ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.24 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #16(脚本)

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〇一戸建て

〇学生の一人部屋
久常紫雲「・・・・・・」
  ふいにドアが乱暴にノックされた。
  入るわよ! 仮病兄貴!
  制服の朱丹(すに)が怒鳴りこんでくる。
  朱丹は部屋に入るなり、顔をしかめた。
久常朱丹「うっわ。暗っ! 空気澱んでる!」
久常紫雲「・・・おかえり。朱丹」
  朱丹は部屋の電気を点けた。

〇学生の一人部屋
久常朱丹「なにその顔。きしょ! 元からだけど」
久常朱丹「つか、いつまで仮病してる気? 落ち込んでますアピール、ウザいんですけど」
久常紫雲「・・・はは。ごめん」
久常朱丹「・・・どうも調子狂うわね」
久常朱丹「それはそうと! 早く着替えて。 寝癖もなおして!」
久常紫雲「・・・?」
久常朱丹「美結(みゅう)ちゃんがお見舞いに来るって!」
久常朱丹「こんなんで人様の前に出せないでしょ」
久常朱丹「あぁもう、我が兄ながら恥ずかしい。 ほらこれ。着替えと濡れタオル!」
久常紫雲「・・・あぁ。ありがと」
  僕はのろのろと服を脱ぎ、上半身裸になった。
  すると、朱丹が赤面する。
久常朱丹「バカ! デリカシーなし! 私が出てから着替えなさ・・・」
久常朱丹「なに、そのケガ?」
  朱丹は傷だらけの僕の身体を見て驚いた。
久常紫雲「・・・なんでもないよ」
久常朱丹「・・・そう。まぁ別に興味ないし?」
  朱丹は素っ気なく言うと、ドアを乱暴に閉めて出て行った。

〇一戸建て

〇学生の一人部屋
  ほどなくして、美結がお見舞いに来た。
  私服に着替えた朱丹が、テーブルの上にお茶とお菓子を置いて立ちあがる。
久常朱丹「それじゃ。美結ちゃん、ごゆっくり」
辻崎美結「ありがとう。朱丹ちゃん」
  朱丹が部屋を出て行く。
辻崎美結「さてと・・・?」
  美結は僕の顔をじっと見た。
辻崎美結「うーん。思ったより重症みたいね」
久常紫雲「・・・思ったより?」
  美結は少し考えた後、言った。
辻崎美結「ちーちゃんと、ケンカしたでしょ? それも、シャレにならない大げんか」
久常紫雲「・・・・・・」
辻崎美結「やっぱり」
辻崎美結「ちーちゃんも今日、ズル休みだったしね。 それに前から・・・」
  美結がふと、ドアを見る。
辻崎美結「朱丹ちゃーん! お茶、おかわりもらえるーー?」
  ドアの外でガタガタッと音がした。
  は、はぁーい!
  ドタドタと足音が遠ざかっていく。
辻崎美結「・・・それに前から、2人でこそこそ危ないことしてるんじゃないかって」
久常紫雲「!? 」
久常紫雲「なんでそれを!」
辻崎美結「やっと反応したね。おかえり」
久常紫雲「美結・・・どこまで?」
辻崎美結「何も知らないよ。知ろうとも思わないし。 それとも、聞いてほしい?」
久常紫雲「・・・いいや」
辻崎美結「だよね。・・・ねぇしゅーちゃん」
辻崎美結「もしかしてちーちゃんとのこと、あきらめた?」
久常紫雲「!」
久常紫雲「・・・そんなこと、ない。 でも、僕には資格がないから」
久常紫雲「僕のせいだから・・・」
辻崎美結「心配じゃないの?」
久常紫雲「・・・え? 心配・・・?」
辻崎美結「ちーちゃんって見た目ほどしっかりしてないし」
辻崎美結「結構感情的で危なっかしいよね。 このまま、放っておいていいのかな」
久常紫雲「そう・・・かもしれないけど」
辻崎美結「だから、助けてあげてほしいなって」
久常紫雲「僕、が・・・?」
辻崎美結「他に誰がいるの? このままお別れでいいの? 」
辻崎美結「またみんなで遊べなくなっちゃうよ? それは、嫌でしょ?」

〇街中の公園
   頭に、公園で笑う8年前の美結と歩・・・
  そしてちーちゃんのイメージが閃いた。
  そうだ。僕はみんなと一緒にいたい。
  ただ、それだけなんだ。

〇学生の一人部屋
久常紫雲「ああ。そうだね」
辻崎美結「頼りにしてるよ」
  美結は立ちあがると、ドアを開けた。
  すると、そこには歩が立っていた。
  横では朱丹が真っ赤になっている。
御子柴歩「あれ。もうお見舞い終了?」
辻崎美結「うん。帰るとこ。送ってくれる?」
御子柴歩「いいけど・・・しゅーちゃんは?」
辻崎美結「ちーちゃんと喧嘩して仮病だって。予想通り」
辻崎美結「でももう、平気みたい?」
御子柴歩「なんだ。心配して損した」
久常朱丹「いつも兄がすみません・・・」

〇一戸建て

〇学生の一人部屋
  僕はナイトウォッチのヘルメットをじっと見つめていた。
久常紫雲「ちーちゃん。ねぇ、ちーちゃん・・・」
久常紫雲「聞いてる? 聞いてるんでしょ?」
  ヘルメットは沈黙したままだ。
久常紫雲「君はいま、どこかに閉じこめられている。 そしてその場所を探している」

〇地下倉庫
根須戸智是「まだ、お城のどこに監禁されているかすら、わからないのに」

〇学生の一人部屋

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