球~行き着く先は、世界の端~

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43 弓と矢と応酬(脚本)

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〇薄暗い谷底
林(リン)「放て」
  シャラの脚を、胴を、首を、四方から矢が突き刺しに来る。
影「ちっ・・・ことごとく当たらないとは」
林(リン)「殺す気で射ろ」
影「えっ」
影「いえしかし、それでは──」
  射殺してしまった者が、モンスターになってしまう。
  部下はおぼつかない手で、次の矢をつがえた。
林(リン)「安心しなさい」
林(リン)「モンスターにはならん」
影「それは・・・何か策があるので?」
林(リン)「なに、簡単な理屈だ」
林(リン)「弓矢ごとき、シャラ様には当たらない」
  おののく部下を冷ややかに見やり、追撃の合図を出す林(リン)。
影「し、しかし万一当たりでもすれば・・・」
林(リン)「当てた者がモンスターになる、か」
林(リン)「怖いか? 己がモンスターと化すのは」
影「いえ、そのようなことは・・・」
  林(リン)の部下たちは、シャラに射かける矢を緩めなかった。
  その弦が震えるのを見やり、林(リン)はゆっくりと首を振った。
林(リン)「モンスターとなろうとも、致し方あるまい」
林(リン)「この法によって、「球」の秩序は保たれる」
林(リン)「そうでなければ、ならんのだ」

〇海辺
  耳の奥に潮騒が満ちる。
  低くささやくシャラの声をのせて。
シャラ「なあ、知っているか?」
シャラ「モンスターにならず」
シャラ「人を殺す方法を」
  押し寄せる波のように言葉が反響する。
  ──モンスターにならず──
  ──人を殺す方法──
林(リン)「そんな方法(もの)」
林(リン)「あってたまるものか!!」

〇薄暗い谷底
林(リン)「総員、シャラ様を射て!」
林(リン)「「球」を守るためだ」
林(リン)「殺しても構わん!!」
「はい!」

〇岩山
影「あっちに走っていったぞ!」
シャラ「どっちに走っていったって?」
影「ひっ──」
  シャラは気まぐれだった。足を早めたり、かと思えば器用に岩影を盾にしたり。
  次の瞬間には、砂塵を置き去りにして弓部隊の背後を取ったり。
影「林(リン)様、このままでは矢が尽きます」
林(リン)「やれやれ」
林(リン)「完全に遊ばれている」
林(リン)「だが、それが好機だ」
  投げ込まれた道具から、煙が爆ぜ広がった。

〇岩山
林(リン)「しるしは付いた」
林(リン)「これで、どこに逃げようと」
林(リン)「地の果てでも、あなたを追いかけられますよ?シャラ様」

〇薄暗い谷底
  煙を逃れて、谷底へ身を隠したシャラ。
  そのからだは、ぼんやりと光をまとっていた。
シャラ「追跡の術・・・」
シャラ「印をつけられたか」
シャラ「くっ」
  シャラは自身の震える肩を抱いて、身を屈めた。
シャラ「くははっ」
シャラ「あははははっ」
  屈めた身を、今度はのけ反るようにして、天を仰いだ。
シャラ「手数の少なさは一級品だな!林(リン)」
シャラ「ここまでつまらない奴だとは思わなかった。予想以上だ!」
  シャラは一つ膝を叩くと、笑みを消した。
シャラ「つまらんことを言う、つまらん奴」
  刀の柄を握る手に力がこもる。
  よぎるのは、在りし日の妹。
  シャラの白い手に青筋が走った。
シャラ「ああ、楽しみだ」
シャラ「あの男に」
シャラ「ふさわしい最期にしてやる」

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