龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第捌拾伍話 四神対饕餮 序(脚本)

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〇センター街
雀松司「橘くん、妹のサポート、頼めるか?」
橘一哉「任せてください」
  護衛から補佐へ。
  役割は多少変わったが、誤差の範囲内だ。
橘一哉「朱乃ちゃんを死なせはしませんよ」
雀松司「傷一つ、つけさせてくれるなよ」
  嫁入り前どころか未成年である。
  無事であることが最優先だ。
橘一哉「勿論です」
  一哉は手甲足甲を纏い、朱乃の傍らに立つ。
橘一哉「よろしくね、朱乃ちゃん」
雀松朱乃「・・・」
橘一哉「え、なに、その顔」
雀松朱乃「・・・靴の指、なんで動いてるの?」
橘一哉「・・・」
  朱乃も気付いてしまった。
  歩いた時に、一哉の足甲の爪が動いていることに。
橘一哉「うーん⋯」
  これは困った。
  説明のしようがない。
橘一哉「仕様です、としか言えないなぁ」
  本当にその通りである。
雀松朱乃「・・・キモい」
橘一哉「キモいかぁ・・・」
  地味にショックだった。

〇センター街
如月玄伍「さて饕餮よ、こちらの用意は万全だぞ」
草薙由希「四対一、覚悟することね」
竹村茂昭「四凶だか何だか知らないが、ここで倒してやる」
  源伍、由希、茂昭、司の四人が三郎を取り囲む。
三郎「四神相応、ですか」
  四人を順番に見渡す三郎。
  四人は北に源伍、東に由希、西に茂昭、南に司という形になっていた。
  それぞれの立ち位置は、四神の司る方位と同じになっている。
  そして、司の後ろに朱乃と一哉。
三郎「朱雀は代理人が主力ですか」
橘一哉「いいや、違うね」
  三郎の言葉を一哉は否定した。
橘一哉「南は俺達三人の三段構えだ」
  一哉の手甲足甲から黒い火の粉が舞い散る。
三郎「やる気は充分、と」
橘一哉「おうさ」
  龍ではあるが、司から朱雀の闘技を伝授された一哉である。
  朱雀の片鱗が宿っている、といっても過言ではない。

〇センター街
草薙由希(え⋯?)
  その現象を由希は見逃さなかった。
草薙由希(黒い、火の粉⋯?)
  先陣一番槍を旨とする一哉が、支援に回るのを快諾した。
  その事だけでも、由希には珍しい事として受け取られた。
  攻めを得意とする一哉に、補佐などできるのか。
  そんな一抹の不安と興味。
  そして、幼い朱乃の安全を確保しつつ戦うにはどうするか。
  二つの点から一哉と朱乃にも意識を向けていた、その先で。
草薙由希(龍気ではなく炎⋯?)
  色は黒。
  しかし、その形、その周辺の揺らぎ。
  間違い無い。
  あれは、火の粉だ。
草薙由希(どういう事なの⋯?)
  そんな疑問をいつまでも抱き続けるわけにもいかなかった。

〇センター街
三郎「当代の四神の力、拝見しましょうか」
竹村茂昭「余裕ぶってんじゃねえ!!」
  最初に仕掛けたのは茂昭だった。
竹村茂昭「おおっ!!」
  咆哮を上げ、長巻で打ち掛かる。
  衣服の上からも分かる程に全身に浮かび上がる白虎の紋様が強い光を放つ。
  唸りを上げて長巻が三郎を襲うが、
三郎「ははっ」
  三郎が無造作に掲げた剣に受け止められた。
  互いの得物がぶつかり合い生まれた衝撃波が、二人の髪と衣服を揺らす。
三郎「これが、当代の白虎ですか」
  今度は三郎の全身に紋様が浮かび上がり、
三郎「噴!」
竹村茂昭「うおっ!?」
  力一杯振った。
  そのようにしか見えない三郎の動きで、茂昭が崩された。
竹村茂昭「っ、とっ、」
  よろける茂昭を、
三郎「金気、頂きますよ」
竹村茂昭「ぐっ、」
  呻く茂昭。
  三郎の空いている左手で、茂昭は手首を素早く掴まれた。
竹村茂昭(強い!)
  痩躯のどこから出てくるのかという強い力に、骨が軋み肉が絞られる。
竹村茂昭「は、な、」
「離しなさい!!」
三郎「っ!!」
  怒声と共に背後から衝撃。
  鈍く大きな衝撃音が響き渡る。
  思わず左手の力が緩み、掴まえた獲物を手放してしまった。
竹村茂昭「助かりました、由希さん」
草薙由希「うちの部員を傷物にしないでくれる?」
三郎「青龍、ですか」
  背後から受けた衝撃には、いくばくかの水の気が含まれていた。
  実際、三郎の背中は濡れており、
三郎「この程度の水気、」
草薙由希「水蒸気!?」
  濡れた背からは白い煙が立ち上り、あっという間に乾ききってしまった。
  しかも、
草薙由希「無傷!?」
  その衣服を切り裂くことすらできていなかった。
草薙由希「随分と頑丈みたいね」

