お助けください!東郷さん

がっさん

渋谷作戦(脚本)

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〇古風な和室(小物無し)
  ―明治38年
  東郷平八郎は、
  日露戦争の日本海海戦で指揮を執り、日本を勝利へと導いた。
  彼は、その功績から『軍神』と呼ばれ、日本国民から崇められるようになった。
  その彼は今、死の淵にいる―
東郷平八郎(・・・私は、もう死ぬのか)
東郷の娘「お父さん!しっかりして!」
東郷平八郎(体の重心が下がってきおった)
東郷平八郎(これが、「死」という感覚か)
東郷平八郎(このまま、あの世へ落ちていくのだな)
東郷平八郎(・・・)
東郷の娘「お父さん!」

〇神社の本殿
  ―どすん!
  突然、硬い石畳に打ち付けられた。
  東郷は起き上がり、周りを見渡した。
  そこは見知らぬ神社だった―

〇神社の本殿
ちよ「あ、あの、大丈夫ですか!?」
東郷平八郎「・・・?私は、いったい?」
ちよ「神社でお祈りしてたら、突然あなたが空から降ってきて!」
東郷平八郎(この娘、見慣れぬ格好、ここはあの世か?)
ちよ「け、怪我はないですか?」
東郷平八郎「ああ、大丈夫だ」
東郷平八郎「ところで、ここはどこだ?」
ちよ「東郷神社です。東郷平八郎の魂が祀られている神社です」
東郷平八郎「私が?」
ちよ「・・・?」
  東郷は混乱した。

〇神社の本殿
  ―5分後
  東郷は状況を理解した。
ちよ「ええー!?あなたが東郷平八郎、ご本人ですか!?」
東郷平八郎「そうだ」
東郷平八郎「死んだ後、何故かこの時代に飛ばされたようだ」
ちよ「それってタイムスリップってやつですか?」
東郷平八郎(身体も若い頃に戻っている。まこと不思議だ)
ちよ「そ、そうだ!」
ちよ「東郷さん!お助けください!」
東郷平八郎「なんだ、どうした?」
ちよ「と、とにかく、私についてきてください!」

〇センター街

〇店の入口

〇おしゃれなレストラン

〇おしゃれなレストラン
ちよ「ど、どうぞ」
東郷平八郎「・・・」
東郷平八郎「・・・・・・」
東郷平八郎「うまい」
ちよ「あ、ありがとうございます!」
東郷平八郎「お主、料理人だったのか」
ちよ「はい、一応・・・イタリアンのシェフです」
ちよ「先日、この店をオープンしたのですが・・・」
ちよ「お客様が全然入らず、廃業寸前なのです!」
東郷平八郎「それは大変だ」
ちよ「来月のテナントの支払い、どうしよう・・・」
東郷平八郎「ふむ・・・」
東郷平八郎(この娘の料理の腕前は申し分ない)
東郷平八郎(もしや、集客に原因があるやもしれん)
東郷平八郎「店の外を見せてもらってもよいか?」
ちよ「は、はい、どうぞ」

〇店の入口
東郷平八郎「扉横のメニュー、何と書かれている?」
ちよ「本日のオススメ、オッソブーコです!当店自慢のメニューですよ!」
東郷平八郎「むむ?全てイタリア語で書かれているな」
ちよ「イタリア本場の雰囲気をお客様に味わってほしくて!」
東郷平八郎「なるほど・・・」

〇城の会議室
  ―海軍作戦会議
参謀長「東郷長官!敵艦の名前が全てロシア語のため、隊員らが覚えられず混乱しております!」
東郷平八郎「であれば、日本語に変換してしまえばいい」
参謀長「と、いいますと?」
東郷平八郎「戦艦『アレキサンドル三世』を『呆れ三太』などと変換せよ」
東郷平八郎「さすれば、より迅速に指示が出せよう」

〇店の入口
東郷平八郎「・・・客にはイタリア語が全く伝わっていないのではないか?」
東郷平八郎「名の知れぬ料理を主張しても、それが伝わらなければ意味はない」
ちよ「確かに、お客様からしたら、どんな料理かイメージしにくいかも・・・」
東郷平八郎「客に伝わりやすい料理名、かつ日本語へ変換すべきだ」
ちよ「は、はい!」
  ―東郷はさらに周囲を見渡す。
東郷平八郎「・・・店の扉は常に閉めておるのか?」
ちよ「はい、隠れ家的な外観に憧れておりまして・・・」
東郷平八郎「ふむ・・・」

