球~行き着く先は、世界の端~

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52 歩み寄り難き時(脚本)

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〇桜並木
鳥「チチチッ」
  少女と対峙するミムレットとシャラ。
シャラ「小娘」
ミムレット「なんだ」
シャラ「お前、組み紐の飾りを持っていたか」
  ハランからもらった組み紐の飾りを、ギュッと握りしめるミムレット。
ミムレット「・・・持ってるけど、何?」
シャラ「なら、いい」
ミムレット「はあ?今確認することか?」
シャラ「私は、鳥を追いながら宝石を探す」
鳥「チチチッ」
シャラ「お前は、そこの『出来損ない』と戦っていろ」
面影の少女「おや、言うに事欠いて」
  言葉を置いて、シャラは姿を消した。
ミムレット「あ!おい!」
ミムレット「・・・ったく」
ミムレット「仕方ないな。任せてもらったんだ」
  頭を一つ振って、ミムレットは少女を睨み付けた。
ミムレット「せいぜい頑張りますよ、っと」

〇後宮の回廊
  その昔、とある王宮。
  廊下に、一人の少女が立っていた。
面影の少女「シャラ」
  少女の呼ぶ声に、シャラは振り向いた。
シャラ「何だ?」
  少女は、ためらった後に、意を決して口を開いた。
面影の少女「どうして私は、強くなれないの?」
面影の少女「シャラのように・・・」
シャラ「強くなったじゃないか」
  少女は眉を寄せると、叫んだ。
面影の少女「慰めないで!」
面影の少女「剣もダメ、術もダメ、他の武器なんてもっての他・・・」
面影の少女「誰がどう見ても、私はシャラに劣っている」
シャラ「比べるのか? 将軍の私と、官位も無いお前と」
  黙る少女を背に、シャラは踵を返した。
シャラ「上手くなったよ、前よりずっとな」
シャラ「この勢いで励め。シュロ」
シャラ「期待している」
  期待している。その一言に、少女は頬を染めた。
面影の少女「あ・・・」
面影の少女「はい!頑張ります」
  少女は鍛練に励んだ。
  頑張って、頑張って、頑張った。
  そして、頑張った妹を、シャラは亡くした。
  もう、頑張れない
  ごめんなさい。姉さん
シャラ「シュロ・・・」

〇城の会議室
  その頃、リベンカ王国。
  ハランとハパルムは、城の会議室にて、シエーリタと歓談していた。
  シエーリタの話を静かに聞いていたハランは、ふと顔を上げた。
  聞こえているか、ハラン
ハラン(うん、聞こえている)
  頭に響く声は、ハランの返事に言葉を続けた。
  『鳥』が出た。
  『宝石』も奪われたようだ。
ハラン「そうか」
  対処する。
  それと・・・
  『出来損ないの泥人形』も、な。
ハラン(出来損ないの泥人形?)
  頭の中の声は、一呼吸置いてから答えた。
  可愛い可愛い、私の妹さ。
ハラン(──まさか、シュロか)
ハラン(今居るのは、シャラの故郷か? 加勢に行く)
  必要ない。
ハラン(必要だ。シュロの姿を、相手が出来るのか?)
  問題ない。
  小娘に、任せる。
  その一言に、ハランは目を見開いた。
  見開いて、ふっと笑った。
ハラン「・・・そうか」
ハラン「ミムレットに任せる、か。 頼もしいな」
シエーリタ「──以上が、情勢の概要です。ハラン将軍」
シエーリタ「質問があれば、おっしゃって下さいね」
ハラン「では、質問させていただく」
シエーリタ「どうぞ、何なりと」
ハラン「貴女は、ここが『球』の中だとご存知のようだが、他の人々は?」
  『球』それは道具。
  人を救うために作られ、モンスターを生む、この閉じた世界だ。
シエーリタ「もちろん、存じております」
シエーリタ「皆、この地で生きていくと決めたのですから」
ハラン「そうですか。では──」
ハラン「いずれ外の、本当の世界に戻ることを考えておいでか?」
  シエーリタの顔から、微笑みが消えた。
  残ったのは、険しい表情だった。
シエーリタ「いいえ」
シエーリタ「本当の世界、などありません」
シエーリタ「ここが新たな国なのです。 ようやく手に入れた平和なのですよ?」
シエーリタ「・・・失礼」
シエーリタ「どうにも疲れたようです。 ハラン将軍方も、お部屋でお休みください」
ハパルム「あっ、シエーリタさん──」
ハパルム「行っちゃった」

〇城の廊下
ハパルム「シエーリタさん、怒らせちゃったかな」
ハラン「誇(ほこ)っているんだろう」
ハパルム「誇(ほこ)る?なにをですか?」
ハラン「どこにあっても、存続している自国を」
ハパルム「あの・・・ごめんなさい。 よく分かりません」
ハラン「それだけ、彼女にとってこの国の存続が大事ということだよ」
ハラン「さて、ハパルム」
ハラン「お暇(いとま)しよう」
ハパルム「あんなにシエーリタさんが、ハランさんのこと頼っていたのにですか!?」
ハラン「でも、ここを出る」
ハラン「頼まれたら、必ず引き受けなければいけないものでもない」
ハラン「憎まれようと崇められようと」
ハラン「最後に決めるのは、自分だ」
ハパルム「そ、それはハランさんが強いから言えることじゃないですか?」
ハパルム「自分で決められない人だって居るんですよ」
ハパルム「シエーリタさんも、この国の人も・・・そうかも」
ハパルム「立場が弱かったり、非力だったりして」
ハパルム「・・・流れに従うしかない人も、いっぱい居るんですよ?」
ハラン「ハパルムを尊重したいが」
ハラン「ここは、力づくでも引いてもらうよ」
  ハランは、静かにハパルムへ歩み寄り、剣を抜いた。
ハパルム「えっ?」

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