〇センター街
草薙由希(嘘でしょ⋯)
  由希は驚くしかなかった。
  茂昭の拘束を解き、態勢を崩すため、渾身の力で薙刀を叩き付けたはずだった。
  だが、大したダメージを与えることができていない。
  茂昭を逃がすことには成功したが、それだけだ。
草薙由希(簡単にはいかない、ってわけね)
  一筋縄ではいかないようだ。

〇センター街
三郎「簡単には喰らわせてくれないようですね」
  自分に一撃を当てた相手へと振り返ろうとすると、
三郎「!!」
  何か、いや、誰かが三郎の肩に触れ、
如月玄伍「当たり前だ」
三郎「っっっ!!」
  重い衝撃が三郎の全身を駆け抜ける。
如月玄伍「ここには貴様の相手が六人もいるのだからな」
三郎「っっっ!!!!」
  ズズン、と地面が揺れる。
  そして、先程よりも更に強く、重く、激しい振動が三郎の全身を襲う。
  何度も、何度も。
三郎「っ⋯」
  言葉が出ない。
  呼吸すらもままならない。
  全身が揺さぶられ、力が抜けていく。
  そのまま膝を着きそうになるが、
  朱 雀 劫 炎 翔

〇センター街
  膝を着くことも、倒れることも、三郎には許されなかった。
  熱風と衝撃波が三郎に襲いかかる。
雀松司「おおおっ!!!」
  炎を纏い、三郎に打ち掛かるのは司。
  息もつかせぬ連続攻撃で、三郎の身体が徐々に浮き上がっていく。
  そして、
雀松司「はあっ!!」
  渾身の一撃を受け、三郎が宙に浮いた。
  その三郎に、
雀松司「鷹捉!」
  司も跳躍して三郎を捉え、
雀松司「せいっ!!」
三郎「っぐ!!」
  思い切り地面に叩き付け組み伏せた。
雀松司「これが、四神の力だ!」

〇センター街
雀松朱乃「・・・スゴい」
橘一哉「あれが、司さんのもう一つの姿だよ」
  目を丸くする朱乃に、一哉は口を開いた。
橘一哉「人類の守護者として、司さんは戦ってきた」
橘一哉「誰も知らず、誰にも知られず」
橘一哉「俺たち龍使いのように、ね」
  そう。
  人類を守るという目的は、龍使いも四神も同じ。
  だから、こうして共に戦っている。
雀松朱乃「私も、あんな風に戦えるようになるのかな」
橘一哉「なれるさ」
  朱乃の問いに一哉は頷いた。
橘一哉「朱乃ちゃんは朱雀の宿主」
橘一哉「きっと、お兄さんみたいな立派な戦士になるよ」
  一哉は朱乃が他人とは思えなかった。
  神獣の宿主として覚醒したのは、今の朱乃と変わらない年の頃だった。
  朱乃がこれからどのようなものと相対するのかは分からない。
  龍使いは魔族と対立し戦っている。
  だが、四神の宿主がどのような存在を相手にするのかは分からない。
  だが、朱乃が成長するまで、兄の司が傍にいてくれるなら大丈夫だろう。
  それに、茂昭、由希、源伍という四神の同志もいる。
  年齢や性別など、異なるものを持つ仲間の存在は心強い。
  龍使いも、年頃は変わらないが属性が違うからこそ様々な対応ができる。
  朱乃も、仲間と共に道を全うできるだろう。

〇センター街
  司は焦っていた。
  四神が揃い、黒龍の助力も得ている。
  戦力としては申し分ない。
  かつて四凶を放逐した四神に加えて、龍の一角もいるのだから当然だ。
  しかも、朱雀は真の宿主たる朱乃と代行者の自分の二人がいる。
  恐れも焦りも、必要ないはず。
  なのに、なぜ、司はあせっているのか。
  それは、
雀松司(保ってくれよ、俺の身体、俺の命⋯)
  時間が無かった。
  茂昭と由希が動かし、源伍が作ってくれた貴重な一瞬。
  その隙をついて、司は全力の攻撃を叩き込んだ。
  後ろで見守る妹、弟子のような少年、自身の力の源。
  彼らの見ている前で手抜きはできない。
  何より、妹のため。
  目の前の敵を、何が何でも仕留める。
雀松司(俺は、)
  全身が軋む。
  筋肉が悲鳴を上げる。
  血管が破れそうになる。
  気脈が今にも決壊しそうになる。
  そんな全身の上げる限界の声を無視して、司は無我夢中で動いた。
  朱雀から引き込めるだけの炎気を全身に引き込み、目一杯駆け巡らせる。
  そして、かつては追い放つしか無かったこの凶悪な存在を討ち取ってみせる。
  強固な決意は確かな力となり、三郎を追い詰めた。
  かのように、見えた。

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