〇漁船の上
  ―日本海海戦
参謀長「東郷長官!バルチック艦隊はあと数日で、日本海へ到着します!至急迎撃の準備を!」
東郷平八郎「いやまて、敵艦隊は遠方からはるばる大航海を経て、日本海へ来る」
東郷平八郎「きっと燃料も底をつきかけ、なんとしてもウラジオストク港で補給したがるだろう」
参謀長「では、ヤツらを港へ向かわせると?」
東郷平八郎「そうだ。あえて港の入口を手薄に見せる」
東郷平八郎「そして、周囲に罠を張って迎撃する」

〇店の入口
東郷平八郎「・・・客は腹を空かせている」
東郷平八郎「扉を閉めていては、警戒して安易に入ってきてはくれまい」
ちよ「そ、そうでしょうか・・・」
東郷平八郎「扉はあえて開けておき、店内へ誘導しやすいようにすべきだ」
ちよ「は、はい」
東郷平八郎「そして、罠をしかける」
ちよ「わ、罠!?」
東郷平八郎「お主の腕前で、香りがひときわ立つ料理を作っておき、外の客に嗅がせるのだ」
ちよ「な、なるほど!匂いでお客様の空腹を刺激する作戦ですね!」
東郷平八郎「そうだ」
ちよ「わ、わかりました!できると思います!」
東郷平八郎「これより本作戦を『渋谷作戦』と呼称する」
ちよ「はぁ・・・」
東郷平八郎「私は表に立って戦況を俯瞰する。お主は調理に集中しろ。以上だ」
ちよ「は、はい!よろしくお願いします!」

〇おしゃれなレストラン
  ―午前11時、イタリアン開店。
女性客「あのー、2人いいですか?」
ちよ「!!」
ちよ「はい、こちらへどうぞ!」
ちよ(早速お客様が!)
男性客「すみません、予約してませんけど、いいですか?」
ちよ「え!?はい、どうぞこちらへ!」
ちよ(すごい、東郷さんの言う通り修正しただけなのに!)
  ―あっと言う間に店内は満席になった。

〇店の入口
  ―午後5時、イタリアン閉店。
東郷平八郎「よくやった。大盛況だったな」
ちよ「は、はい!あんなにお客様が来てくれたのは初めてです!」
ちよ「私、自分のこだわりを伝えることばかり考えてました」
ちよ「自信のある料理を、ただ食べてもらいたくて、そればかり・・・」
東郷平八郎「相手の視点に立って策を練る。これこそが戦術の基本だ」
ちよ「ありがとうございました!これで廃業は回避できそうです!」
東郷平八郎「油断するな。『勝って兜の緒を締めよ』」
ちよ「か、兜?」
東郷平八郎「成功しても慢心することなく、常に用心しろ、ということだ」
ちよ「・・・!」
ちよ「はい!」

〇漁船の上
  ―日本海海戦、終結。
隊員たち「万歳!万歳!」
東郷平八郎「・・・」
参謀長「長官殿、お喜びにならないので?」
東郷平八郎「日本はまだ多くの外交問題を抱えている」
東郷平八郎「まだまだ、これからだ」
参謀長「・・・」
参謀長「長官殿らしいですね」

〇SHIBUYA109
  ―現代
東郷平八郎(この時代の渋谷も、きっと多くの問題を抱えておるだろう)
東郷平八郎(時代遅れの私だが、まだできることがあるやもしれん)
ちよ「東郷さん!お助けください!」
東郷平八郎「やれやれ、また問題か」
  東郷平八郎の戦いは続く―

コメント

  • 東郷提督とイタリアンが上手く仕上がって、
    「肉じゃが」のように
    ほっこりした味わい。
    思わず「うまい!」と口から出ちゃいました。

  • 東郷平八郎とイタリアンレストラン、意外な組み合わせがすごくマッチしていて、面白かったです😆
    冒頭の空から司令官が!展開もコミカルかつ、引き込まれました😄

  • 東郷さんの格好良さが上手く表現されていて東郷さんの真面目さと面白さが直ぐに伝わります。😊

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