球~行き着く先は、世界の端~

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53 語らいに答えて(脚本)

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〇城の廊下
  剣を手に、ハパルムへと詰め寄るハラン。
ハパルム「ハランさん、どうしちゃったんですか」
  ハランはまっすぐハパルムを見据えていた。
  その口もとが、微かに動いた。
ハラン「頃合いを見て、外へ」
ハパルム(外へ?)
  ハランは足を留めると、物陰に声をかけた。
ハラン「出て来ないのですか、シエーリタ殿」
ハラン「それとも、このままハパルムを見殺しに?」
  ガサリ、と音がした。
シエーリタ「見ていましたよ、ハラン将軍」
シエーリタ「ハパルムさんを脅すなんて!」
シエーリタ「あなたらしくもない」
シエーリタ「大丈夫ですか?ハパルムさん」
  心配そうにハパルムの肩に手をおき、覗き込むシエーリタ。
ハパルム「いえ、ちょっとビックリしただけで」
  ハランは剣を鞘に納めた。
ハラン「変わりましたね、シエーリタ殿」
シエーリタ「なにを・・・」
ハラン「私の知っているシエーリタ殿は」
ハラン「人に優しく、正義感に溢れ、弱き者を助ける人だった」
ハラン「あなたみたいにね。ただし──」
ハラン「人を率いて、新天地を目指す人ではなかった」
シエーリタ「・・・何をおっしゃりたいの」
ハラン「・・・・・・」
ハパルム「もう!どうしちゃったんですか!?ハランさん」
ハパルム「さっきから・・・おかしいですよ!!」

〇巨大な城門
ハパルム「ふぅ」
  トボトボと町を歩くハパルム。
  町の賑わいが、かえって寂しく感じた。
ハラン「ハパルム」
ハパルム「ハランさん」
  ハランの姿に目をとめて、ハパルムは側に寄った。
ハラン「先ほどはすまない。驚かせた」
ハパルム「・・・・・・」
ハパルム「『頃合いを見て、外へ』って」
ハパルム「あの場を離れたかった・・・ 合ってましたか」
ハラン「よく分かってくれたね、ハパルム」
ハラン「正直、これ程伝わるとは思っていなかった」
ハラン「助かったよ。ありがとう」
ハパルム「えへへ」
ハパルム「何か考えがあるのかな、とは思いました」
ハパルム「だって、ハランさんが本気なら、私なんか力でねじ伏せられるし」
ハパルム「脅すなんて回りくどいこと、しなくていいじゃないですか」
ハパルム「お芝居をしてでも、離れたかったんですね」
ハパルム「でも、どうしてシエーリタさんに協力しないんですか?」
ハパルム「悪い人を倒すのって、良いことでしょう?」
ハパルム「リベンカ王国の人もきっと喜びます」
  ハランは、何か言いかけて止めた。
  『悪い人は、誰から見ても悪い人なのか』
  『良い人は、誰から見ても良い人なのか』
  『私たちは何を根拠に、善悪で裁くのか』
  言わなかった。
  代わりに、別の言葉を紡いだ。
ハラン「──うん」
ハラン「彼女は、『本当に』シエーリタ殿なのか、分からないからね」
ハパルム「今のシエーリタさんが、偽物だってことですか?うーん、でも・・・」
ハパルム「あのシエーリタさんがやりたいことは、この国を守ること」
ハパルム「偽物でも本物でも、やってることは良いことじゃないですか」
ハパルム「私はむしろ、どうしてハランさんが協力しないのか不思議です」
  ハパルムは少し声を落とした。
ハパルム「だって、ハランさんなら困っている人を見捨てない・・・」
ハパルム「私のことを受け入れてくれた・・・ハランさんなら」
ハラン「なあ、ハパルム。ひとつ答えて欲しい」
ハラン「とある土地があって、住みたい人がいる」
ハラン「けれど、その土地にはもう人が住んでいる」
ハラン「ハパルム、その土地の人を移動させるには、どうすれば良いと思う?」
ハパルム「ええと」
  ハランはふっと息を吐いて、笑顔を見せた。
ハラン「君の街でも、同じことがあったな?」
ハパルム「同じ?あ!」
ハパルム「別の場所を用意して・・・そっちに追い出す」
ハラン「そうだったね」
ハラン「では、リベンカ王国は?どうしてこの『球』に入った?」
ハパルム「敵国に攻められて、やむなく『球』に。 でも」
ハパルム「『球』は盗まれて散らばった道具でしたよね」
ハパルム「どこで手に入れたんだろう。偶然?」
ハラン「さあ、そこまでは分からない」
ハラン「例えばシエーリタが『球』をあらかじめ用意して」
ハラン「土地を明け渡すよう民を誘導した。かもしれないし」
ハラン「そうなるように、誰かに丸め込まれたのかもしれないし」
ハラン「推測はいくらでもできる」
ハラン「だが、私には関係の無いことだ」
ハラン「私はこの世界の壁を──『球』を壊す」
ハラン「それだけだ」
  ハランは踵を返して、城門に向かった。
ハパルム「そっか・・・そうだよ」
ハパルム「『球』の壁を壊すってことは・・・中の人たちの居場所を奪うってこと・・・」
ハパルム「私は・・・誰かの場所を奪いたくないなぁ」

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