龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第捌拾陸話 四神対饕餮 破(脚本)

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〇センター街
三郎「代行者ながら、お見事」
  己を組み伏せる相手を見上げ、三郎は素直に賞賛の言葉を口にした。
三郎「本物には一段劣ると考えていたのは間違いだったようです」
  触れた所から伝わる、炎の力。
  そして、
雀松司「俺も、何やかんやで戦歴はそれなりに長いんでね」
  仲間の支援があったとはいえ、こうして三郎を組み伏せる技の腕前。
  的確に急所を抑え込み、動きを封じられてしまっている。
三郎「正に、今が絶頂期ですか?」
雀松司「ああ、そうだな」
  年齢、体力、気力。
  三者が噛み合う今が最盛期と言って良いだろう。
雀松司「そんな時に、お前と出会えたのは幸運だよ」
  打ち倒す絶好の機会なのだから。
三郎「ですが、」
雀松司「!!」
  三郎の紋様が色濃くなり、強い光を放ち始める。
雀松司「っ!!」
  強力な衝撃波が三郎の全身から放たれ、司は弾き飛ばされた。
雀松司「ちぃっ!」
  態勢を立て直す司。
  その眼の前で、
三郎「所詮は人間」
  三郎はゆっくりと立ち上がる。
三郎「人の生の長さでは、練りが全く足りていない」
三郎「神獣の力を自在に操るに至るまでには、人の寿命では短すぎる」
雀松司「ぬかせ!」
  構わず打ちかかる司だったが、
雀松司「なに!?」
  三郎は棒立ちのまま、司の一撃を受けた。
雀松司「何だ、これは!?」
  打ち込んだ司の顔が驚きに染まる。
三郎「何を驚いているのです?」
  涼しい顔で訊ねる三郎。
  三郎の衣服に、紋様が浮かび上がっていた。
  それは、三郎自身の身体に浮かぶ紋様・饕餮紋と全く同じもの。
  その紋様が、司の攻撃を受け止めているのだ。
三郎「人は、いつしか衣服を纏うようになった」
三郎「以来、衣服もまた人の一部となった」
三郎「即ち、私の衣服は私の一部」
三郎「何の不思議も無いでしょう」
雀松司「っ・・・」

〇センター街
橘一哉「衣服も己の一部、か」
  これは面白い理論だ、と一哉は感心した。
橘一哉(もしかして、)
  一哉は己の足元を見る。
橘一哉(もしかして、これもそういう事なのかな?)
  自分の足の指の動きに合わせて動く、足甲の爪先の爪。
橘一哉(この手甲足甲、俺の身体の一部って事なのか⋯?)
雀松朱乃「どうしたの、橘さん?」
橘一哉「いや、何でもないよ」
  今は戦いの最中だ。
  余計な事を考えている暇はない。
  思い直して、一哉は目の前の状況に意識を戻した。

〇センター街
如月玄伍「やれやれ、一人にばかりかまけていては困るな」
三郎「!!」
  再び玄伍が間合を詰める。
三郎「心臓に悪い間の詰め方ですね」
如月玄伍「まあ、それも武芸の内だからな」
  至近距離で睨み合う三郎と玄伍。
  少し手を上げただけでも互いに接触してしまう距離だ。
  迂闊に動けない。
如月玄伍「先ほどの物言い、君は随分と長生きしていると見受けたが?」
三郎「ええ、その通りですよ」
  玄伍の言葉に頷く三郎。
三郎「人の世に戻ったのは、初代の四神によって追い出されて以来です」
如月玄伍「・・・ほう」
  玄伍は目を細める。
如月玄伍「で?久々の人界はどうかね?」
三郎「ひどく汚れてしまっていますね」
三郎「天地山川草木の気が、枯れてしまっている」
如月玄伍「・・・」
三郎「食事の種類は増えて味も良くなりましたが、気の枯れたものが多い」
  はあ、と三郎は溜息をつく。
如月玄伍「これは、手厳しいな」
如月玄伍「だがな、」
  玄伍は三郎を見据え、
如月玄伍「それでも、必死に今を生きる者が大勢いるのだ」
如月玄伍「そんな彼らに成り代わり、我ら四神は戦っているのだよ」
  大地が、空気が、震える。
  玄 武 震 山 靠
三郎「っ、とっ、」
  揺れの激しさに三郎の足元がふらつく。
如月玄伍「押し流せ、青龍!!」
草薙由希「了解!!」
  青 龍 轟 河 陣
  見事な連係だった。
  ふらつく三郎めがけて大量に吹き出した水が襲いかかる。
三郎「おおっ!?」
  突如として発生した激流に、三郎は為す術なく飲み込まれていった。
如月玄伍「竹村くん、とどめを!」
竹村茂昭「はい!」
  茂昭は長巻を手放して全身に力を漲らせる。

