読切(脚本)
〇教室
彼女は、誰にでも優しかった。
困っている人がいれば助ける
落とし物があれば拾う
悪口を言われても笑って流す
だから、クラスのみんなが彼女を「いい子」だと思っていた。
ある日、教室の机に一枚の紙が置かれていた。
め「『このクラスで一番性格が悪い人は誰?』・・・なに、これ」
面白半分の匿名アンケートだった。
彼女は笑いながら紙を回した。
め「こういうの、くだらないよね」
そう言って、最後まで誰の名前も書かなかった。
翌日、
黒板には、昨日のアンケート結果が貼られていた
一番多かった名前は――彼女だった。
教室が静まり返る。
め「・・・・・・え?」
誰かが小さく笑った。
ユメ「だって、いい子ぶってるじゃん」
別の誰かが言った
アユミ「何でも『大丈夫』って言うけど、本当は人のこと見下してそう」
アユミ「先生に気に入られたいだけでしょ」
彼女は何も言えなかった。
1人、また1人。
今まで彼女に相談してきた人たちまで、理由を並べ始めた。
「前に相談したとき、正論ばっかりだった」
「助けてあげたって顔してた」
「断ったら悪いと思って、ずっと我慢してた」
彼女は震える声で尋ねた
め「・・・・・・じゃあ、今まで優しくしてくれてたのは?」
・・・だれも答えなかった
その日の帰り道。
彼女は一人で歩いていた
スマホを見ると、クラスのグループチャットに通知が届いた。
『明日からあの子には普通に接しよう』
『もう傷つけるのはやめよう』
彼女は少しだけ安心した。
――よかった。
そう思った直後、別のメッセージが届いた。
『でも、仲良くする必要はないよね』
既読が一つ増えた。
また一つ。
そして最後に、
『あの子がいないところでは、今まで通りでいこう』
彼女はスマホを閉じた。
翌朝。
教室に入ると、みんな笑顔で「おはよう」と言った。
誰も彼女を責めなかった。
誰も無視しなかった。
誰も悪口を言わなかった。
ただ――
誰一人として、彼女の隣には座らなかった
その日から、彼女はずっと「いい子」でいられた。
誰にも嫌われないように。
誰にも好かれないように。
そして卒業の日。
担任は最後のホームルームで言った。
「このクラスは、本当に仲が良かったですね」
彼女だけが笑わなかった。
教室の全員が笑っていた。
まるで、本当にそうだったかのように。
Fin
め「ご愛読ありがとうございました」


