龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第捌拾玖話 方陣(脚本)

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〇センター街
三郎「龍、ですか」
  一旦間合を離し、三郎は新たな侵入者二人を見た。
古橋哲也「あなたが何者か、聞きはしない」
飯尾佳明「俺たちの敵だ、ってのは分かってるからな」
  哲也と佳明は武器を構え、三郎を見据える。
  目の前の相手の名前は聞かない。
  聞くだけ無駄だ。
  知ったところで何が変わるわけでもない。
  唯一はっきりしている事と言えば、
飯尾佳明「カズが苦戦してるんだ、こっちも本気出していくぞ」
古橋哲也「勿論」
  それぞれの得物に、各々が宿す龍の色の龍気を纏わせる二人だったが、

〇センター街
如月玄伍「待ち給え」
古橋哲也「え?」
  ビクリと哲也の身体が跳ねた。
飯尾佳明「脅かすなよ、玄伍のおっさん」
  いつの間にか玄伍が哲也の隣に来て彼の背中に触れていた。
  以前、彼に触れられただけで押さえつけられた記憶が体に残っていた。
  圧倒的な力の記憶が、哲也の身体を硬直させる。
如月玄伍「君が出るには早い」
古橋哲也「どういう事です?」
  哲也は怪訝な顔をする。
  彼の目の前では、

〇センター街
橘一哉「だありゃっ!」
三郎「浅い、浅いですよ!」
  一哉が三郎に攻撃を仕掛けていた。
  しかし、その尽くが防がれ、躱されている。
「どけ、橘くん!」
  そこへ声が響き、
橘一哉「!!」
三郎「!!」
  司が割って入って炎を繰り出した。
  だがそれも三郎は両手の剣で掻き消し、
三郎「はっ!」
  剣を繰り出すと、
竹村茂昭「させるかよ!」
  茂昭が長巻で横槍を入れて受け止め、
雀松司「すまん、助かった!」
  一旦司は飛び退く。

〇センター街
古橋哲也「僕らも協力した方が良いのではないですか?」
  哲也の言う通りだ。
  三郎一人に数人がかりでも押し切れていない。
  これでは徒に戦いが長引くだけではないのか。
如月玄伍「いや、勝機はある」
  哲也の問いに、玄伍は首を横に振り、
如月玄伍「見つかった、と言うべきかな」
  確信に満ちた笑みを浮かべた。
飯尾佳明「ホントに勝てるのか?」
飯尾佳明「あの男、まだまだ余裕があるみたいじゃないか」
  佳明の目には、三郎が充分な余力を持っているように見えた。
飯尾佳明「カズが攻めあぐねるなんて、よっぽどだぜ?」
古橋哲也「そうですよ」
  佳明の言葉に哲也も頷く。
古橋哲也「カズが苦戦してる相手に勝つ方法なんてあるんですか?」
如月玄伍「ある」
  玄伍は力強く答えた。
如月玄伍「古橋くん、黄龍の君が来てくれたおかげでな」
古橋哲也「え!?」

〇センター街
如月玄伍「四神は東西南北の四方位に相応し、地水火風の四大に割り当てられている」
如月玄伍「だが、それは四神のみの関係性での話」
如月玄伍「ここに黄龍が加わると、その相応に変化が生じる」
古橋哲也「変化?」
如月玄伍「そうだ」
如月玄伍「君は、黄龍も方位割り当てに入っているのを知っているかね?」
古橋哲也「いいえ」
  哲也は首を横に振る。
  そんな話は初耳だ。
  黄龍からも聞いたことがない。
黄龍「玄武の、五行の陣を用いる気だな?」
  そこへ黄龍が顔を出した。
如月玄伍「その通りだ、黄龍よ」
  黄龍の言葉に頷く玄伍。
古橋哲也「ごぎょうのじん、ですか?」
如月玄伍「そうだ」
飯尾佳明「ちょっと待った」
  そこへ佳明が割って入った。
飯尾佳明「四大と五行、属性が合わねえ」
飯尾佳明「詳しく説明しろ、手短にな」
如月玄伍「これは中々に難しいことを言う」
如月玄伍「端的に言えば、属性など人間が勝手に考えついたものに過ぎん」
如月玄伍「そして、神獣も含めて森羅万象は多面的で多様な側面があるという事だよ」
飯尾佳明「はあ?」
  今一よく分からない。
  属性というのは、神獣の力であり神獣そのものではなかったか。
如月玄伍「もう一度説明しておこうか」
如月玄伍「四方を守る四神としては、」
  地の玄武。
  水の青龍。
  火の朱雀。
  風の白虎。
如月玄伍「といったように四神と四大が対応することになる」
如月玄伍「だが、それは各々がバラバラの状態での話」
  そも、四方位とは大地あっての概念。
如月玄伍「大地を中心に据えることで、初めて四方位は意味を成し形を成す」
  その中心たる大地こそ、
如月玄伍「古橋くん、君の宿す黄龍だ」
古橋哲也「黄龍が?」
如月玄伍「その通り」
如月玄伍「大地は四方を結びつけ、」
  互いに結びついた黄龍と四神は、一つの循環の環を形成する。
如月玄伍「更に、四神には各々陰陽が備わっている」
如月玄伍「太陰の玄武、少陰の白虎、太陽の朱雀、少陽の青龍」
如月玄伍「その陰陽の力と四大が絡み合い、主たる力、即ち属性に変化が生じる」
飯尾佳明「それが、木火土金水の五行か」
如月玄伍「そうだ、察しが早いな」
  佳明の言葉に玄伍は笑みを浮かべる。
如月玄伍「木性青龍、火性朱雀、土性黄龍、金性白虎、水性玄武」
如月玄伍「そのように変化する」
  そして、黄龍が結び付けた五体の神獣は無間循環の回路を形成する。
如月玄伍「その回路は、無限大の力を生み出す一つの方陣となる」
如月玄伍「その方陣の名は、」
  四神黄龍五行陣