〇センター街
竹村茂昭「オオオオオオオオッッ!!」
  茂昭は吠えた。
  己を奮い立たせるために。
  全身に力を満たすために。
  そして、倒すべき相手を気迫で圧倒するために。
  由希の生み出した激流が消えた時、
三郎「うーん・・・」
  全身濡れ鼠になった三郎がいた。
竹村茂昭「いくぞ!!」
  茂昭は一足飛びに間合を詰める。
竹村茂昭「これが、本気の、」
  白 虎 剛 烈 爪
  風を切り空を裂く音と共に、大きく広げた茂昭の両掌が三郎に叩き付けられる。
竹村茂昭(入った!)
  確かな衝撃と手応え。
  前回と違い、今度こそ必殺の威力を叩き込む事が出来たはずだ。
三郎「ぬ、う、」
雀松朱乃「紋様が⋯!」
  それは朱乃にもはっきりと分かった。
  三郎の全身を覆う紋様の一部が途切れたのだ。
橘一哉「すげえ⋯」
  一矢報いた。
  あの時は歯が立たなかった三郎に、確かなダメージを与える事ができた。
橘一哉「これが四神の力か⋯」
  もしかして、四神は八龍よりも遥かに強いのではないか。

〇センター街
三郎「これは・・・」
  服の上の紋様の途切れを見つめ、
三郎「喰いきれなかったか・・・」
  三郎はボソリと呟いた。
三郎「まあ、いいでしょう」
三郎「それでこそ、喰らい甲斐があるというもの」
  三郎は剣を握り直し、
三郎「大体の様子も分かりました」
三郎「さあ、本格的にいきますよ」

〇センター街
橘一哉「・・・」
  一哉は無言で朱乃の前に立った。
雀松朱乃「え?」
橘一哉「気を付けて」
雀松朱乃「え?」
  何を今更言っているのだろうか、と朱乃は不思議に思った。
  そんな事は言われなくても分かっている。
  無駄に頑丈な三郎の強さも見た。
  言われるまでもない。
  と、思っていたのだが。
橘一哉「いつ此方に飛び火するか分からなくなってきた」
雀松朱乃「・・・うん」
  顔も声も真剣な一哉の様子に、朱乃も何かを察した。
橘一哉「ま、朱乃ちゃんは俺が守るから安心してね」
雀松朱乃「・・・はい」

〇センター街
三郎「さ、どちらがお好みです?」
  三郎は両手に剣を持っていた。
  右手の剣は切っ先が平らで長方形の剣身。
  左手に持つ剣は、切っ先の反りが強く鎌のようになっている。
三郎「まずは、屠る所から始めなくてはいけない」
草薙由希「やれるものならやってみなさい」
  由希が薙刀を構える。
  得物の長さでいえば、由希の方が有利だ。
三郎「では、まずは龍から捌きましょうか」
草薙由希「望むところよ!」
  先手必勝。
  由希が薙刀を振りかぶり、袈裟がけに斬り下ろす。
  三郎は左手の鎌剣で受け止め、
三郎「そら!」
  右の板剣で由希の前腕を切り付けようとするが、
草薙由希「っ!」
  薙刀を返して柄で弾きながら間合いを離す。
三郎「ふっ!」
  三郎はそれを追いかけ、
草薙由希(速い!)
  板剣が由希の首筋目掛けて横薙ぎに襲いかかる。
草薙由希「くっ!」
  思わず歯を食いしばる由希。
  遠心力の加わった一撃の衝撃は強かった。
  柄で受け止めはしたが、衝撃で手が痺れそうになる。
三郎「がら空きですよ!」
草薙由希「!!」
  失念していた。
  三郎は二刀流だ。
  左の鎌剣が由希に迫る。
  が、
「おおっ!!」
  横合いから加わった力に鎌剣は動きを止めた。
竹村茂昭「こっちは六人がかりだ、忘れるな!」
  間一髪だった。
  茂昭の手が三郎の左手を押さえている。
三郎「そういえば、そうでしたね」
  得物を引き、自身も退きながら由希と茂昭を交互に見る。
三郎「これは、忙しくなりそうだ」
  その目には、更に玄伍、司、一哉、そして朱乃も映っている。

