしょうっっ!!」
  一哉も意識を集中して両手足の倶利伽羅甲から黒い龍気を噴出させ、
橘一哉「だあっ!!」
  迫る真紅の熱気に叩き付ける。
  赤と黒の龍気は激しくぶつかり合い、
  中和されて無数の光の粒子と化して霧散した。
橘一哉「容赦ねえなあ、穂村さん」
  大きく一息つく一哉に、
穂村瑠美「普通にやっても、勝ち目はないからね」
  瑠美も平然と返す。
姫野晃大(怖ぁ・・・)
  そんな瑠美の姿に、晃大は何となく寒気を覚えた。
黒龍「初手から全力か、赤龍」
  一哉の左腕から黒龍が姿を現す。
赤龍「当たり前だ」
  瑠美の右腕からも赤龍が現れ、黒龍の言葉に応じた。
赤龍「此度の戦いは瑠美のたっての願い」
赤龍「私も全力で宿主に協力させてもらう」
黒龍「・・・そうか」
  黒龍は一哉を見上げ、
黒龍「今聞いたとおりだ、遠慮は一切無用でいけ」
橘一哉「おうさ」
黒龍「・・・よし」
  一哉は瑠美から目を離さずに頷く。
  それを見た黒龍は満足げに頷くと、再び左腕に戻った。
橘一哉「で?今ので打ち止めじゃないんだろ?」
穂村瑠美「当然」
  一哉の問い掛けに、瑠美も当然と言った顔で言葉を返す。
穂村瑠美「いくよ、橘くん!」
  斧槍を構え、瑠美は地を蹴った。

〇荒野
姫野晃大「いきなり必殺技かよ!?」
  まさか瑠美が先に仕掛けるとは思わなかった。
  そして、その最初の一手が赤龍の必殺の呪言『火天真言』であることも。
  晃大には二重の意味で予想外だった。
光龍「どうやら、瑠美は本気のようだな」
  光龍が晃大に語りかける。
光龍「そして、赤龍も」
姫野晃大「大丈夫かな・・・」
光龍「どちらの心配をしている?」
姫野晃大「両方だよ、両方」
  光龍の問いに晃大は即答した。
姫野晃大「あんな瑠美は今まで見たことないし、カズも無事で済むかどうか分からないだろ?」
  晃大の正直な感想だった。
  積極攻勢に出る瑠美の姿は珍しい。
  しかし、いざという時の爆発力があることも、晃大はよく知っている。
光龍「ずいぶん瑠美を信頼しているようだな」
姫野晃大「当たり前だろ」
姫野晃大「俺と瑠美は、生まれた時からの付き合いなんだからな」
光龍「それが幼馴染、ということか」
姫野晃大「まあな」

次のエピソード:第壱佰弐話 赤黒激闘

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