〇センター街
三郎「何を話しているかは知りませんが、無駄ですよ」
三郎「新たにやってきた龍二匹も含めて、私が食い尽くしてあげましょう」
橘一哉「その割には、手こずってるんじゃないか?」
三郎「・・・」
  一哉の言葉に、三郎の顔から笑みが消える。
橘一哉「今お前と撃ち合ってるのは俺一人だぜ?」
  さらに挑発する一哉だが、
三郎「まずは貴方を頂くと決めてますからね」
  笑みを戻し、しかし纏う闘気と殺気は倍加して三郎は一哉を攻め立てる。
橘一哉「う、お、お、」
  速度を増す攻め手に一哉は一瞬たじろいだが、
三郎「!!」
  三郎の顔に驚きが浮かぶ。
  一哉は、その両手で三郎の二つの剣を受け止めたのだ。
  その一瞬の隙に、
橘一哉「どらっせい!」
  一哉は両の腕に力を込めて剣を弾くと右膝を上げて半身を入れ、
橘一哉「捉えた」
  ピタリと右の足裏を三郎の下腹へと密着させると、
橘一哉「奮!!」
三郎「ぬ、あ、」
  ズシン、と衝撃が響く。
  足甲の爪が、三郎の帯にめり込む。
三郎「あ、」
  三郎は数歩後ずさった。
  帯が僅かに裂けている。
橘一哉「どうだい、やっと一撃入れてやったぜ」
  してやったりといった様子で一哉はニヤリと笑う。
三郎「貴様、」
  今まで見せたことのない、鬼のような形相で三郎は一哉を睨みつける。
三郎「やはり貴様から喰らってやる!!」
  大音声で怒鳴り散らし、三郎は一哉へと襲い掛かった。

〇センター街
橘一哉(うわ、やべえ)
  鬼気迫る形相で迫りくる三郎。
  どうやら彼の逆鱗に触れたらしい。
  何が彼の逆鱗だったのかは知る由もないが、それよりも大事な事があった。
橘一哉(今のが俺の全力だったんだけど・・・!?)
  両手に怪我はないが、三郎の攻撃を受け止めた衝撃による痺れが残っている。
  というよりも、感覚が無い。
  三郎の攻撃は、その重さも、速さも、常軌を逸している。
  そして、
橘一哉(動けねえ)
  全身の気脈を一気に激しく沸騰させた、全身全霊、渾身の蹴り。
  それを受けて尚、三郎は激昂し力を倍化させる程の余裕がある。
  こっちは全力を出し尽くしたというのに。
橘一哉(けど、)
  弱音を吐いてはいられない。
  今の自分には、朱乃を守るという役目がある。
  此方に意識を向けたと言うなら、むしろ好都合だ。
  朱乃を守るというデコイとして、自分が機能しているのだから。
  それに、
橘一哉(玄伍さんには、何か策があるらしいしな)
  一哉は割と耳が良い方である。
  戦いの中で、玄伍が哲也たちと話しているのが聞こえた。
橘一哉(ここは、俺が囮になってやるさ)
  改めて決心した一哉だったが、
橘一哉(あれ?)
  ふと気が付いた。
橘一哉(いつもと変わらなくないか、それ?)
  先陣一番槍で敵を掻き乱しつつ、自分に注目を集めて相手方の隙を誘発する。
  そんな、いつもの戦法と変わらないじゃないか。
橘一哉(まあ、いいか)
  いつもと同じ。
  なら、然程気負うこともあるまい。
  妙な気付きを得て開き直り、一哉は三郎を迎撃した。

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