〇センター街
橘一哉(やばいな、これ)
  一哉の勘が告げている。
  三郎の意識が変わった。
  戦闘に直接参加していない一哉と朱乃。
  その二人にも、明確な意識を向けている。
  どこかのタイミングで、此方にその刃を向けてくるかもしれない。
橘一哉(褌締め直しときますか)
  いつでもすぐに動けるように、朱乃を守り通せるように。

〇センター街
三郎「やはり弱きを先に討ちましょうか!」
橘一哉「げげっ!!」
  一哉の予測はあたった。
  しかも、かなり早かった。
  着流しの裾が乱れるのも構わず、三郎が大股で一哉へと向かってくる。
  正確には彼の背後にいる朱乃に向かっていたのだが、
橘一哉「やらせはしねえよ!」
  今の一哉は朱乃の盾となり剣となるのが役目だ。
  何が何でも三郎を妨害しなければならない。
橘一哉「二刀流なら!」
  ほんの数回だが、鞭剣を得物とする緑龍使いの佳明と模擬戦をした事がある。
  あの時の一哉の得物は刀だった。
  今の一哉の得物は素手。
  条件は違うが、二刀流の相手に共通する動きの癖は何となく掴んでいる。
橘一哉(得物に惑わされるな)
  手元の動きを見て、対応していけばいい。
橘一哉「いくぞ!」
  そして今まさに動こうとした時。
橘一哉「うわっちぃ!!」
  背後から熱風。
  真っ赤な波が一哉を避けるようにして三郎へと伸びていく。
三郎「はっはあ!」
  迫りくる熱風に対し三郎は足を止めると両の得物を振りかぶり、
三郎「それ!」
  叩き付けた。
  真っ赤な波は断ち割られ、
  無数の光の粒子へと変わって消滅した。
橘一哉「これって、」
  その光景は、一哉にとって、いや龍使いにとって見慣れたものだった。
橘一哉「分解した⋯!?」
  目の前の物質や現象を、最小単位に分解して消滅せしめる技。
  高位の神獣の力を以てしなければできないような芸当を、
草薙由希「こいつも、できるというの⋯!?」
三郎「何を驚いているのです?」
三郎「私は饕餮の三郎」
三郎「私は何でも喰らうことができる」
  そして、
三郎「喰らったものは、ちゃんと消化しなくてはね」

〇高い屋上
古橋哲也「う〜ん・・・」
飯尾佳明「どうした、テツ?」
飯尾佳明「変な唸り声なんか出して」
古橋哲也「何だか落ち着かないんだよね⋯」
飯尾佳明「何でまた?」
古橋哲也「分からない」
古橋哲也「分からないけど、何だか、」
古橋哲也「行かなきゃいけないような気がする」
飯尾佳明「何処に?」
古橋哲也「分からない・・・」
飯尾佳明「分からない尽くしかよ」
  それではお手上げだ。
  どうにもならない衝動というのは、割とよくある。
  そういう時は、
飯尾佳明「考えても始まらないなら、動いてみたらどうだ?」
飯尾佳明「散歩でもしてみれば、何か分かるかもしれないぜ」
古橋哲也「・・・そうだね、ちょっと歩いてみるよ」
飯尾佳明「おう、いってらっしゃい」
古橋哲也「え?」
飯尾佳明「ん?」
古橋哲也「飯尾くんも一緒に来るんじゃないの?」
飯尾佳明「え?」
古橋哲也「え?」

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