あなたの心の奥にある渋谷…どこにありますか?

銀次郎

反町第三小学校 中島先生と林先生の話 その3(脚本)

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〇散らかった職員室
林多恵「中島先生、聞きました?今度の研修?」
中島さゆ「研修?なんの?」
林多恵「主任研修ですよ、今度の日曜の。 あれ、場所が渋谷らしいんです」
中島さゆ「渋谷って、あの渋谷?」
林多恵「いや、あのってほど渋谷は特殊な場所じゃないですけど・・・」
中島さゆ「養命酒本社ビルがあの渋谷?」
林多恵「・・・そうなんですか? 知らなかったですけど」
中島さゆ「酒井法子の元旦那が逮捕された、あの渋谷?」
林多恵「その渋谷ですけど‥ ずいぶん前の事件ですよね?」
中島さゆ「お父さん、ショック受けてたなぁ‥」
林多恵「お父さん? 中島先生のお父さんですか?」
中島さゆ「うん、ファンだったらしいの。 『のりピー捕まっちゃった』って言ってた」
林多恵「のりピー?」
中島さゆ「『のりピー』って言うだって、酒井法子のこと」
林多恵「へー。あだ名みたいなもんですか?」
中島さゆ「らしいよ、なんか『ピー』って言うんだって」
林多恵「『ピー』?」
林多恵「よくわかんないけど、 話すときに『ピー』って言うんだって」
林多恵「うーん・・・ ピカチュウみたいなことですか?」
中島さゆ「ピカチュウ?」
林多恵「ほら、ピカチュウって、『ピカチュウ!』とか『ピカピカ!』とか『ピカ(注)!!』だけで会話するじゃないですか?」
中島さゆ「・・・言いたいことはわかるけど、 最後のやつはちょっと違うからね」
林多恵「えっ?こういうことじゃないんですか?」
中島さゆ「いや、なんか語尾につけるんだって、 『のりピー、お腹が痛いピー』とか、 そんなんじゃないかな?」
林多恵「あーなるほど。 じゃあ、その『ピー』の部分はあれですか?世間的に伏字になってるってことですか?」
中島さゆ「世間的に伏字?どういうこと?」
林多恵「だから『のりピー、お腹が痛いピー』の『ピー』には『だからヤク持って来いよクソが!』っていう意味があって、つなげると・・・」
中島さゆ「はい、やめて、やめて!」
林多恵「あれ?違います?」
中島さゆ「あれ?じゃないから!違うかどうかはともかく、のりピーの流れからヤクとかホントにやめて!」
林多恵「えっ?この『ヤク』じゃないってことですか?」
中島さゆ「どの『ヤク』とか聞いてないから!」
林多恵「じゃ、あっち『ヤク』かなぁ‥? ほら、あの白いほうの?」
中島さゆ「白いほうとか言うな! ダメ!絶対!」
林多恵「じゃあ『ピー』についてはどうしたら?」
中島さゆ「いやどうもしなくていいから! 話し戻すよ!  で、今度の研修場所が渋谷なんでしょう?」
林多恵「そうなんですよ。しかも『オクシブ』らしんです」
中島さゆ「『オクシブ』?なにそれ?」
林多恵「知らないんですか?  『奥渋谷』のことですよ?」
中島さゆ「『奥渋谷』?」
林多恵「渋谷の奥って事です」
中島さゆ「渋谷の奥って・・・ 養命酒本社ビルがある辺り?」
林多恵「‥いやだから知らないですけど」
中島さゆ「酒井法子の元旦那が逮捕された辺り?」
林多恵「それは『渋谷の奥』と言うより 『闇』じゃないかと・・・っていうか、 わかって言ってますよね?」
中島さゆ「へへー、ごめんごめん。 ようは、奥にある渋谷ってこと?」
林多恵「そうなんですけど、奥にある渋谷っていうと、なんか違うイメージのような・・・」
中島さゆ「『あなたの心の奥にある渋谷・・・どこにありますか?』的なことでしょ?」
林多恵「でしょって、なぜ新築マンションの広告みたいなセリフに‥そもそもそれじゃ、実在しない場所になっちゃいますよ」
中島さゆ「じゃあ、『あなたが心の奥にそっとしまいこんだ宝物、それをあなたが忘れないよう、大切な場所、渋谷の奥に隠してあるの』」
林多恵「‥‥」
中島さゆ「『いつかそれが必要になったとき、 渋谷の奥、そう奥渋谷を覗いてごらん』」
林多恵「いや、だから・・・」
中島さゆ「『でも気をつけて・・・あなたが奥渋谷を覗くとき、奥渋谷もあなたを覗いているの』」
林多恵「・・・だから、そのしょぼいマンションポエムみたいなのは何なんですか?  しかも最後ちょっとホラーになってるし」
中島さゆ「『奥渋谷』に覗かれるって、 ちょっと嫌だよね」
林多恵「だいぶ嫌ですよ。そう言うことじゃなくて、渋谷駅から奥の方、渋谷東急本店の奥辺りのことらしいですよ」
中島さゆ「その辺を『奥渋谷』って言うの?」
林多恵「はい。なんかオシャレなカフェとか雑貨屋さんがあって、ちょっと大人の雰囲気なんですって」
中島さゆ「ふーん、そうなんだ」
林多恵「ふーんて、興味なさそうな・・・ あっ、メールでマップも届いてましたよ」
中島さゆ「えっ?ほんと? ちょっとスマホ見るね・・・ あー、この辺のことかぁ」
林多恵「なんとなくわかりました?」
中島さゆ「わかったけど‥この辺って渋谷って言うか、代々木八幡じゃない?」
林多恵「まあ、確かにそうですけど」
中島さゆ「ほら、研修会場も代々木八幡駅から 徒歩6分ってあるし」
林多恵「そうなんですよ、渋谷からだと歩いて10分以上かかるんです」
中島さゆ「結局は『奥渋谷』って、 『代々木八幡』のことでいいのかな?」
林多恵「いや違いますよ、断定しないで下さい」
中島さゆ「じゃあ研修に行くとき、待ち合わせするならどこの駅にする?」
林多恵「それは・・・『代々木八幡』ですけど‥」
中島さゆ「でしょ!となると、逆に渋谷駅辺りは・・・『奥代々木八幡』ってことになるのか!」
林多恵「なりませんよ」
中島さゆ「『あなたの心の奥の代々木八幡を、いつかそっと訪ねてごらん。そこは多様な生き物の住処、安らぎの場』」
林多恵「いや、だからポエムはいいから」
中島さゆ「『そこではね、モアイや秋田犬が暮らし、そして、中途半端なユーチューバーが一攫千金を狙っているから』」
林多恵「・・・毒がキツイからポエムにならないんですけど」
中島さゆ「ならないよねー」
林多恵「とりあえず、研修日の代々木八幡駅の待ち合わせ、時間決めます?」
中島さゆ「ねー」
  おしまい

コメント

  • 相変わらず二人のボケとツッコミが旨い感じで良いのですねえ。

    蛇足
    のりピー失踪事件で某大手掲示板にスレッドが立ったと思ったら、即埋まり状態という
    今では説明しても理解してもらえない事件を思い出してしまいました。

    楽しませていただきました。
    ありがとうございます。

  • 日常的にこんな面白い掛け合いをしていたらめっちゃ楽しそうですね笑
    確かに自分と相手では連想するものも違いますが、ここまで歯車が合わないとむしろ面白いですね笑

  • (笑)楽しかったです、クスッと笑いながら読ませて頂きました。時代を感じるものでしたが、分かる自分もいる。(笑)月日が経つのは早いですね。

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