第十一話 「バッファロー狩りサークル現る!」(脚本)
〇荒野
翌日の昼ごろ。
景介は暗黒街のはずれにある空き地で心配そうに空を見ていた。
間宮景介「ディーシャさん、配達予定時刻を2時間以上も過ぎてますけど大丈夫ですかね・・・」
ディーシャ・バジュランギ「大丈夫なんじゃない? 兄上から発送したって連絡来てるし」
奥山ペーターゼン「フッ、来たぞ」
間宮景介「どこ!」
奥山ペーターゼン「あれだ」
ペーターが指をさした先にヘリと思しき小さな影が見える。
その影は何かを吊り下げて景介たちの方へ向かって来ていた。
間宮景介「すごい! 車を吊り下げてる!」
輸送ヘリは、景介たちの上空まで来ると、垂直降下してくる。
砂埃を巻き上げながら吊り下げていた車を着地させ、ワイヤーを切り離すとすぐに上昇し、去っていった。
車は見るからに速そうな近未来デザインの高級車だったが、様子がおかしい。
間宮景介「ディーシャさん、この車、タイヤが3つしかついてませんけど・・・」
ディーシャ・バジュランギ「そういうデザインなんじゃないのか?」
奥山ペーターゼン「フッ、ボンネットは潰れている、フロントガラスは割れている、ドアは外れかけている、ハンドルは血まみれだ」
ディーシャ・バジュランギ「そういうデザインなんじゃ・・・」
間宮景介「ないと思います・・・」
奥山ペーターゼン「フッ、明らかに事故っている。 まともに動くとは思えん」
間宮景介「昨日、お兄さんは何も言ってなかったんですか?」
ディーシャ・バジュランギ「言ってなかったなー」
奥山ペーターゼン「フッ、アニキにどういうことなのか聞いてみろ」
ディーシャ・バジュランギ「おーけー、聞いてみる!」
ディーシャはスマホですばやく文字を打ち、送信する。
ピンコロリーン!
すぐさま返信が来る。
ディーシャ・バジュランギ「おととい事故ったとのこと! この車は走行不能!」
奥山ペーターゼン「だろうな」
間宮景介「なんでそんな車を貸してくれたんですか・・・」
ディーシャ・バジュランギ「走らせると思ってなかったんだろうな。 ワは車を貸してくれとしか言わなかったから」
奥山ペーターゼン「フッ、車を借りたら走らせるに決まっているだろうが」
ディーシャ・バジュランギ「兄上はこういうところがあるのよねー」
ディーシャ・バジュランギ「発送時にはタイヤ4つ全て着いてたから、途中で落ちたんだろうって言ってる」
奥山ペーターゼン「フッ、どこかでタイヤを落としたことに気づいて慌てて探したが見つからず、2時間以上遅刻して何も言わずに帰って行ったわけか」
ディーシャ・バジュランギ「カタールにあるメーカー工場で修理すれば2カ月くらいで直るそうだぞ?」
間宮景介「2カ月じゃ僕はとっくに殺されてます・・・」
ディーシャ・バジュランギ「そう言われてみればそうだな」
間宮景介「いったいどうすればー!!」
景介が頭を抱えていると、けたたましいエンジン音の大群が近づいてくる。
エンジン音はあっという間に近くまでやってきて、景介たちのいる空き地の脇を大型バギーの集団が通過していく。
バギーには野性味あふれる男たちが乗っていて、狩りたてのバッファローが積まれているものもある。
ディーシャはバギー集団を見て喜んでいる。
ディーシャ・バジュランギ「うはー!! 迫力あるな!」
奥山ペーターゼン「あれはバッファロー狩りサークルだ」
奥山ペーターゼン「西の平原に生息する増えすぎたバッファローを狩っている」
ディーシャ・バジュランギ「バッファローって日本の動物だっけ?」
奥山ペーターゼン「フッ、かつてペットとして奥地に連れてこられたものが逃げて野生化し、増えすぎたらしい」
奥山ペーターゼン「景介よ、いいことを教えてやろう。 あのバギーはすべてが自作だ」
奥山ペーターゼン「製造から整備まですべて自分たちでやっている」
間宮景介「それがどうし・・・あ! もしかして、この車も直せる!?」
奥山ペーターゼン「かもしれん」
間宮景介「頼んでみよう!」
ディーシャ・バジュランギ「あれ? 音が戻ってくるよ?」
今さっき通り過ぎたバギー集団のエンジン音が徐々に近づき戻ってくる。
バギー集団はエンジン音を轟かせながら空き地に入って来ると、景介たちを取り囲む。
間宮景介「どど、どういうこと?」
ディーシャ・バジュランギ「近くで見るとさらにすっごい迫力だなこのバギー!」
リーダーと思しき体格のいい男がバギーから降りてくる。
体格のいい男は壊れたスポーツカーをぐるりと見まわす。
体格のいい男「この車は誰の物だ?」
奥山ペーターゼン「フッ、こいつだ」
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